わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

38話 わたしの祈りは毒をも溶かす!⑤

 静寂な夜。いつもの様にわたしの思考へ妖精が現れた。

「オリビア……今日の嬉しかったこと楽しかったことは何だ?」
「アプレン、今日は一杯あるよ。あのね、阿片で苦しんでたモッペルにお祈りすると治ったんだ。それでね、先生から他にも苦しんでる人を救えって言われて……わたしやるべきことが見つかったの!」
「それは良かったな。お前はどんどん進化してるぞ。明日には声が聞こえるかもしれない。そして俺もそろそろ動ける」
「怪我が治ったのね! それも嬉しいことに追加だよ! ねぇ、わたしが聞こえる様になったらアプレンは現れないの?」
「そうだ。理屈は分からないが。まぁ今度からお前が俺の思考に入ればいい。……可愛い妖精さん、毎日の楽しい報告待ってるからな」
「うん!」

 そこからの会話は途切れ、いつの間にか眠りについていた。


 ***


「おはようございます。オリビア様、朝ですよー」

 モッペルの大声で目を覚ました。いつもの如く、暫くぼぉーっとしていたら美味しそうなパンの香りが漂ってきた。

「あ、焼きたての匂いだ。食べたーい!」
「あらま! また喋った!」
「ありがとう、モッペル。いつもお世話してもらって。目が覚めたら声がはっきり聞こえる様になってたよ」
「オ、オリビア様、こちらこそ救ってくれてありがとうございました。アタシは生涯、貴女の侍女だからね。お給金なんて要らないから!」
「うふふ。ねぇ、先生は?」
「それがね……」

 キース先生は特殊部隊を密かに潜入させ、子爵邸に踏み込む準備をしてるという。ただ、この界隈は伯爵様による厳重な警戒体制が敷かれ血眼になって楽団員とわたしを捜索してるらしい。動くのも慎重にしなくてはならない様だ。

「ここに居れば安全だと思うけど、不安ね」

 窓から兵隊の姿が見えた。物々しい様相を呈している。

「あの地下倉庫をこじ開けて阿片を押さえ、お母様やイービルを捕まえるつもりかな?」
「でも捕まえるったってねぇ。その後、伯爵様の軍隊がお出まししたら敵うのかしら。そもそもあの楽団員って何者なんだろうね? 王宮の捜査部隊みたいな軍団?」
「分かんない。けど三宝の山の方がもっと阿片を押さえられるよね?」
「いやいや、あの山こそ少数部隊じゃ敵わないよ。伯爵様の軍隊も近いし、逆に制圧されるさ」
「そっか。だから先ず子爵家なのね。ただ、お屋敷にどれだけの阿片があるのかな? 上手く踏み込まないと隠されちゃうかもしれない」
「うーん……難しいんだね。でもこの状況を何とかしないと変わらないしね。アタシも隠れ家で一生過ごすのは勘弁して欲しいよ。せっかく阿片のいらないカラダになったんだから」

 さて、先生や兄上さまはどうやってこの巨大な悪と闘うのでしょう? 

 わたしは阿片中毒に苦しんでる多くの民を救わなければならない使命がある。

 一刻も早くに……











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