第3次パワフル転生野球大戦ACE
005 俺の名前、今生の家族
生まれてしばらくの間は外界の様子をよく把握できなかった。
しかし、ようやく五感が整ってきたらしい。
周りの状況が少しずつ分かってきた。
その辺りの感覚に、実際の赤ん坊との違いがあるのかは分からない。
前世では、赤ん坊だった時の記憶なんてないからな。
もし何か違いがあったのだとしたら、あるいは自意識と体の繋がりが不確かだったりしたのかもしれない。
「ほら秀治郎、パパだぞ~」
そんな真面目な思索を邪魔してくる男の声。
同時に生じた浮遊感に、軽くタマヒュンする。
赤ん坊相手に勢いをつけ過ぎだ!
まだ首が座ってないんだぞ!
頭の中で文句を言いつつ、男を睨む。
当然、首が逝かないように手でしっかりサポートされてはいるものの、自意識と知識があるだけに恐怖心がヤバい。
半ば生死を相手に委ねてるようなもんだからな。
「アナタ、またそんな急に抱き上げて。秀治郎が驚いてるじゃないですか」
横からおっとりとした若い女性の声。
お察しの通り、俺の今生の両親だ。
秀治郎は俺の名前。名字は野村。
父親は野村健也。母親は野村美千代と言うらしい。
2人共40手前で子供を諦めつつあったところに俺が生まれたためか、物凄く溺愛してくる。
ちょっと鬱陶しいぐらいだが、悪い気分じゃない。
まあ、記憶がないだけで、前世でも生まれたばかりの頃は無条件でちやほやされてたのかもしれないけど。
…………そう言えば、前世の両親はどうなったのだろう。
考えないようにしていたが、ふと思ってしまった。
関係は別に悪くなかった。
けれど、最後まで社畜根性が抜けず、世界の終わりが近いと言われても実家に帰ることはなかった。
会社は休業する気配すらなかったからな。
日本人気質という奴だったのか、単に極めつけのブラック企業だったのか。
とにもかくにも休日も呼び出しに備えて家に留まり、時間を潰すようにゲームばかりしていた。
今となっては、とっとと実家に帰って最期を一緒に過ごせばよかったと思う。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
…………きっと。
両親はもっとまともな神様に拾われて、もっと普通の世界に転生したはずだ。
そう思っておくことにする。
そう思っておくしか、ない。
「よし。秀治郎。ボール遊びをしような」
「アナタ、ちゃんと清潔で柔らかいボールでしょうね」
「も、もちろんだ」
前回、遊び道具として古びた野球の硬球を持ってきた父さんに釘を刺す母さん。
あの時は、怒った母さんの顔にはちびりかけた。
声は穏やかなのに般若のようになってたからな。
と言うか、さっきの急な抱き上げとの合わせ技で今も割とヤバい。
「ほ、ほら。今の内からボールに慣れておこうな」
申し訳ないけど、正直父さんは少し考えが浅いのよな。
まあ、愛してくれていることは疑いようもないけれど。
それがちゃんと分かるからか、あるいは、本能的なものなのか。
2人が両親だという強い感覚がある。
記憶を持ったまま転生して、親愛の情を抱けるか心配だったけど大丈夫そうだ。
…………結果として、前世は親不孝者としか言いようがない状態だった。
この悔いは決して消えはしない。
しかし、今生で孝行息子となれれば少しは軽くなるかもしれない。
浅ましい代償行為のようなもの。
けれども。
それを人生目標の1つに置いておくのは、不純ではあれ、悪ではないだろう。
しかし、ようやく五感が整ってきたらしい。
周りの状況が少しずつ分かってきた。
その辺りの感覚に、実際の赤ん坊との違いがあるのかは分からない。
前世では、赤ん坊だった時の記憶なんてないからな。
もし何か違いがあったのだとしたら、あるいは自意識と体の繋がりが不確かだったりしたのかもしれない。
「ほら秀治郎、パパだぞ~」
そんな真面目な思索を邪魔してくる男の声。
同時に生じた浮遊感に、軽くタマヒュンする。
赤ん坊相手に勢いをつけ過ぎだ!
まだ首が座ってないんだぞ!
頭の中で文句を言いつつ、男を睨む。
当然、首が逝かないように手でしっかりサポートされてはいるものの、自意識と知識があるだけに恐怖心がヤバい。
半ば生死を相手に委ねてるようなもんだからな。
「アナタ、またそんな急に抱き上げて。秀治郎が驚いてるじゃないですか」
横からおっとりとした若い女性の声。
お察しの通り、俺の今生の両親だ。
秀治郎は俺の名前。名字は野村。
父親は野村健也。母親は野村美千代と言うらしい。
2人共40手前で子供を諦めつつあったところに俺が生まれたためか、物凄く溺愛してくる。
ちょっと鬱陶しいぐらいだが、悪い気分じゃない。
まあ、記憶がないだけで、前世でも生まれたばかりの頃は無条件でちやほやされてたのかもしれないけど。
…………そう言えば、前世の両親はどうなったのだろう。
考えないようにしていたが、ふと思ってしまった。
関係は別に悪くなかった。
けれど、最後まで社畜根性が抜けず、世界の終わりが近いと言われても実家に帰ることはなかった。
会社は休業する気配すらなかったからな。
日本人気質という奴だったのか、単に極めつけのブラック企業だったのか。
とにもかくにも休日も呼び出しに備えて家に留まり、時間を潰すようにゲームばかりしていた。
今となっては、とっとと実家に帰って最期を一緒に過ごせばよかったと思う。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
…………きっと。
両親はもっとまともな神様に拾われて、もっと普通の世界に転生したはずだ。
そう思っておくことにする。
そう思っておくしか、ない。
「よし。秀治郎。ボール遊びをしような」
「アナタ、ちゃんと清潔で柔らかいボールでしょうね」
「も、もちろんだ」
前回、遊び道具として古びた野球の硬球を持ってきた父さんに釘を刺す母さん。
あの時は、怒った母さんの顔にはちびりかけた。
声は穏やかなのに般若のようになってたからな。
と言うか、さっきの急な抱き上げとの合わせ技で今も割とヤバい。
「ほ、ほら。今の内からボールに慣れておこうな」
申し訳ないけど、正直父さんは少し考えが浅いのよな。
まあ、愛してくれていることは疑いようもないけれど。
それがちゃんと分かるからか、あるいは、本能的なものなのか。
2人が両親だという強い感覚がある。
記憶を持ったまま転生して、親愛の情を抱けるか心配だったけど大丈夫そうだ。
…………結果として、前世は親不孝者としか言いようがない状態だった。
この悔いは決して消えはしない。
しかし、今生で孝行息子となれれば少しは軽くなるかもしれない。
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