第3次パワフル転生野球大戦ACE
087 野球部改革③
筋トレ研究部に助力を乞いに行った翌日の放課後。
野球部の部室棟前のグラウンドに、山中先生に渡したリストに記載していた合計12名の部員達が集まってくれていた。
そんな彼らの前に虻川先生と共に出て、ここに来て貰った経緯を説明し始める。
「――と言う訳で、皆さんには野球部に加わって練習をしていただきたいんです」
そして最後にそうお願いして、俺は頭を下げた。
「…………いや、そんなこと急に言われてもな」
対して1人の部員が代表して応じる。
ええと、この人は……上村孝宗先輩だな。
ステータスを見れば名前は一目瞭然だ。
とは言え、あの僅かな時間で顔と名前が一致しているのは少し不自然だからな。
昨日も、リストを書く時には山中先生に確認してワンクッション置いといたし。
ついついステータス画面で名前を確認してしまったが、不意に名前を呼ばないように気をつけよう。
まあ、それはさて置き。
上村先輩も他の部員達もたった今詳しい説明を聞いたばかり。
それ故に、話を完全に咀嚼し切れずにいるようだ。
当然ながら、もっと言葉を重ねて説得する必要がある。
「折角鍛えた筋肉。公の場で披露してみませんか?」
この場に来て貰った筋トレ研究部の部員達は、明らかにボディビルダー志望ではない高校1、2年生の中からステータスや適性で選抜した人達だ。
そんな彼らが筋トレ研究部に所属している根本的な目的は、部活動紹介でも触れていた通り、筋トレを通じて自信をつけることだろう。
特に何らかのスポーツに鍛えた筋肉を還元しようという訳じゃない。
彼らはこのまま黙々と体を鍛え続け、そのまま淡々と卒業していくことになる。
社会に出てからもボディビルダーを目指す訳でもなく、何か別のスポーツをする訳でもなく、ただ習慣として筋トレを続けていく。
何か特別なきっかけがなければ。
彼らの筋トレは趣味の範疇に留まることになる訳だ。
勿論、それは何ら悪いことではない。
筋トレを通じて精神を健全に保ったまま社会人としてやっていくことができるのであれば、十分過ぎる話だ。
けれど、多分彼らには皆一様に野球に対して燻った気持ちがある。
そうでもなければ、プロ野球選手が実践する筋トレの検証などしないだろう。
とは言え――。
「公の場って試合か? それはさすがにちょっとな……」
上村先輩はそう言うと、視線を逸らしながら目を伏せてしまう。
他の面々もまた同じように消極的な雰囲気だ。
この反応はやはり野球に対する苦手意識のせいだろう。
遠ざけたいが、どうしても嫌いにはなり切れない。
……何だか複雑な乙女心みたいになってるな。
そんな冗談はともかくとして。
「とりあえず皆さん、試してみませんか?」
「試す? 何を?」
「今まで鍛えてきた筋肉で、どれだけのことができるかを」
彼らは今一ピンとこないようで、疑問の目を向けてくる。
「野球部云々については一先ず置いておいて、俺達が普段やってる練習を体験してみて下さい。いわゆる体験入部です」
「体験入部……?」
野球に対する苦手意識は、野球による成功体験でしか払拭することはできない。
鍛えた体に適切な指導を加えれば、目に見えた形で成果が得られるだろう。
動画配信者を目指している4人組が、今では結構練習にハマっているように。
技術的なステップアップを実感することができれば、野球に対する意識もガラリと変わってくれるかもしれない。
あるいは、試合に対しても積極的になってくれるかもしれない。
「……まあ、とりあえず練習ぐらいならいいか」
「そうだな」
「それぐらいなら、いつもやってることとそう変わんないだろうしな」
上村先輩の言葉に他の部員達も追従する。
代表して話しているだけあって、どうやら人望もあるようだ。
「1週間って話だったか?」
「はい。山中先生にはそのようにお願いしてあります」
「それで? 何をするんだ?」
「日々トレーニングをしている皆さんなら分かると思いますが、1週間という時間は短いです。ウチは進学校なので尚更ですね」
上村先輩は同意するように頷く。
それに軽く頷き返してから続ける。
「1週間で全てをするのは不可能です。なので、それぞれに見合った練習を集中的に行います。具体的にはバッティングとピッチングですね」
この2つは素人にも分かり易い野球の華だ。
特にバッティングなんかは、前世でもバッティングセンターという施設があるぐらいには娯楽性が高い。
うまく打てた時の解放感はストレス解消にも繋がる。
数多ある野球の要素の中でも、一般的に楽しさを感じ易いものだ。
そしてピッチング。
これはある種の羨望の的。
野球の花形だ。
それがうまくできるようになれば、興奮も一入というものだろう。
分かり易い成果となると、やはりこの2つがいい。
ステータスを見て、投手に適性がある人はピッチングを。
それ以外はバッティングを。
1週間で可能な限り仕上げて見せよう。
「さて、まずはフォームチェックから。やってみましょう」
野球部の部室棟前のグラウンドに、山中先生に渡したリストに記載していた合計12名の部員達が集まってくれていた。
そんな彼らの前に虻川先生と共に出て、ここに来て貰った経緯を説明し始める。
「――と言う訳で、皆さんには野球部に加わって練習をしていただきたいんです」
そして最後にそうお願いして、俺は頭を下げた。
「…………いや、そんなこと急に言われてもな」
対して1人の部員が代表して応じる。
ええと、この人は……上村孝宗先輩だな。
ステータスを見れば名前は一目瞭然だ。
とは言え、あの僅かな時間で顔と名前が一致しているのは少し不自然だからな。
昨日も、リストを書く時には山中先生に確認してワンクッション置いといたし。
ついついステータス画面で名前を確認してしまったが、不意に名前を呼ばないように気をつけよう。
まあ、それはさて置き。
上村先輩も他の部員達もたった今詳しい説明を聞いたばかり。
それ故に、話を完全に咀嚼し切れずにいるようだ。
当然ながら、もっと言葉を重ねて説得する必要がある。
「折角鍛えた筋肉。公の場で披露してみませんか?」
この場に来て貰った筋トレ研究部の部員達は、明らかにボディビルダー志望ではない高校1、2年生の中からステータスや適性で選抜した人達だ。
そんな彼らが筋トレ研究部に所属している根本的な目的は、部活動紹介でも触れていた通り、筋トレを通じて自信をつけることだろう。
特に何らかのスポーツに鍛えた筋肉を還元しようという訳じゃない。
彼らはこのまま黙々と体を鍛え続け、そのまま淡々と卒業していくことになる。
社会に出てからもボディビルダーを目指す訳でもなく、何か別のスポーツをする訳でもなく、ただ習慣として筋トレを続けていく。
何か特別なきっかけがなければ。
彼らの筋トレは趣味の範疇に留まることになる訳だ。
勿論、それは何ら悪いことではない。
筋トレを通じて精神を健全に保ったまま社会人としてやっていくことができるのであれば、十分過ぎる話だ。
けれど、多分彼らには皆一様に野球に対して燻った気持ちがある。
そうでもなければ、プロ野球選手が実践する筋トレの検証などしないだろう。
とは言え――。
「公の場って試合か? それはさすがにちょっとな……」
上村先輩はそう言うと、視線を逸らしながら目を伏せてしまう。
他の面々もまた同じように消極的な雰囲気だ。
この反応はやはり野球に対する苦手意識のせいだろう。
遠ざけたいが、どうしても嫌いにはなり切れない。
……何だか複雑な乙女心みたいになってるな。
そんな冗談はともかくとして。
「とりあえず皆さん、試してみませんか?」
「試す? 何を?」
「今まで鍛えてきた筋肉で、どれだけのことができるかを」
彼らは今一ピンとこないようで、疑問の目を向けてくる。
「野球部云々については一先ず置いておいて、俺達が普段やってる練習を体験してみて下さい。いわゆる体験入部です」
「体験入部……?」
野球に対する苦手意識は、野球による成功体験でしか払拭することはできない。
鍛えた体に適切な指導を加えれば、目に見えた形で成果が得られるだろう。
動画配信者を目指している4人組が、今では結構練習にハマっているように。
技術的なステップアップを実感することができれば、野球に対する意識もガラリと変わってくれるかもしれない。
あるいは、試合に対しても積極的になってくれるかもしれない。
「……まあ、とりあえず練習ぐらいならいいか」
「そうだな」
「それぐらいなら、いつもやってることとそう変わんないだろうしな」
上村先輩の言葉に他の部員達も追従する。
代表して話しているだけあって、どうやら人望もあるようだ。
「1週間って話だったか?」
「はい。山中先生にはそのようにお願いしてあります」
「それで? 何をするんだ?」
「日々トレーニングをしている皆さんなら分かると思いますが、1週間という時間は短いです。ウチは進学校なので尚更ですね」
上村先輩は同意するように頷く。
それに軽く頷き返してから続ける。
「1週間で全てをするのは不可能です。なので、それぞれに見合った練習を集中的に行います。具体的にはバッティングとピッチングですね」
この2つは素人にも分かり易い野球の華だ。
特にバッティングなんかは、前世でもバッティングセンターという施設があるぐらいには娯楽性が高い。
うまく打てた時の解放感はストレス解消にも繋がる。
数多ある野球の要素の中でも、一般的に楽しさを感じ易いものだ。
そしてピッチング。
これはある種の羨望の的。
野球の花形だ。
それがうまくできるようになれば、興奮も一入というものだろう。
分かり易い成果となると、やはりこの2つがいい。
ステータスを見て、投手に適性がある人はピッチングを。
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