わたしの祈りは毒をも溶かす!
8話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか…⑧
あれからアプレンは現れなくなった。不安な夜を過ごす様になるけど、無理に楽しいことだけを思い浮かべて寝ると決めていた。でもやっぱり難しい。ココロに段々とマイナス思考が訪れるのだ。これは中々防ぎきれない。
ーーだってそんなに嬉しいこと、楽しいことが無いんだもん。
パブリックスクールに行けないわたしは独りぼっちの時間が有り余っている。お庭を散歩したりお絵描きしたり、たまにダンスの練習や家庭教師に勉強教わる程度で人との触れ合いが殆どない。
まぁ、今に始まったことじゃ無いけど。
そんな虚しい日々を過ごしてるうちにフレディ伯爵家へ行く日となった。
「オリビア、先ずはご挨拶よ。それからドレスに着替えてダンスをするの。その後お食事して……」
「おい、言っても分からないだろ」
馬車の中でお母様から段取りを説明された。兄上さま以外の家族とモッペルを連れて伯爵邸へ向かっている。
聞こえてるよ。お母様。で、食事の後は帰れるの?
「ねぇ、私はリュメル様とダンスしたいな」
「あら、イービル。勿論ですわ」
「やったーー!」
勝ち誇った表情で妹はわたしを見た。
ふん。
分からないふりして目をそらし、馬車の窓から景色を眺めながら考えていた。
フレディ伯爵様ってどんな御方なのかな。リュメル様のお父様だからきっとハンサムなんだろうね。うん、素敵なおじ様だよ、きっと……
無理矢理にでも良いイメージを想像する。でもこれが逆効果になるとは思ってもみなかった。
「おお、よく来てくれたな。儂がフレディだ。ガハハハハ……」
伯爵邸の大きなエントランスでお会いしたフレディ様は全くイメージと異なる御方だった。恰幅の良い脂ぎった顔面髭だらけのおっさんなのだ。
うえっ……こんな御方だったの? ヤダ、ヤダ、ヤダよお。
「うん、お前がオリビアか。思ったより可愛らしいじゃないか。ガハハハハ……」
伯爵様はわたしの頭から足元まで舐め回す様に見られる。わざわざ後ろに回ったりもした。
「まぁ、上がりなさい。あ、ジョイコブ子爵は執務室まで」
「ははっ」
お母様とイービル、それにわたしは別室へ案内されお紅茶を頂く。一息ついたらモッペルにドレスを着替えるのを手伝ってもらいダンスの準備をした。
「お姉様、その煌びやかなドレスって私のお古だからね。餞別にあげるから」
はい。そうですか。それはどうもありがとう。
昔はわたしのお古をあげてたのになぁ。いつの間にか立場が逆転したね。あぁ、小さい頃は仲が良かった。『お姉様、お姉様』っていつも甘えて一緒にお昼寝してたよ。貴女は抱きついて離れなかった。……って今、そんなこと考える余裕などない。
「オリビア様。そのドレス姿を見せる様、執務室へおいでくださいとのことです」
伯爵邸の侍女からそう呼ばれると、わたしは一人でその人について行った。ここは邸と言うよりお城だ。迷子になりそうになる程の大きな建物を歩き回り、ようやく執務室へたどり着いた。
「おお、こりゃ一段と大人っぽくなった」
フレディ様は喜んでおられる。そしてまた舐め回す様にわたしの全身を眺めた。
「伯爵様、では今月の上納金は後ほど」
「あぁ、くれぐれも気をつけろよ。このところ王宮が妙な動きをしてると耳にしたからな」
「と、申しますと?」
「我々が密かに阿片を製造・販売してるって噂が流れているのだ。いつか怪しまれると思っていたがな。ガハハハハ……」
ーーあ、阿片って、何のお話ですか!?
わたしは聞いてはいけないことを耳にした気がする。
もしかしたらお父様と伯爵様は悪いことしてるの?
ーーだってそんなに嬉しいこと、楽しいことが無いんだもん。
パブリックスクールに行けないわたしは独りぼっちの時間が有り余っている。お庭を散歩したりお絵描きしたり、たまにダンスの練習や家庭教師に勉強教わる程度で人との触れ合いが殆どない。
まぁ、今に始まったことじゃ無いけど。
そんな虚しい日々を過ごしてるうちにフレディ伯爵家へ行く日となった。
「オリビア、先ずはご挨拶よ。それからドレスに着替えてダンスをするの。その後お食事して……」
「おい、言っても分からないだろ」
馬車の中でお母様から段取りを説明された。兄上さま以外の家族とモッペルを連れて伯爵邸へ向かっている。
聞こえてるよ。お母様。で、食事の後は帰れるの?
「ねぇ、私はリュメル様とダンスしたいな」
「あら、イービル。勿論ですわ」
「やったーー!」
勝ち誇った表情で妹はわたしを見た。
ふん。
分からないふりして目をそらし、馬車の窓から景色を眺めながら考えていた。
フレディ伯爵様ってどんな御方なのかな。リュメル様のお父様だからきっとハンサムなんだろうね。うん、素敵なおじ様だよ、きっと……
無理矢理にでも良いイメージを想像する。でもこれが逆効果になるとは思ってもみなかった。
「おお、よく来てくれたな。儂がフレディだ。ガハハハハ……」
伯爵邸の大きなエントランスでお会いしたフレディ様は全くイメージと異なる御方だった。恰幅の良い脂ぎった顔面髭だらけのおっさんなのだ。
うえっ……こんな御方だったの? ヤダ、ヤダ、ヤダよお。
「うん、お前がオリビアか。思ったより可愛らしいじゃないか。ガハハハハ……」
伯爵様はわたしの頭から足元まで舐め回す様に見られる。わざわざ後ろに回ったりもした。
「まぁ、上がりなさい。あ、ジョイコブ子爵は執務室まで」
「ははっ」
お母様とイービル、それにわたしは別室へ案内されお紅茶を頂く。一息ついたらモッペルにドレスを着替えるのを手伝ってもらいダンスの準備をした。
「お姉様、その煌びやかなドレスって私のお古だからね。餞別にあげるから」
はい。そうですか。それはどうもありがとう。
昔はわたしのお古をあげてたのになぁ。いつの間にか立場が逆転したね。あぁ、小さい頃は仲が良かった。『お姉様、お姉様』っていつも甘えて一緒にお昼寝してたよ。貴女は抱きついて離れなかった。……って今、そんなこと考える余裕などない。
「オリビア様。そのドレス姿を見せる様、執務室へおいでくださいとのことです」
伯爵邸の侍女からそう呼ばれると、わたしは一人でその人について行った。ここは邸と言うよりお城だ。迷子になりそうになる程の大きな建物を歩き回り、ようやく執務室へたどり着いた。
「おお、こりゃ一段と大人っぽくなった」
フレディ様は喜んでおられる。そしてまた舐め回す様にわたしの全身を眺めた。
「伯爵様、では今月の上納金は後ほど」
「あぁ、くれぐれも気をつけろよ。このところ王宮が妙な動きをしてると耳にしたからな」
「と、申しますと?」
「我々が密かに阿片を製造・販売してるって噂が流れているのだ。いつか怪しまれると思っていたがな。ガハハハハ……」
ーーあ、阿片って、何のお話ですか!?
わたしは聞いてはいけないことを耳にした気がする。
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