ネクスト・ステージ~チートなニートが迷宮探索。スキル【ドロップ★5】は、武器防具が装備不可!?
第34話 ストーカー行為の始まり
御手洗さんは、青い顔をして、手が震えている。
俺は少し大きめの声で御手洗さんに呼びかけた。
「御手洗さん!」
「あ、あの……」
御手洗さんは、相当、動揺している。
呼吸も荒いし、目に涙が浮かんでいる。
俺は思わず御手洗さんの手をとって握りしめた。
「大丈夫だよ! ここには、警察がいる。俺もいる。暴れた男は、手を出せない」
「は……はい……」
御手洗さんの呼吸が徐々に落ち着き、手の震えが収まってきた。
御手洗さんは、警察官に向かって小さな声で伝えた。
「監視カメラに映っている男は、若山拓也だと思います」
「ご確認ありがとうございます。若山拓也は、まだ逮捕されてないので、気をつけて下さい」
警察官によると、若山拓也は祖母の家で暴れた後、黒い車に乗って逃げた。
若山拓也は、『住居への不法侵入』や『器物破損』など明確な犯罪行為を行ったので、捜査対象になり、見つかれば逮捕されるそうだ。
「それでは、失礼します! 若山拓也が逮捕されたら、ご連絡します!」
警察官は、キッチンから出て行った。
(どうして、こんなことになったのだろう?)
俺は自分の感情を上手く整理できないでいた。
祖母の家で暴れた若い男『若山拓也』に対する怒りは、当然ある。
だが、同時に御手洗さんに対して、『言って欲しかった』という思いもあるのだ。
事前に若山拓也のこと、ストーカー被害があったことを話してくれれば、何か対応出来たかもしれない。
とはいえ……。
俺と御手洗さんが親しくなったのは、冒険者パーティーを組んで活動をしてからだし、心の距離が近くなったと感じるのは最近だ。
俺が冒険者パーティーメンバーを募集した時に、御手洗さんがストーカー被害を俺に話せただろうか? と考えると答えが出ない。
俺が聞くよりも先に、沢本さんが御手洗さんを問い質した。
「シズカ! 何で言わなかったんだ!」
「あの……」
「こっちは子供がいるんだぞ!」
「ごめんなさい! 本当に、ごめんなさい!」
沢本さんの娘優里亜ちゃんが、今回の騒動に巻き込まれた。
母親の沢本さんとしては、たまらない思いだろう。
「まあ、ストーカー野郎が悪いのは、間違いねえけど……」
沢本さんが、口ごもった。
沢本さんとしては、怒りをぶつける先が見当たらないのだろう。
御手洗さんはストーカー被害者なので、御手洗さんの責任を追及するわけにもいかない。
事前に教えてくれれば……と、俺と同じ思いがあるのだろう。
「あの……、事情をお話ししますね……」
御手洗さんが、ぽつりぽつりと話し出した。
祖母の家で暴れた若い男、若山拓也は、御手洗さんの元同僚らしい。
御手洗さんは、一流大学を卒業して、一流企業に就職したが、この男若山拓也のせいで会社にいられなくなり退職したそうだ。
電話番号も住所も変えて、引っ越し先を親にも教えなかったが、若山拓也に嗅ぎつけられてしまった。
「御手洗さんと若山拓也は、付き合っていたの?」
俺は若山拓也と御手洗さんの関係が気になってしまった。
――嫉妬か?
嫉妬かもしれないが、別れた元彼がストーカーになることはあり得る。
確認はしておきたい。
「いえ。若山拓也と付き合ったことはありません」
御手洗さんは、はっきり『違う』と口にした。
俺は内心ホッとして、少し気持ちが弛むのを感じた。
御手洗さんが、眉根を寄せて心底嫌そうな顔で話を続ける。
「でも、若山拓也は、私と付き合っていると思い込んでいました」
「えっ!? どういうこと!?」
若山拓也は、御手洗さんが配属された部署の『隣の部署』で働いていたそうだ。
隣の部署だから、御手洗さんと直接の交流はない。
当時の御手洗さんは、若山拓也と何度か朝の挨拶をしたことがある程度で、会話をした記憶はないそうだ。
ところが、ある日、同僚から突然若山拓也と付き合っているのかと聞かれた。
『御手洗さんは、若山拓也と付き合っているんでしょ? 結婚式には呼んでね!』
御手洗さんは、まったく心当たりがないので、『違う、付き合っていない』と否定した。
数日後、上司から同じことを聞かれた。
『婚約おめでとう。結婚式はいつ?』
『はい?』
御手洗さんは、また、否定した。
どうも様子がおかしい……。
御手洗さんは、上司と人事部長に相談をした。
上司と人事部長は、すぐに調査をしてくれたが、衝撃的な答えが返ってきた。
『若山拓也のSNSに、御手洗さんと旅行した写真が沢山掲載されている。本当に二人は交際していないのか?』
『旅行なんてしたことないですよ!』
上司と人事部長に見せられたのは、若山拓也のSNSに掲載されている写真だ。
北海道や沖縄で、御手洗さんと若山拓也が仲良く肩を組んでいる写真だった。
上司と人事部長は、若山拓也を呼び出して聞き取り調査を行った。
すると若山拓也は、SNSの写真を見せて『御手洗さんとお付き合いしていて婚約中だ』と告げた。
御手洗さんは、まったく心当たりがないので、再度否定した。
俺は気になったので、御手洗さんに質問してみる。
「なんで、御手洗さんと若山拓也が旅行している写真が存在するのかな……?」
「多分、合成写真だと思います。体型が私と微妙に違っていました。着ている服も私が持っている服と違いました。どこかのカップルが旅行している写真を手に入れて、顔だけ、私と若山拓也の顔に差し替えたのでしょう」
「ああ、なるほど!」
そんなことを、わざわざするのか!
手が込んでいるというか……、ヒマというか……。
「その若山って野郎は、相当イカレてやがるな!」
沢本さんの言う通りだ。
頭がおかしい。
「私は、上司と人事部長に、『まったく心当たりがない』、『若山拓也とは、付き合っていない』、『結婚する予定はない』と話しました。二人は驚いていましたが、私の話を信じてくれたのです」
「じゃあ、問題は解決したの?」
「それが……」
どうやら、まだ、あるらしい。
俺と沢本さんは顔を見合わせてから、御手洗さんに話の続きを促した。
俺は少し大きめの声で御手洗さんに呼びかけた。
「御手洗さん!」
「あ、あの……」
御手洗さんは、相当、動揺している。
呼吸も荒いし、目に涙が浮かんでいる。
俺は思わず御手洗さんの手をとって握りしめた。
「大丈夫だよ! ここには、警察がいる。俺もいる。暴れた男は、手を出せない」
「は……はい……」
御手洗さんの呼吸が徐々に落ち着き、手の震えが収まってきた。
御手洗さんは、警察官に向かって小さな声で伝えた。
「監視カメラに映っている男は、若山拓也だと思います」
「ご確認ありがとうございます。若山拓也は、まだ逮捕されてないので、気をつけて下さい」
警察官によると、若山拓也は祖母の家で暴れた後、黒い車に乗って逃げた。
若山拓也は、『住居への不法侵入』や『器物破損』など明確な犯罪行為を行ったので、捜査対象になり、見つかれば逮捕されるそうだ。
「それでは、失礼します! 若山拓也が逮捕されたら、ご連絡します!」
警察官は、キッチンから出て行った。
(どうして、こんなことになったのだろう?)
俺は自分の感情を上手く整理できないでいた。
祖母の家で暴れた若い男『若山拓也』に対する怒りは、当然ある。
だが、同時に御手洗さんに対して、『言って欲しかった』という思いもあるのだ。
事前に若山拓也のこと、ストーカー被害があったことを話してくれれば、何か対応出来たかもしれない。
とはいえ……。
俺と御手洗さんが親しくなったのは、冒険者パーティーを組んで活動をしてからだし、心の距離が近くなったと感じるのは最近だ。
俺が冒険者パーティーメンバーを募集した時に、御手洗さんがストーカー被害を俺に話せただろうか? と考えると答えが出ない。
俺が聞くよりも先に、沢本さんが御手洗さんを問い質した。
「シズカ! 何で言わなかったんだ!」
「あの……」
「こっちは子供がいるんだぞ!」
「ごめんなさい! 本当に、ごめんなさい!」
沢本さんの娘優里亜ちゃんが、今回の騒動に巻き込まれた。
母親の沢本さんとしては、たまらない思いだろう。
「まあ、ストーカー野郎が悪いのは、間違いねえけど……」
沢本さんが、口ごもった。
沢本さんとしては、怒りをぶつける先が見当たらないのだろう。
御手洗さんはストーカー被害者なので、御手洗さんの責任を追及するわけにもいかない。
事前に教えてくれれば……と、俺と同じ思いがあるのだろう。
「あの……、事情をお話ししますね……」
御手洗さんが、ぽつりぽつりと話し出した。
祖母の家で暴れた若い男、若山拓也は、御手洗さんの元同僚らしい。
御手洗さんは、一流大学を卒業して、一流企業に就職したが、この男若山拓也のせいで会社にいられなくなり退職したそうだ。
電話番号も住所も変えて、引っ越し先を親にも教えなかったが、若山拓也に嗅ぎつけられてしまった。
「御手洗さんと若山拓也は、付き合っていたの?」
俺は若山拓也と御手洗さんの関係が気になってしまった。
――嫉妬か?
嫉妬かもしれないが、別れた元彼がストーカーになることはあり得る。
確認はしておきたい。
「いえ。若山拓也と付き合ったことはありません」
御手洗さんは、はっきり『違う』と口にした。
俺は内心ホッとして、少し気持ちが弛むのを感じた。
御手洗さんが、眉根を寄せて心底嫌そうな顔で話を続ける。
「でも、若山拓也は、私と付き合っていると思い込んでいました」
「えっ!? どういうこと!?」
若山拓也は、御手洗さんが配属された部署の『隣の部署』で働いていたそうだ。
隣の部署だから、御手洗さんと直接の交流はない。
当時の御手洗さんは、若山拓也と何度か朝の挨拶をしたことがある程度で、会話をした記憶はないそうだ。
ところが、ある日、同僚から突然若山拓也と付き合っているのかと聞かれた。
『御手洗さんは、若山拓也と付き合っているんでしょ? 結婚式には呼んでね!』
御手洗さんは、まったく心当たりがないので、『違う、付き合っていない』と否定した。
数日後、上司から同じことを聞かれた。
『婚約おめでとう。結婚式はいつ?』
『はい?』
御手洗さんは、また、否定した。
どうも様子がおかしい……。
御手洗さんは、上司と人事部長に相談をした。
上司と人事部長は、すぐに調査をしてくれたが、衝撃的な答えが返ってきた。
『若山拓也のSNSに、御手洗さんと旅行した写真が沢山掲載されている。本当に二人は交際していないのか?』
『旅行なんてしたことないですよ!』
上司と人事部長に見せられたのは、若山拓也のSNSに掲載されている写真だ。
北海道や沖縄で、御手洗さんと若山拓也が仲良く肩を組んでいる写真だった。
上司と人事部長は、若山拓也を呼び出して聞き取り調査を行った。
すると若山拓也は、SNSの写真を見せて『御手洗さんとお付き合いしていて婚約中だ』と告げた。
御手洗さんは、まったく心当たりがないので、再度否定した。
俺は気になったので、御手洗さんに質問してみる。
「なんで、御手洗さんと若山拓也が旅行している写真が存在するのかな……?」
「多分、合成写真だと思います。体型が私と微妙に違っていました。着ている服も私が持っている服と違いました。どこかのカップルが旅行している写真を手に入れて、顔だけ、私と若山拓也の顔に差し替えたのでしょう」
「ああ、なるほど!」
そんなことを、わざわざするのか!
手が込んでいるというか……、ヒマというか……。
「その若山って野郎は、相当イカレてやがるな!」
沢本さんの言う通りだ。
頭がおかしい。
「私は、上司と人事部長に、『まったく心当たりがない』、『若山拓也とは、付き合っていない』、『結婚する予定はない』と話しました。二人は驚いていましたが、私の話を信じてくれたのです」
「じゃあ、問題は解決したの?」
「それが……」
どうやら、まだ、あるらしい。
俺と沢本さんは顔を見合わせてから、御手洗さんに話の続きを促した。
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