ひと夏を戯れたホテル

清水レモン

はじめに(だらだらしてるだけ)

 こんなにも小説を書くのが大変だとは思わなかった。
 もう、どうとりつくろっても、とりつくりようがない世界。
 下手とか才能とか、それ以前の問題じゃないかと思う。
 書けば書くほど自分になっていくような気がしているし、ますます自分が自分になってこれもうどうしようもないよなあ、諦めの境地かもしれないけど。

 けど、書くのは楽しいです。つづるのが好きなんだろう。
 もし仮に、この文章を読んでいただけるとしても、娯楽の要素を提供できるのか疑問です。疑問です、と言っている時点で心の奥底では『いや楽しんでもらえる気もするんだよねえ』という自分の本心が湧きあがっていているから恥ずかしい。

 おかしい。
 ひと夏の物語だよ?
 事実だろうと虚言だろうと、カフェではあんなに語り合えたのに。
 居酒屋で騒ぎまくるほど熱く語りもしたのに。その内容しっかり覚えている。それを書くだけ、だろう?

 なにかがブレーキになっているのかもしれない。
 気持ちを楽にして、リラックスだよと自分で自分に言い聞かせている背後で、むちゃくちゃ恐怖と不安と萎縮で頭脳筋肉が固まっていく。

 深呼吸したからといって改善できるとは限らないんだな。


 そもそも「おれ」でいく?
 名前でいく?
 一人称、二人称、三人称。
 うわー、基本的なことで考えがまとまらないのですよ。


 こんなとき電話かけたりしたっけな。
 忙しいとき、眠いとき、かんべんしてほしいわってとき、あるいは本当に不思議で『いまちょうど、同じこと考えてた』なんていうシンクロとか。
 楽しかったなあ。うれしくてうれしくてさあ。
 なのに、きちんと形にできなくてごめんなさい。
 けどね、けどさ?
 こうやって書いているのって、ペン&原稿用紙じゃないんだよ。パソコン、キーボード、インターネット環境。やっぱりこの環境この状況この世界、すごくすごくてすごいんだよ。

 って思います。
 だからもうちょっと、いや、まだまだまだまだ、あがいてみる。
 あがいたからって、どうにかなるもんじゃないのかもしれないけど、それでも。
 心の奥から『いいんだよ今のやりかたで、今の考えで、この行動で』と後押しされているような感覚がある。
 
 もうダメだよーって両手を広げて空を仰いだ風の中で、ふっ、と背中を押されたような感触。無理だと感じていたその一歩を自然に踏み出していた。そんな感覚が、まだ生々しいのです。

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