自然派ママの異世界事件簿
10
「ここが柊の部屋よ」
夕食のあと、エセルに案内されて自分の部屋の行く事になった。
屋敷の二階にあり、想像通りに広い部屋だった。
ダブルベッドぐらい大きなベッドは、天蓋付き。まるでお姫様のベッドだった。
窓も大きく、昼間は海を一望できるらしい。
「あと、これが着替えね。他に必要なものはあるかしら?」
「大丈夫みたいね。歯ブラシもあるのね、本当にありがたいわ」
私は軽くエセルをハグしてしまった。
息子と同じぐらいの若い娘で、どうしても他人に見えない。個人的には若菜よりもエセルが嫁に来て欲しい。
夕飯の時もみんなの水を注いだり、小皿を下げたり、細々とよく気が効く性格も印象が良かった。
「わあ、柊さん。ありがとう。なんだか、本当にママみたい」
「そうよ、私も日本に息子がいるかたねぇ」
しばらくベッドに腰掛けて二人でおしゃべりしていた。
私はつかさず味噌や天然塩をプレゼンした。
「塩やにがりは美容液にもなるのよ」
「本当ですか?私、ニキビに悩んでいるんですぅ」
「ちょっと待ってね」
私はにがりを原液のまま、エセルの指先にちょっとつけてみた。
「しっとりするでしょ?」
「本当、なにこれ。手荒れも治ってきてる?」
エセルは本当にびっくりとした顔を見せた。
「この液体はなんですか?」
「これはにがりね。塩を作るとき、塩水から塩分を抜いたものができるでしょ。その液体よ。しっとりするし、髪につけても良いの」
エセルの髪をみると、少し荒れていた。ここでにがりを原液でつけるのは、ちょっと躊躇われ自重した。
「それにしても若菜さんが逮捕されるなんて」
話題は殺人事件の事になってしまった。
私はすっかり忘れれたが、エセルはグズグズと鼻水を啜る。
「確かに若菜さんは食にこだわりがありすぎて、私の料理も悪く言っていたけれど」
「そうなの?」
エセルは、以前隣町の屋敷ではたらいていたという。若菜も泊まりにきた事はあり、料理をバカにされたという。
「でも殺人事件を起こすタイプには見えないのよね。ちょっとこだわりが強い人という印象で」
「そうなの…」
エセルにとっては若菜さんは複雑な感情を呼び起こすようだった。
「聖女様は嫌われていたのかしら?」
「さあ。でもブラッドリーお坊ちゃんは、嫌いでしたね」
エセルはブラッドリーをそんな風に呼んでいて、少し笑ってしまった。ブランドンもそう呼んでいて、それ以外、呼びかたがわからないそうだ。
「ブラッドリーお坊ちゃんは、実は優しいですよ。私が料理や総司を失敗しても、一度注意したら、よく手伝ってくれますし」
意外だった。
表面上は嫌なやつだが、中身は違うのかもしれない。エセルにとっては兄のような雇用主らしい。ここは待遇も良いし、私もしばらくというよりずっとここに居てほしいと力説された。
「そうね、帰る方法がわからないのよね」
若菜も逮捕されて、帰る方法は全くわからない状況になってしまった。
「私は柊のこと好き。ずっとここに住んでほしい」
嬉しい事を言われ、その気持ちも強くなってしまった。
「そうね……」
呟くが、帰る気持ちもある。もちろん、息子が心配だからだ。
帰る方法はなんとか見つけなければ。
若菜さんは本当に犯人?
違うとしたら、私は帰る方法を唯一知っている人物をみすみす失ってしまったのだろうか?
あの必死の叫び声が、いやでも思い出してしまった。
その夜、疲れた事もあって、慣れないベッドの上でもすぐ眠ってしまった。
夢をみた。
悪夢だった。
若菜さんが「濡れ技だよ、助けて!」と叫んでいた。
夕食のあと、エセルに案内されて自分の部屋の行く事になった。
屋敷の二階にあり、想像通りに広い部屋だった。
ダブルベッドぐらい大きなベッドは、天蓋付き。まるでお姫様のベッドだった。
窓も大きく、昼間は海を一望できるらしい。
「あと、これが着替えね。他に必要なものはあるかしら?」
「大丈夫みたいね。歯ブラシもあるのね、本当にありがたいわ」
私は軽くエセルをハグしてしまった。
息子と同じぐらいの若い娘で、どうしても他人に見えない。個人的には若菜よりもエセルが嫁に来て欲しい。
夕飯の時もみんなの水を注いだり、小皿を下げたり、細々とよく気が効く性格も印象が良かった。
「わあ、柊さん。ありがとう。なんだか、本当にママみたい」
「そうよ、私も日本に息子がいるかたねぇ」
しばらくベッドに腰掛けて二人でおしゃべりしていた。
私はつかさず味噌や天然塩をプレゼンした。
「塩やにがりは美容液にもなるのよ」
「本当ですか?私、ニキビに悩んでいるんですぅ」
「ちょっと待ってね」
私はにがりを原液のまま、エセルの指先にちょっとつけてみた。
「しっとりするでしょ?」
「本当、なにこれ。手荒れも治ってきてる?」
エセルは本当にびっくりとした顔を見せた。
「この液体はなんですか?」
「これはにがりね。塩を作るとき、塩水から塩分を抜いたものができるでしょ。その液体よ。しっとりするし、髪につけても良いの」
エセルの髪をみると、少し荒れていた。ここでにがりを原液でつけるのは、ちょっと躊躇われ自重した。
「それにしても若菜さんが逮捕されるなんて」
話題は殺人事件の事になってしまった。
私はすっかり忘れれたが、エセルはグズグズと鼻水を啜る。
「確かに若菜さんは食にこだわりがありすぎて、私の料理も悪く言っていたけれど」
「そうなの?」
エセルは、以前隣町の屋敷ではたらいていたという。若菜も泊まりにきた事はあり、料理をバカにされたという。
「でも殺人事件を起こすタイプには見えないのよね。ちょっとこだわりが強い人という印象で」
「そうなの…」
エセルにとっては若菜さんは複雑な感情を呼び起こすようだった。
「聖女様は嫌われていたのかしら?」
「さあ。でもブラッドリーお坊ちゃんは、嫌いでしたね」
エセルはブラッドリーをそんな風に呼んでいて、少し笑ってしまった。ブランドンもそう呼んでいて、それ以外、呼びかたがわからないそうだ。
「ブラッドリーお坊ちゃんは、実は優しいですよ。私が料理や総司を失敗しても、一度注意したら、よく手伝ってくれますし」
意外だった。
表面上は嫌なやつだが、中身は違うのかもしれない。エセルにとっては兄のような雇用主らしい。ここは待遇も良いし、私もしばらくというよりずっとここに居てほしいと力説された。
「そうね、帰る方法がわからないのよね」
若菜も逮捕されて、帰る方法は全くわからない状況になってしまった。
「私は柊のこと好き。ずっとここに住んでほしい」
嬉しい事を言われ、その気持ちも強くなってしまった。
「そうね……」
呟くが、帰る気持ちもある。もちろん、息子が心配だからだ。
帰る方法はなんとか見つけなければ。
若菜さんは本当に犯人?
違うとしたら、私は帰る方法を唯一知っている人物をみすみす失ってしまったのだろうか?
あの必死の叫び声が、いやでも思い出してしまった。
その夜、疲れた事もあって、慣れないベッドの上でもすぐ眠ってしまった。
夢をみた。
悪夢だった。
若菜さんが「濡れ技だよ、助けて!」と叫んでいた。
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