第3次パワフル転生野球大戦ACE
閑話04 浮いてる茜(美海ちゃん目線)
いつもの昼休み。
昼食を終え、秀治郎君や茜と話をしていると――。
「ねーねー、浜中さん」
「泉南さん? どうしたの?」
「ちょっといーい?」
4人組の内の1人。泉南琴羅さんが近寄ってきて、そんな風に言いながら視線で自分についてくるように促してきた。
どうやら私だけに来て欲しいようだ。
秀治郎君もそれを理解してか小さく頷き、隣の茜に適当な話題を振り始めた。
私は泉南さんに「分かったわ」と答えて席を立ち、4人組の近くに向かった。
「それで? 一体どうしたの?」
「鈴木さんのことです」
私の問いかけに仁科すずめさんが簡潔に答える。
けれど、簡潔に答え過ぎててちょっと要領を得ない。
「茜のこと?」
「そーそー」
諏訪北美瓶さんも肯定しかしない。
考えても心当たりがなくて首を傾げることしかできない。
助けを求めるように残る佳藤琉子さんに視線を向ける。
すると、彼女は苦笑気味に口を開いた。
「この前の動画、他のクラスや他学年でも結構話題になってたらしくてさ。野村君がちょっとした有名人になってるんだ。勿論、校内だけだけど」
「え、そうなの?」
それも茜とは関係なさそうだけど、初耳の情報だったので驚きを顕にしてしまう。
「浜中さんは結構2人と一緒にいるから気づかなかったのかもね」
いや、私も一応、他のクラスメイトと交流してない訳じゃないけれども……。
秀治郎君とよく話をしてるから、その手の話題は逆に避けられてたのかも。
「で、それが茜と何の関係があるの?」
「鈴木さんってー、いっつも野村君と一緒にいるでしょー?」
「そうね。幼馴染だし」
「幼馴染ってことなら、浜中さんも同じですよね?」
「ん、まあ、それはそうだけど……あの子は保育園から一緒だから。私とは年季が全然違うわ。親同士のつき合いもあるみたいだしね」
年数もそうだけど、その濃さも全く違う。
秀治郎君と茜は休日も基本一緒にいるらしいし。
茜じゃないけれど、もうほとんど夫婦のようなものだと私も思う。
「って、私のことはいいのよ。茜がどうしたの?」
「野村君、野球が上手そうだからってお近づきになりたい子がいるみたいなんだ」
「お、お近づきって……」
「まー、ちょっと話題になるとすぐに飛びつくー? みたいな子もいるからねー」
「うーん……」
確かに世の中にはそういう人もいるらしいけれど、身近な人がその対象にされていると聞くとちょっと現実味がない。
いや、まあ、事実そうなのだとしたら、そういうものだと受け入れるしかない。
狭いコミュニティ故の一過性の熱病みたいなもの、なのかしらね。
「で、それと、茜に何の関係があるの?」
「鈴木さん、野村君とずっと一緒にいますから疎まれているみたいなんです」
「主に他のクラスや他の学年の子からねー」
「それとー、クラスメイトからもー、ちょっと浮いてるー? みたいなー」
「他のクラスの知り合いから悪く言われて、それに影響されて何だか悪い印象を持ってる子も出てきてるみたいなんだ」
「ああ……」
まあ、理解できないでもない。
どう見ても茜は普通とは言いがたい子だし。
「鈴木さん、トイレも野村君と一緒だもんねー」
「その言い方は語弊があります。タイミングが一緒なだけです」
2人が言う通り。秀治郎君がトイレに立つと、茜も一緒についていく。
当然ながらトイレは男女別だけど、まあ、よくある光景だ。
タイミングがズレてしまうと一緒にいられる時間が減るからだろう。
実際、休み時間が短くてすぐ離れ離れになるとか愚痴ってたし。
勿論、体調次第ではどうしてもタイミングがズレてしまうこともあるけれど。
可能な限り、合わせようとしているのは傍から見ているだけでも分かる。
「そういうところも含めて、奇異の目を向けられてる訳よね」
その辺に関しては入学当初からそうだっただろうけれど。
動画で秀治郎君に注目が集まったせいで、一層変な子に思われているのだろう。
これはちょっと問題かもしれない。
秀治郎君に対する好意が一過性のものならいずれ収まるだろうけど、茜に対する悪印象だけは何となく残ってしまうだろう。
何か対策しないと。
「まあ、鈴木さんは全く気にしなさそうだけどねー」
「茜はマイペースだからね」
むしろ無関心とでも言った方が正しいかもしれないけど、ちょっと聞こえが悪過ぎるだろうから柔らかい表現にしておいた。
「とは言え、変なちょっかいをかけられても困るわね」
「そーそー」
「何かいいアイデア、ないかなー?」
茜についてとやかく言う子達は、秀治郎君に近づきたい。
彼女達は幼馴染ってだけでひっつき虫のように傍にいる茜が気に入らない。
なら、幼馴染ってこと以外で茜が秀治郎君に相応しい存在だと示せばいい。
にわかファンのような人達にはそれが一番だろう。
「アイデアね。なくはないわ」
「どんなー?」
「茜の実力を見せつけてやればいいのよ」
「実力、ですか?」
「そう。いつもの練習を見せつければ一目瞭然なんだけど……ま、とりあえずは体育の時間と、他のクラスには校内野球大会の時がいいかしら」
私の言葉に首を傾げる4人。
そう言えば、この子達まだ茜の野球の実力を知らないのよね。
彼女達に無回転打球を見せた時は、茜は何もしてなかったし。
最近は座学がメインだったし。
「貴方達も楽しみにしとくといいわ。間違いなく驚くから」
とりあえずは同じクラスの子から。
茜がどういう子なのか。
実際のところを知らしめてやれば、他のクラスや他学年の生徒にとやかく言われても惑わされにくくなるだろう。
逆にクラスメイト発信で、あの子が普通に枠組みにはめ込めない子だってことが伝わっていくかもしれない。
「秀治郎君と茜には私から言っておくわ」
私はまだ戸惑い気味の4人にそう言い、自分の席に戻ったのだった。
昼食を終え、秀治郎君や茜と話をしていると――。
「ねーねー、浜中さん」
「泉南さん? どうしたの?」
「ちょっといーい?」
4人組の内の1人。泉南琴羅さんが近寄ってきて、そんな風に言いながら視線で自分についてくるように促してきた。
どうやら私だけに来て欲しいようだ。
秀治郎君もそれを理解してか小さく頷き、隣の茜に適当な話題を振り始めた。
私は泉南さんに「分かったわ」と答えて席を立ち、4人組の近くに向かった。
「それで? 一体どうしたの?」
「鈴木さんのことです」
私の問いかけに仁科すずめさんが簡潔に答える。
けれど、簡潔に答え過ぎててちょっと要領を得ない。
「茜のこと?」
「そーそー」
諏訪北美瓶さんも肯定しかしない。
考えても心当たりがなくて首を傾げることしかできない。
助けを求めるように残る佳藤琉子さんに視線を向ける。
すると、彼女は苦笑気味に口を開いた。
「この前の動画、他のクラスや他学年でも結構話題になってたらしくてさ。野村君がちょっとした有名人になってるんだ。勿論、校内だけだけど」
「え、そうなの?」
それも茜とは関係なさそうだけど、初耳の情報だったので驚きを顕にしてしまう。
「浜中さんは結構2人と一緒にいるから気づかなかったのかもね」
いや、私も一応、他のクラスメイトと交流してない訳じゃないけれども……。
秀治郎君とよく話をしてるから、その手の話題は逆に避けられてたのかも。
「で、それが茜と何の関係があるの?」
「鈴木さんってー、いっつも野村君と一緒にいるでしょー?」
「そうね。幼馴染だし」
「幼馴染ってことなら、浜中さんも同じですよね?」
「ん、まあ、それはそうだけど……あの子は保育園から一緒だから。私とは年季が全然違うわ。親同士のつき合いもあるみたいだしね」
年数もそうだけど、その濃さも全く違う。
秀治郎君と茜は休日も基本一緒にいるらしいし。
茜じゃないけれど、もうほとんど夫婦のようなものだと私も思う。
「って、私のことはいいのよ。茜がどうしたの?」
「野村君、野球が上手そうだからってお近づきになりたい子がいるみたいなんだ」
「お、お近づきって……」
「まー、ちょっと話題になるとすぐに飛びつくー? みたいな子もいるからねー」
「うーん……」
確かに世の中にはそういう人もいるらしいけれど、身近な人がその対象にされていると聞くとちょっと現実味がない。
いや、まあ、事実そうなのだとしたら、そういうものだと受け入れるしかない。
狭いコミュニティ故の一過性の熱病みたいなもの、なのかしらね。
「で、それと、茜に何の関係があるの?」
「鈴木さん、野村君とずっと一緒にいますから疎まれているみたいなんです」
「主に他のクラスや他の学年の子からねー」
「それとー、クラスメイトからもー、ちょっと浮いてるー? みたいなー」
「他のクラスの知り合いから悪く言われて、それに影響されて何だか悪い印象を持ってる子も出てきてるみたいなんだ」
「ああ……」
まあ、理解できないでもない。
どう見ても茜は普通とは言いがたい子だし。
「鈴木さん、トイレも野村君と一緒だもんねー」
「その言い方は語弊があります。タイミングが一緒なだけです」
2人が言う通り。秀治郎君がトイレに立つと、茜も一緒についていく。
当然ながらトイレは男女別だけど、まあ、よくある光景だ。
タイミングがズレてしまうと一緒にいられる時間が減るからだろう。
実際、休み時間が短くてすぐ離れ離れになるとか愚痴ってたし。
勿論、体調次第ではどうしてもタイミングがズレてしまうこともあるけれど。
可能な限り、合わせようとしているのは傍から見ているだけでも分かる。
「そういうところも含めて、奇異の目を向けられてる訳よね」
その辺に関しては入学当初からそうだっただろうけれど。
動画で秀治郎君に注目が集まったせいで、一層変な子に思われているのだろう。
これはちょっと問題かもしれない。
秀治郎君に対する好意が一過性のものならいずれ収まるだろうけど、茜に対する悪印象だけは何となく残ってしまうだろう。
何か対策しないと。
「まあ、鈴木さんは全く気にしなさそうだけどねー」
「茜はマイペースだからね」
むしろ無関心とでも言った方が正しいかもしれないけど、ちょっと聞こえが悪過ぎるだろうから柔らかい表現にしておいた。
「とは言え、変なちょっかいをかけられても困るわね」
「そーそー」
「何かいいアイデア、ないかなー?」
茜についてとやかく言う子達は、秀治郎君に近づきたい。
彼女達は幼馴染ってだけでひっつき虫のように傍にいる茜が気に入らない。
なら、幼馴染ってこと以外で茜が秀治郎君に相応しい存在だと示せばいい。
にわかファンのような人達にはそれが一番だろう。
「アイデアね。なくはないわ」
「どんなー?」
「茜の実力を見せつけてやればいいのよ」
「実力、ですか?」
「そう。いつもの練習を見せつければ一目瞭然なんだけど……ま、とりあえずは体育の時間と、他のクラスには校内野球大会の時がいいかしら」
私の言葉に首を傾げる4人。
そう言えば、この子達まだ茜の野球の実力を知らないのよね。
彼女達に無回転打球を見せた時は、茜は何もしてなかったし。
最近は座学がメインだったし。
「貴方達も楽しみにしとくといいわ。間違いなく驚くから」
とりあえずは同じクラスの子から。
茜がどういう子なのか。
実際のところを知らしめてやれば、他のクラスや他学年の生徒にとやかく言われても惑わされにくくなるだろう。
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