わたしの祈りは毒をも溶かす!
42話 わたしの祈りは毒をも溶かす!⑨
※ゲーニウス視点
三宝の山では王宮の軍隊が四方を囲って総攻撃の準備が整っていた。
「ゲーニウス様、御指図を!」
「我が軍は六百の兵だ。いくら伯爵の兵隊が守っているとはいえ、力の差は歴然。このまま押し進めろ」
「ははーっ」
兵隊が我先へと洞窟に向かう。途中、伯爵軍約百名がこれを阻止しようと戦闘になったが、数に勝る我らは簡単に敵を蹴散らせ、どんどん進軍していった。
「兵隊以外は手を出すな。捕らえるのだ」
「はっ!」
恐らくご夫人は洞窟の阿片工場に居るだろうな。必ず捕らえてやる。
この日が待ち遠しかった。特殊な能力があっても俺は『聖人』と呼ばれるほど立派な人間ではない。憎しみを無くして全てを許すなど無理だ。敢えて言うならそれはオリビアに託したい。彼女は間違いなく『聖女』だ。この阿片に塗れた土地から人々を救えるのは彼女しかいない。ご夫人が、妹が、お父様が助けを求めてもその判断は聖女に任せるとしよう。
取り敢えず彼女を捕まえて過去の、現在の過ちを悔い改めさせてやる。
「ゲーニウス様、栽培地区を押さえました。工場も落ちるのは時間の問題かと」
「うむ、俺も洞窟の中へ突入するか」
木々でカモフラージュされた洞窟の入口からは阿片の匂いが漂ってくる。人々を狂わせる麻薬の香りだ。その奥に行くとまだ戦闘は続いていたが、肝心のご夫人の姿が見当たらない。まさか逃げたのでは? と、頭によぎった。
「お前らはここを頼む」
「ゲーニウス様はどちらへ?」
「山狩りだ。逃げ出した幹部を捕まえに行く」
「では兵をお預け致します」
「あぁ、百人ほどで良い」
俺は騎馬隊を引き連れ山々を捜索した。暫くすると山頂にある展望台付近の建物で幹部らしき女を捕らえたと報告を受け、馬を走らせた。
「ゲ、ゲーニウス!?」
山頂でご夫人と対面した。随分とやつれている様だ。
「これはお母様、まさかこんなところでお会いするとは」
「何なのよ、一体!? 私は貴方の母親です。助けなさい!」
「阿片製造に携わってる者を助ける訳にはいかない。それに貴女は俺の母親ではない。本当の母親はお前に殺されたはず」
「……ゲーニウス」
「三宝の山は王宮の軍隊が占領した。ケシの栽培地区も阿片も全て押さえた。もう観念しなさい」
「ね、ねぇ、私は貴方を育てた母親ですよ。どうするつもりなの?」
「どうもこうも……違法薬物の製造及び、人殺しの罪で連行するまでですが?」
「そんな、貴方も子爵家の一員です。阿片に携わってないなんて通用しないわよ。ねぇ、お願いだから考え直して頂戴な」
「はっきり言おう。俺は子爵家を憎んでいる。随分前から内定調査していたのだ。自らが志願してな。伯爵、並びに子爵家を潰すことが俺の使命なのだ」
「この恩知らずが! お前なんか育てるんじゃなかったわ! 離せ、私を解放しろ!」
ご夫人は悔しい感情を露わにしながら抵抗していたが俺は無常にも子爵家へ連行する様、部下に指示を出した。
そして守備兵を置き、残り三百名の軍隊を伴ってキース様の居る伯爵邸へ向かった。
三宝の山では王宮の軍隊が四方を囲って総攻撃の準備が整っていた。
「ゲーニウス様、御指図を!」
「我が軍は六百の兵だ。いくら伯爵の兵隊が守っているとはいえ、力の差は歴然。このまま押し進めろ」
「ははーっ」
兵隊が我先へと洞窟に向かう。途中、伯爵軍約百名がこれを阻止しようと戦闘になったが、数に勝る我らは簡単に敵を蹴散らせ、どんどん進軍していった。
「兵隊以外は手を出すな。捕らえるのだ」
「はっ!」
恐らくご夫人は洞窟の阿片工場に居るだろうな。必ず捕らえてやる。
この日が待ち遠しかった。特殊な能力があっても俺は『聖人』と呼ばれるほど立派な人間ではない。憎しみを無くして全てを許すなど無理だ。敢えて言うならそれはオリビアに託したい。彼女は間違いなく『聖女』だ。この阿片に塗れた土地から人々を救えるのは彼女しかいない。ご夫人が、妹が、お父様が助けを求めてもその判断は聖女に任せるとしよう。
取り敢えず彼女を捕まえて過去の、現在の過ちを悔い改めさせてやる。
「ゲーニウス様、栽培地区を押さえました。工場も落ちるのは時間の問題かと」
「うむ、俺も洞窟の中へ突入するか」
木々でカモフラージュされた洞窟の入口からは阿片の匂いが漂ってくる。人々を狂わせる麻薬の香りだ。その奥に行くとまだ戦闘は続いていたが、肝心のご夫人の姿が見当たらない。まさか逃げたのでは? と、頭によぎった。
「お前らはここを頼む」
「ゲーニウス様はどちらへ?」
「山狩りだ。逃げ出した幹部を捕まえに行く」
「では兵をお預け致します」
「あぁ、百人ほどで良い」
俺は騎馬隊を引き連れ山々を捜索した。暫くすると山頂にある展望台付近の建物で幹部らしき女を捕らえたと報告を受け、馬を走らせた。
「ゲ、ゲーニウス!?」
山頂でご夫人と対面した。随分とやつれている様だ。
「これはお母様、まさかこんなところでお会いするとは」
「何なのよ、一体!? 私は貴方の母親です。助けなさい!」
「阿片製造に携わってる者を助ける訳にはいかない。それに貴女は俺の母親ではない。本当の母親はお前に殺されたはず」
「……ゲーニウス」
「三宝の山は王宮の軍隊が占領した。ケシの栽培地区も阿片も全て押さえた。もう観念しなさい」
「ね、ねぇ、私は貴方を育てた母親ですよ。どうするつもりなの?」
「どうもこうも……違法薬物の製造及び、人殺しの罪で連行するまでですが?」
「そんな、貴方も子爵家の一員です。阿片に携わってないなんて通用しないわよ。ねぇ、お願いだから考え直して頂戴な」
「はっきり言おう。俺は子爵家を憎んでいる。随分前から内定調査していたのだ。自らが志願してな。伯爵、並びに子爵家を潰すことが俺の使命なのだ」
「この恩知らずが! お前なんか育てるんじゃなかったわ! 離せ、私を解放しろ!」
ご夫人は悔しい感情を露わにしながら抵抗していたが俺は無常にも子爵家へ連行する様、部下に指示を出した。
そして守備兵を置き、残り三百名の軍隊を伴ってキース様の居る伯爵邸へ向かった。
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