わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

45話 わたしの祈りは毒をも溶かす!⑫

「阿片をーー!」

 うーー、ああっーー、はぁはぁ……

 子爵家の地下は阿片を求める呻き声で鳴り響いていた。イービルをはじめ、侍女、使用人たちが狂った様相を呈している。

「イービル、祈ってあげるから我慢しなさい」

 わたしは苦しんでるお屋敷の人々を救おうと決めていた。妹の行為は許されることじゃないけど、このままだと狂人から廃人になっていくのが目に見えていたから……

「ああああああっ、そんな役に立たないお祈りより阿片を持ってきてよーー!」
「イービル、必ず治すから!」
「やかましいっ、縄をとけー、阿片をくれーー!」
「オ、オリビア様、あまり近づくと危険です」

 監禁部屋の中へ入ろうとしたわたしをモッペルが制した。

「うん……でも助けてあげたいの」
「あのね、この娘はオリビア様の命を何度も狙った性悪のオンナですよ。助ける筋合いはないと思いますが?」
「確かに腹ただしいけど、目の前に苦しんでる人がいると助けなくっちゃって思うの。モッペル、お願い。皆んなのお世話をして!」
「あーあ……分かりました。オリビア様の言いつけなら従いますよ。アタシは貴女の侍女だからね」
「ありがとう、ではお水を持って来て」

 地下にはイービルや五人の使用人らが監禁されている。皆んな禁断症状で苦しそうだった。

 わたしはかつてモッペルにした様に、両手を胸に当て祈りを捧げた。

 どうか、苦しみから解き放たれますように……

「何やってんのよ、そういうの要らないから!」

 わーわー、ぎゃーぎゃーと罵声が飛んでも構わない。わたしは自分の世界に入り込んでいく。暫くすると静かになった。イービルを始め使用人らの意識が失われ、ぐったりしている。モッペルの時と同じ現象だ。

 それから夜通しで祈りを捧げることにした。あくる日もあくる日もーー

 やがて監禁された彼女らに回復の兆しが見えてくる。元気は無いけどお水を飲んで落ち着いていた。

「もう三日か。……アタシの時はたった二日だったから、そろそろかねぇ」

 そんな希望が見えてきた頃、子爵家に新たな捕虜が連行された。三宝の山で働いてた労働者だ。ざっと五十人は下らない。途端にお屋敷の中は捕虜と兵隊でぎっしり埋まっていく。その中にやつれたお母様が居ることに気がついた。

「ああっ、オリビアかい……はぁはぁ、助けておくれ。ゲーニウスに捕らえられたのさ。く、苦しい……阿片を……地下の倉庫にあるから取ってきておくれ」
「お母様、ここで阿片抜きをして貰います」
「あ、阿片抜きだって? 何年吸ってると思ってるんだい、そんなの死んでしまうわ!」
「モッペル、それから兵士の皆さん、特に症状の悪い人を集めてください」
「オリビア様、まさかこんな大人数相手にするのですか? 倒れますよう!」
「それがわたしの使命です。誰であろうと治すしかないの」

 そう、今は自分のやるべきことを全力でするしかない。




















コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品