魔法少女学院の不良教師
第3話 また、やり直せ。 ~Re:start~
自分も英雄の一人であると告げる。
「てめぇ……どうしてここが……!」
睨みつけ、歯をむき出しにするルキに対してラフィエルは目を丸くする。
「おいおい、十年ぶりに会う仲間に対してその態度は何だ? 魔神を倒した後にそれぞれの未来を歩んでいこうと別れてそれっきりじゃないか。感動の再会だというのに君は親の仇を見るような瞳で私を見る。こんなに悲しいことはないよ」
肩をすくめながら、ずんずんと事務所の中へ入っていくラフィエル。埃っぽい部屋を歩き、その拍子に崩れた前髪をさらりと手の甲で流し、部屋の中心にある来客用のソファにドカッと腰を下ろすラフィエル。
その時に埃が舞い、小さく「汚な……」と呟いた後、じろりとルキに目線をやる。
「まぁ、この街にいるのに私たちに連絡の一つもよこさなかったんだから、概ねわかっているがね。君がどんな気持ちを抱いているのか。君が今———どれだけ腐っているか」
両肘を膝の上に立てて、手のひらを組んでラフィリアはあごをその上に乗せた。
そして、挑発するような目線で見上げて来る。
「…………」
その瞳が、ルキは苦手だった。
全てを見抜くような、嘘をついても無駄だと言わんばかりの目線。
「う、うるせぇよ。俺には俺の人生設計があんの! 今までのやり方とは違う、新しいやり方で俺だけの人生を歩んでいくために……お前らとは決別して……!」
「今思いついたことを適当に喋らなくていいよ。君の事なら全部わかっているから———」
ウッ、と言葉に詰まるルキ。
満面の笑みを浮かべるラフィリアはそのまま畳みかけるように言葉を続ける。
「———私たちは誰も倒せなかった最強最悪の魔神を倒して、これからは自由にやりたいようにやって生きていけると思った。だから、旅に出た。世界を知って新しい自分になろうとした。だけど、ここに帰って来て誰でもできるような誰もやらないような仕事をやっているところを見るに……無駄だったって感じだね」
「ウッ……!」
図星を突かれて、今度は思いっきり大きな声が漏れ出た。
「自分探しに世界を旅して、自分は見つかった?」
「……世界中を旅して、一つだけわかったことがある」
「ん、何かなそれは?」
「自分なんて探さなくても、いつも傍にいる」
ラフィエルはルキの言葉には何も答えず、ただ優し気な目線を向けていた。
ルキは顔に手を当て、
「馬鹿だった……のかもしれないな。ちょっと考えれば自分が何ができて何をしたいやつなのか。わかるのに、十年も世界中を飛び回って、いろんな光景を見てきたのに……結局得た結論は旅に出ない方がよかった……だもんな」
「……旅に出て色んな物を見たんだろ?」
「ああ」
「色んな人に会ったんだろ?」
「いや」
「……そんなことはないはずだ。旅に出たのなら、絶対に頼らなければいけなかったはずだ」
「人には頼らなければいけない場面はあった。だけど、怖かった。だから頼らなかった」
「……は?」
ラフィエルの声色が変わる。
「怖かった……って、君が? ルキ・ロングロードが?」
「知らねぇ人は怖えよ! だから、そんな場面が来ても自力で何とかした! 何とかできなかった場面でも、最低限度のコミュニケーションに留めて……旅先で出会った人とはほとんど会話してない」
「それ……旅に出た意味ないだろ」
「……………」
まぁな、とは心の中で言っておいた。
いい景色や知らない文化に触れることが旅の醍醐味だと思って出発した。だけど、それが違うと言うのは旅から帰ってきてわかった。
人との交流こそが旅の醍醐味だった。
「……そうして帰ってきて、平和になって変わった世界に対応できずこんな汚い事務所で探偵の真似事か」
「返す言葉もない」
ルキはもう言い返すのも疲れたと首を振り、大きく「ハァ~…… 」と一番大きなため息を吐いた。
「それにしても! ちょっとは……! もうちょっと……何とかなると思ったよ……! だって俺、魔神を倒した四人の内一人だったんだもん! みんなが英雄とあがめてくれて、就職口には困らないと思ったよ! でもさ、でもさ……何で……何で……!」
ばさりと来客用の机に雑誌を置く。
『ヒーローマンスリーニュース』
平和になって発展した製紙技術により作られた薄い情報誌。毎月、都市アルテニアの最新情報や、過去に存在した英雄や魔族の情報を掲載している人気雑誌だ。
拍子に描かれているのは三人の女性。
聖母のような笑みをたたえた金髪の女性と本当に体が小さい五歳ぐらいの幼女、そしてこの部屋にいるラフィエルが剣を持ち正面を見つめている写像(光魔法によって現実の光景そのままの画像を焼きつけた紙のこと)がある。
その——写像の中に男の姿はない。
だが、書かれている。
『救世の三大魔女。ここにあり。 ~魔神を倒して世界を救った三人の女神。たった三人だけでどうやって魔神を倒せたのか?~』
「どうして俺がハブられてんだよ 」
〝魔人を倒した英雄として〟の写像の中に、ルキの姿はなかった。
「あいつは俺達が、俺達四人で倒したのに!」
「仕方がないじゃないか。それ撮った時、君この街にいなかったんだから———」
「ウッ……!」
自分探しの真っ最中だったときのことを言われてルキは言葉につまり、ラフィエルは「うわ……なつかし、何年前の写像なんだ?コレ……」と言いながら『ヒーローマンスリーニュース』を拾う。
「それにこんなものはただのわかりやすいプロパガンダ、くくり、指標だ。大衆の目をわかりやすい的に集めて、民衆の支持を得る。どこの国でもよくやる人気取りのためのアイドルに担ぎ上げられただけで、正確さは求められていない。ハブられたからって気にするな。君がいたことはちゃんと私たちの胸の中に刻まれているから……」
「お前らだけの胸に刻まれても、就職という生きるすべを得る儀式において、何の役にも立たないんだよ!」
「うわぁ……」
ルキの身もふたもない言葉にラフィエルは胸に手を当てて感慨にふけっていたのに、その気分をぶち壊された。
「……でも、本当に気にすることはないぞ。この魔神を倒した三大魔法少女というカテゴリーもパヴロヴァ王国が〝魔装〟という魔法を衣として纏う最新鋭の技術を広めたいというのと、この国には女性でも強い魔法使いがいるのだと他国に宣伝したいからに過ぎない。時代や状況によってこういうのは変わっていくものだ。いちいち気にする必要は……」
「———待て、何? その〝魔装〟っていうの?」
〝魔装〟?
世界を救った英雄であるルキにすら耳なじみのない言葉であった。
「知らないのか? 魔道具だよ。魔法の衣———〝魔衣〟を纏って身体能力をアップさせたり、少ない魔力で高位魔法を発動させたりする、最新鋭の魔法技術。その特性上、女性でしかも年若い乙女にしか身にまとうことができないから、今現在王国は大量に戦う乙女を集めようとしている」
「そんな技術が……」
「ここに書いてあるじゃないか———」
トントンとラフィエルが雑誌の上の文字を指で叩く。
「———三大魔女、と。いや、魔法少女……と言い換えた方がいいかな。この王国で一番カッコよくて憧れられる職業っていうのは〝魔法少女〟の事なんだよ」
「…………そうなんだ」
としか、ルキには言えなかった。
人類が生み出す最新鋭の魔道具が次々と生まれる場所、パヴロヴァ王国の大魔法都市・アルテニア。そこから遠く離れた辺境をずっと旅していたルキには耳なじみのない言葉だった。
いや……そうではない。
ルキの頭をよぎったのは先ほど猫を拾い上げた、漆黒のドレスの少女。
「ルキ? ちょっとぐらいは耳にしたことがあるだろう? 目にしたことがあるだろう? 魔衣を纏った女の子たちを。彼女たちは訓練のために市街で犯罪者を捕える治安維持活動をしているんだぞ? 派手なドレスを着た女の子たちを見たことはなかったか?」
「あ~……そういえば、そんな奇天烈な格好をした小娘どもが屋根の上をぴょんぴょん飛び回っていたような……近頃は変な奴がいるな~ってぐらいに思っていたけど……」
「ハァ~……君、この都市に戻って来てどのくらいになるんだ?」
「………半年」
「結構いるな。聞いたことがないんじゃなくて、耳を塞いでいたんだろう? 自分を認めていない社会に絶望して背中を向けているから、世間の新しい情報が耳に入って来ないんだ」
「ウッ……!」
真面目に定職に就こうとこの都市に帰ってきたはいいものの。対人関係を築くのが苦手で、世間と距離を置きがちになってしまっていた。
外の世界に興味を、わざと示さずにいた。
そんな自分が世間から置いて行かれるのは当然のことであると、本日何度目かわからないが、またルキは言葉を詰まらせた。
「ルキ。君が英雄になれなかったのは、君自身のせいだ。変に格好つけて表舞台に立とうとせずに重要な時にいなかったからタイミングを逃したんだ。あの時、君が旅に出なければ、こうはならなかったかもしれない」
「そんなこと———!」
言われなくてもわかっている!
俺自身がよくわかっている。
だけど、人に言われるとカチンとくる。腹が立つ。
行き場のない、どうしようもない感情が口をついて出そうにな、
「———わかってんだ、」
「だからまたやり直せ」
遮られた。
バッと一枚のチラシが眼前に突き出される。
大きな建物の前にずらっと整列している空色のメイド服を着た少女たちの写像。その下に文字が焼き付けられている。
「……『聖ヘキサ魔法少女学院』? なんだこれ?」
ルキは刻まれている文字をそのまま読み上げる。
「そのままだ。魔法少女を育てる学院だ」
「そんなの読めばわかる。なんでそれを俺の目の前に突き出したんだ? 今!」
近い。呼吸をするたびにチラシがゆらゆら揺れる。
「ここで働いてもらう」
「————は?」
何を……言っているんだ?
「誰に?」
「君に」
「……清掃員でもしろって言うのか?」
「いや———教師をしてもらう」
「できると思うのか?」
「君にしかできないと思っている」
スッとチラシをしまい、見せたラフィエルの顔は腹が立つほど自信たっぷりの笑み。そして、信頼の眼差しをルキに向けていた。
「てめぇ……どうしてここが……!」
睨みつけ、歯をむき出しにするルキに対してラフィエルは目を丸くする。
「おいおい、十年ぶりに会う仲間に対してその態度は何だ? 魔神を倒した後にそれぞれの未来を歩んでいこうと別れてそれっきりじゃないか。感動の再会だというのに君は親の仇を見るような瞳で私を見る。こんなに悲しいことはないよ」
肩をすくめながら、ずんずんと事務所の中へ入っていくラフィエル。埃っぽい部屋を歩き、その拍子に崩れた前髪をさらりと手の甲で流し、部屋の中心にある来客用のソファにドカッと腰を下ろすラフィエル。
その時に埃が舞い、小さく「汚な……」と呟いた後、じろりとルキに目線をやる。
「まぁ、この街にいるのに私たちに連絡の一つもよこさなかったんだから、概ねわかっているがね。君がどんな気持ちを抱いているのか。君が今———どれだけ腐っているか」
両肘を膝の上に立てて、手のひらを組んでラフィリアはあごをその上に乗せた。
そして、挑発するような目線で見上げて来る。
「…………」
その瞳が、ルキは苦手だった。
全てを見抜くような、嘘をついても無駄だと言わんばかりの目線。
「う、うるせぇよ。俺には俺の人生設計があんの! 今までのやり方とは違う、新しいやり方で俺だけの人生を歩んでいくために……お前らとは決別して……!」
「今思いついたことを適当に喋らなくていいよ。君の事なら全部わかっているから———」
ウッ、と言葉に詰まるルキ。
満面の笑みを浮かべるラフィリアはそのまま畳みかけるように言葉を続ける。
「———私たちは誰も倒せなかった最強最悪の魔神を倒して、これからは自由にやりたいようにやって生きていけると思った。だから、旅に出た。世界を知って新しい自分になろうとした。だけど、ここに帰って来て誰でもできるような誰もやらないような仕事をやっているところを見るに……無駄だったって感じだね」
「ウッ……!」
図星を突かれて、今度は思いっきり大きな声が漏れ出た。
「自分探しに世界を旅して、自分は見つかった?」
「……世界中を旅して、一つだけわかったことがある」
「ん、何かなそれは?」
「自分なんて探さなくても、いつも傍にいる」
ラフィエルはルキの言葉には何も答えず、ただ優し気な目線を向けていた。
ルキは顔に手を当て、
「馬鹿だった……のかもしれないな。ちょっと考えれば自分が何ができて何をしたいやつなのか。わかるのに、十年も世界中を飛び回って、いろんな光景を見てきたのに……結局得た結論は旅に出ない方がよかった……だもんな」
「……旅に出て色んな物を見たんだろ?」
「ああ」
「色んな人に会ったんだろ?」
「いや」
「……そんなことはないはずだ。旅に出たのなら、絶対に頼らなければいけなかったはずだ」
「人には頼らなければいけない場面はあった。だけど、怖かった。だから頼らなかった」
「……は?」
ラフィエルの声色が変わる。
「怖かった……って、君が? ルキ・ロングロードが?」
「知らねぇ人は怖えよ! だから、そんな場面が来ても自力で何とかした! 何とかできなかった場面でも、最低限度のコミュニケーションに留めて……旅先で出会った人とはほとんど会話してない」
「それ……旅に出た意味ないだろ」
「……………」
まぁな、とは心の中で言っておいた。
いい景色や知らない文化に触れることが旅の醍醐味だと思って出発した。だけど、それが違うと言うのは旅から帰ってきてわかった。
人との交流こそが旅の醍醐味だった。
「……そうして帰ってきて、平和になって変わった世界に対応できずこんな汚い事務所で探偵の真似事か」
「返す言葉もない」
ルキはもう言い返すのも疲れたと首を振り、大きく「ハァ~…… 」と一番大きなため息を吐いた。
「それにしても! ちょっとは……! もうちょっと……何とかなると思ったよ……! だって俺、魔神を倒した四人の内一人だったんだもん! みんなが英雄とあがめてくれて、就職口には困らないと思ったよ! でもさ、でもさ……何で……何で……!」
ばさりと来客用の机に雑誌を置く。
『ヒーローマンスリーニュース』
平和になって発展した製紙技術により作られた薄い情報誌。毎月、都市アルテニアの最新情報や、過去に存在した英雄や魔族の情報を掲載している人気雑誌だ。
拍子に描かれているのは三人の女性。
聖母のような笑みをたたえた金髪の女性と本当に体が小さい五歳ぐらいの幼女、そしてこの部屋にいるラフィエルが剣を持ち正面を見つめている写像(光魔法によって現実の光景そのままの画像を焼きつけた紙のこと)がある。
その——写像の中に男の姿はない。
だが、書かれている。
『救世の三大魔女。ここにあり。 ~魔神を倒して世界を救った三人の女神。たった三人だけでどうやって魔神を倒せたのか?~』
「どうして俺がハブられてんだよ 」
〝魔人を倒した英雄として〟の写像の中に、ルキの姿はなかった。
「あいつは俺達が、俺達四人で倒したのに!」
「仕方がないじゃないか。それ撮った時、君この街にいなかったんだから———」
「ウッ……!」
自分探しの真っ最中だったときのことを言われてルキは言葉につまり、ラフィエルは「うわ……なつかし、何年前の写像なんだ?コレ……」と言いながら『ヒーローマンスリーニュース』を拾う。
「それにこんなものはただのわかりやすいプロパガンダ、くくり、指標だ。大衆の目をわかりやすい的に集めて、民衆の支持を得る。どこの国でもよくやる人気取りのためのアイドルに担ぎ上げられただけで、正確さは求められていない。ハブられたからって気にするな。君がいたことはちゃんと私たちの胸の中に刻まれているから……」
「お前らだけの胸に刻まれても、就職という生きるすべを得る儀式において、何の役にも立たないんだよ!」
「うわぁ……」
ルキの身もふたもない言葉にラフィエルは胸に手を当てて感慨にふけっていたのに、その気分をぶち壊された。
「……でも、本当に気にすることはないぞ。この魔神を倒した三大魔法少女というカテゴリーもパヴロヴァ王国が〝魔装〟という魔法を衣として纏う最新鋭の技術を広めたいというのと、この国には女性でも強い魔法使いがいるのだと他国に宣伝したいからに過ぎない。時代や状況によってこういうのは変わっていくものだ。いちいち気にする必要は……」
「———待て、何? その〝魔装〟っていうの?」
〝魔装〟?
世界を救った英雄であるルキにすら耳なじみのない言葉であった。
「知らないのか? 魔道具だよ。魔法の衣———〝魔衣〟を纏って身体能力をアップさせたり、少ない魔力で高位魔法を発動させたりする、最新鋭の魔法技術。その特性上、女性でしかも年若い乙女にしか身にまとうことができないから、今現在王国は大量に戦う乙女を集めようとしている」
「そんな技術が……」
「ここに書いてあるじゃないか———」
トントンとラフィエルが雑誌の上の文字を指で叩く。
「———三大魔女、と。いや、魔法少女……と言い換えた方がいいかな。この王国で一番カッコよくて憧れられる職業っていうのは〝魔法少女〟の事なんだよ」
「…………そうなんだ」
としか、ルキには言えなかった。
人類が生み出す最新鋭の魔道具が次々と生まれる場所、パヴロヴァ王国の大魔法都市・アルテニア。そこから遠く離れた辺境をずっと旅していたルキには耳なじみのない言葉だった。
いや……そうではない。
ルキの頭をよぎったのは先ほど猫を拾い上げた、漆黒のドレスの少女。
「ルキ? ちょっとぐらいは耳にしたことがあるだろう? 目にしたことがあるだろう? 魔衣を纏った女の子たちを。彼女たちは訓練のために市街で犯罪者を捕える治安維持活動をしているんだぞ? 派手なドレスを着た女の子たちを見たことはなかったか?」
「あ~……そういえば、そんな奇天烈な格好をした小娘どもが屋根の上をぴょんぴょん飛び回っていたような……近頃は変な奴がいるな~ってぐらいに思っていたけど……」
「ハァ~……君、この都市に戻って来てどのくらいになるんだ?」
「………半年」
「結構いるな。聞いたことがないんじゃなくて、耳を塞いでいたんだろう? 自分を認めていない社会に絶望して背中を向けているから、世間の新しい情報が耳に入って来ないんだ」
「ウッ……!」
真面目に定職に就こうとこの都市に帰ってきたはいいものの。対人関係を築くのが苦手で、世間と距離を置きがちになってしまっていた。
外の世界に興味を、わざと示さずにいた。
そんな自分が世間から置いて行かれるのは当然のことであると、本日何度目かわからないが、またルキは言葉を詰まらせた。
「ルキ。君が英雄になれなかったのは、君自身のせいだ。変に格好つけて表舞台に立とうとせずに重要な時にいなかったからタイミングを逃したんだ。あの時、君が旅に出なければ、こうはならなかったかもしれない」
「そんなこと———!」
言われなくてもわかっている!
俺自身がよくわかっている。
だけど、人に言われるとカチンとくる。腹が立つ。
行き場のない、どうしようもない感情が口をついて出そうにな、
「———わかってんだ、」
「だからまたやり直せ」
遮られた。
バッと一枚のチラシが眼前に突き出される。
大きな建物の前にずらっと整列している空色のメイド服を着た少女たちの写像。その下に文字が焼き付けられている。
「……『聖ヘキサ魔法少女学院』? なんだこれ?」
ルキは刻まれている文字をそのまま読み上げる。
「そのままだ。魔法少女を育てる学院だ」
「そんなの読めばわかる。なんでそれを俺の目の前に突き出したんだ? 今!」
近い。呼吸をするたびにチラシがゆらゆら揺れる。
「ここで働いてもらう」
「————は?」
何を……言っているんだ?
「誰に?」
「君に」
「……清掃員でもしろって言うのか?」
「いや———教師をしてもらう」
「できると思うのか?」
「君にしかできないと思っている」
スッとチラシをしまい、見せたラフィエルの顔は腹が立つほど自信たっぷりの笑み。そして、信頼の眼差しをルキに向けていた。
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