わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

13話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか… ⑬

 わたしは階段から突き落とされた。これって命を狙われてるの? そう考えると寝れないよ。正直、人の声が聞こえる様になって現実を知ったというかロクなことがない気がする。だからどうすれば良いのかも思い浮かばない。

 阿片に手を出してないのはこの家族でわたしと兄上さまだけだと思う。もしかしたら彼は味方になってくれるかもしれない。それにキース先生もだ。

 相談したいな、助けて貰いたいな……このまま妹からの攻撃がエスカレートする前に何とかしなければ。


 そんな思考に耽っていた翌日のこと。

「オリビア、今日は貴女の身の回りの物をオーダーしに行くから街へ出掛けるのよ。準備しなさい。モッペル、頼んだわ」

 そうお母様から伝えられた。ニコニコして分かった様な分からない様なふりをする。

 あーあ、これって伯爵邸にお泊まりする準備なのかなぁ。気が進まないよ。

 お部屋に戻ってお洋服を選んで着替える。前に切り刻まれたお洋服はモッペルが廃棄して、妹のお古がクローゼットに並んでいた。どれも型の古い物ばかりだ。

「はぁー、いっそアタシも伯爵邸で雇ってくれないかしら。あの糞イービルの顔なんか見たくもないわ。……しかし、阿片があるからなぁ」

 彼女はわたしが聞こえないと思って、言いたい放題の毒を吐いてストレス発散してる様だ。

「まぁ、伯爵家でもお給金の一部に阿片があれば、ここにこだわる必要もないんだけどねぇ」

 お給金に阿片が含まれてるのか。だったら使用人も皆んな中毒だよ。

「アンタも可哀想な令嬢だね。障害持って、妹に虐められて。挙げ句の果てに伯爵上司に差し出されようとは同情するわ。これまでお荷物令嬢って馬鹿にしてたけどゴメンね」

 今までのイメージがあって、わたしは彼女が憎めなかった。口が悪いのは分かったけど。


 支度が整い、久しぶりの外出に自然とテンションが上がる。庭園をモッペルと歩いていたら、兄上さまが歩いてることに気がついた。

 あれ、今朝は一緒に食事してないから平日の筈だよね。珍しいな。あ、そうだ。兄上さま、相談したいことが……

 と、思ったけどキッカケが掴めない。だって今までコミニュケーション取った記憶は皆無。もじもじしながら軽く会釈してやり過ごすしかない。

 そして待機してある馬車へ向かう。子爵邸の門から出た時のことだ。急に馬車が暴走してわたしへと突進して来る。

「ああっ、オリビア様、危ない!?」

 ーーえっ!?

 ダダッ、ダダッ、ダダッ、ダダッ、ヒヒーン!

「あー、あー!?」

 思わず叫んだ。このままでは馬車に轢かれるっ!

 怖くて目を閉じた。カラダが固まって動けない。もうおしまいだと一瞬思った。

 ダダーーン! ザザーッ!

 砂煙が舞ってよく見えなかったけど、わたしは地面に転がっていた。お洋服がボロボロだ。でも何故か痛みがない。またしても無傷なのだ。

「う、うーん……」

 隣で兄上さまが横たわっているのを発見した。血だらけになっている。

 えっ、えっ? 兄上さま!? 

 そこへ一部始終目撃していたモッペルが倒れた兄の元へ走った。

「ああっ、ゲーニウス様! た、た、大変!」

 兄上さま、もしかしてわたしを助けようと!?


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