わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

23話 また聞こえてます。特殊能力だなんて…④

 子爵邸の医務室で兄上さまの面会が許された。意識が戻って数日後のことだ。モッペルを伴いお部屋へ入ると彼はベッドの上で書物を読まれていた。

「やぁ、オリビア」
「うー、うぅ……あー、あーーん」

 わたしは泣きながら抱きついた。

「おいおい、お見舞いに来たんじゃないのか」

 良かったぁ、兄上さま。意識が戻ってーー!

 そうココロの中で叫んだ。此処には看護の者やモッペルが居るから言葉に出来ないのだ。

「俺はもう大丈夫だ。まぁでも、暫くは動けないけどな」
「あー、あー」
「うん? 何だ?」

 お話したいよう。あのね、三宝の山に行ってきたよ。モッペルが詳しく説明してくれたんだ。栽培地区と工場地区の場所が分かったの。それと警護が厳しいことも。ねぇ、どうすればいい? キース先生に伝えればいいかな?

 あー、直接言葉にしたい。

「ゲーニウス様、紙とペンならありますけど」
「あぁ、モッペル。ありがとう」

 兄上さまは筆談しようとさらっと文字を書いた。

『先生にしっかりダンスを習え。夜は意識を集中させてお祈りしろ。俺を見習えよ。』

 渡された紙を見て不思議に思った。ダンスは分かる。先生に相談しろってことよね。でもお祈りって何なの? 見習えって何を?

 戸惑ってると兄上さまが微笑みながら紙を取り上げ追記された。そこには……

『お前は妖精みたいで可愛いな。』

 妖精? 妖精ってアプレン? そうか、兄上さまの意識が戻ったからアプレンは現れなくなったんだ。今度はわたしから兄上さまの思考に入れってことなんだね。出来るかな? 確か強く念じろって言ってたよね。……分かった。やってみるよ。

 紙を握りしめてお部屋を後にした。今日はダンスのレッスンがある。先生に会って相談しよう。


 ***


 ミニオーケストラの演奏が始まった。聞こえる様になって改めてその美しいメロディーに感動する。優雅に踊るわたしを見てキース先生は聞こえてると認識された様だ。この前と違う軽やかなダンスにお母様とイービルは目を丸くして驚いてる。

「よし、勘が戻ったぞ。その調子だ、オリビア」
「あーあ、あ……」
「うん? 話があるんだな。分かった。イービルのレッスンが終わったら楽団の控え室で会おう」

 わたしは小さく頷いた。

 それからナチュラルスピンターンやリバースターンを繰り返し完璧な踊りを舞う。その際、兄上さまから渡された紙を落としてしまったけど、それをイービルが拾ったことは気づかなかった。
















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