わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

29話 また聞こえてます。特殊能力だなんて…⑩

 監禁部屋で一人、薄いマットにくるまり横になっていた。何やらアタマがふあふあする。これが阿片の症状なのか心なしか楽しい気分なのだ。

 おかしいな……さっきまでショックで泣いてたのにそんなのどうでもいい。何だか分からないけど気持ちいいよう?

 それは不思議な現象だった。全ての悩みや迷いから解き放された様に感じる。一度この快楽を覚えたら依存するのが分かる気がした。

 わたしも阿片の奴隷になるのかなぁ……

 ガチャと扉が開く。モッペルが戻ってきた。どうやらお母様に呼ばれてたらしい。

「あー、あー、あー、さんざっん奥方様に絞られてきたわ。もうーしつこいったらありゃしないよ」
「おかえり、モッペル。うふふ」
「あら、阿片吸ってご機嫌になったのね。アタシは色々尋問されて嫌味一杯言われて、疲れたわぁ」
「何を聞かれたの?」
「ニコニコしちゃって。ふふふ、まあいっか。笑顔のオリビア様は美しいよ。……あのねぇ、三宝の山へ行った時の様子を聞かれたよ。あと、背後にいるのは誰だって。それを探れとも命じられたわ」

 そうなのね。どうしよっかな。お話しよっかな。

「まぁ、話したくなったら話してくださいね。でもアタシが言うのも何だけど、完全な中毒になる前に吐いた方が身のためだよ。意地張ってると取り返しのつかないことになるからね」

 そっか。わたしはたった一回しか吸ってないから深刻な依存症ってほどじゃないんだね。

「ねえ、モッペル。高揚した気分はいつまで続くの? 切れたらまた欲しくなる?」
「うーん、人それぞれだからね。アタシは一日と持たない。けど三日くらい我慢できるよ。オリビア様は最初だから今なら断ち切れるわ」
「でも、一度やったら犯罪だよね?」
「アレは仕方ないよー。羽交締めにされて鼻塞がれて強制的過ぎる。全く、イービルって酷い娘よね。奥方様とアイツがお屋敷の阿片を管理してるから逆らえないけど」

 なるほど。妹も倉庫の鍵の場所知ってるんだ。だから侍女や使用人に傲慢なのね。

「あ、それからオリビア様。近々伯爵邸にお泊まりに行くそうですよ。アタシが付き添えって命じられたの。今から準備してきますね」
「それはまだ進行してるのね……」

 伯爵邸には行きたくないけど此処から出られるってことだ。

 ーーああ、そのまま何処かへ逃げたいなぁ。

 わたしは快楽に溺れ、そんなのどうでも良いっていう気持ちと、何とかしなければっていう気持ちが複雑に絡み合っていた。

 今晩、兄上さまに相談しよう。そして謝らなければ。阿片吸ったことを……














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