わたしの祈りは毒をも溶かす!
7話 あ、聞こえるよう。でもこれが現実なのか…⑦
いつもの様に朝が来る。悩もうが悩むまいが時間が経てば無常にも朝が来るのだ。わたしは複雑な心境のままモッペルに起こされ、朝の支度を整えるためクローゼットを開ける。そしてお洋服を選んでいた時のことだ。
「あーー!?」
驚きのあまり思わず悲鳴を上げてしまった。
「おい、どうしたんだい?」
なんと、お洋服がハサミで切られていたのだ。何着も……
ひ、酷い、酷いよ、誰がこんなことを!?
モッペルがクローゼットの中身を確認する。
「はぁ? 誰がやったんだ、ったく……オリビア様、心当たりないのですか? と言っても伝わらないか」
彼女は廊下へ出て使用人を呼んだ。
これって誰かがお部屋に入って悪戯したに違いないよ。昨晩わたしがお風呂へ入ってる間だ。まさかイービル?
「おい、ヘクセ。お前、何か知ってるだろう?」
「モ、モッペル様……私はただ、頼まれて」
「誰にだ?」
「その……」
「オリビア様は聞こえない。誰か言え!」
「はい。イービルお嬢様です」
ーーやはり妹なのね。
リュメル様と筆談のやり取りしたり、ダンスの出来栄えを見てやきもち妬いたに違いない。でもやることが陰険だよお。
「ったく、仕事増やすんじゃないよ! 代わりの洋服探さないといけないだろうが!」
わたしはクローゼットの端っこにある古びたお洋服だけは被害が少ないことに気がついた。袖は切られていたけど。それを手に取り、さっさと着替えを済ます。
「オ、オリビア様? そのボロボロのお洋服で良いのですか? 今、ヘクセに探させてますよ?」
わたしは首を横に振って『これでいい』とアピールした。早くしないと朝食に間に合わない。わたしが皆んなを待たせるわけにはいかないのだ。
唖然とするモッペルを制して、顔を洗いにお部屋から出る。洗いながら少し泣いた。でもどうして良いのか分からない。だから何事も無かったかの様に振る舞おうとココロに決めたのだ。
両袖が切られ、だらんとしたお洋服で待ってると家族がダイニングホールへ集まってきた。兄上さまは居ない。お父様もお母様も『おはよう』と言いながらもわたしを見てないので、千切れた袖に気づかない。
イービルだけが直視して薄笑っていた。
「あら、お姉様ったら転んだの?」
「えっ、転んだ? オリビアが?」
お母様はわたしの袖に気がついた。
「ちょっと大丈夫かしら? 怪我はないの?」
「あー、あー」
大丈夫だよって手を振って笑顔で答える。
「もう、気をつけなさい。怪我して傷でもついたら伯爵様に申し訳ないからね」
わたしの怪我を心配するよりフレディ様に対しての方が大事なんだなと思い、ここは苦笑いするしかない。
「ねぇ、お母様。いつ伯爵様と引き合わせるつもりなの?」
「そうねぇ。……貴方、どうするの?」
「ん? あぁ、今日にも会って話してみるよ」
「早い方が良いわ。気が変わらないうちにね」
「分かった」
お父様は全くわたしを見ていない。昔から興味が無いのか、お荷物、或いは厄介者と思ってるのか。仕方ないな。耳が聞こえないから。
でも、今は全部聞こえてるから……
「あーー!?」
驚きのあまり思わず悲鳴を上げてしまった。
「おい、どうしたんだい?」
なんと、お洋服がハサミで切られていたのだ。何着も……
ひ、酷い、酷いよ、誰がこんなことを!?
モッペルがクローゼットの中身を確認する。
「はぁ? 誰がやったんだ、ったく……オリビア様、心当たりないのですか? と言っても伝わらないか」
彼女は廊下へ出て使用人を呼んだ。
これって誰かがお部屋に入って悪戯したに違いないよ。昨晩わたしがお風呂へ入ってる間だ。まさかイービル?
「おい、ヘクセ。お前、何か知ってるだろう?」
「モ、モッペル様……私はただ、頼まれて」
「誰にだ?」
「その……」
「オリビア様は聞こえない。誰か言え!」
「はい。イービルお嬢様です」
ーーやはり妹なのね。
リュメル様と筆談のやり取りしたり、ダンスの出来栄えを見てやきもち妬いたに違いない。でもやることが陰険だよお。
「ったく、仕事増やすんじゃないよ! 代わりの洋服探さないといけないだろうが!」
わたしはクローゼットの端っこにある古びたお洋服だけは被害が少ないことに気がついた。袖は切られていたけど。それを手に取り、さっさと着替えを済ます。
「オ、オリビア様? そのボロボロのお洋服で良いのですか? 今、ヘクセに探させてますよ?」
わたしは首を横に振って『これでいい』とアピールした。早くしないと朝食に間に合わない。わたしが皆んなを待たせるわけにはいかないのだ。
唖然とするモッペルを制して、顔を洗いにお部屋から出る。洗いながら少し泣いた。でもどうして良いのか分からない。だから何事も無かったかの様に振る舞おうとココロに決めたのだ。
両袖が切られ、だらんとしたお洋服で待ってると家族がダイニングホールへ集まってきた。兄上さまは居ない。お父様もお母様も『おはよう』と言いながらもわたしを見てないので、千切れた袖に気づかない。
イービルだけが直視して薄笑っていた。
「あら、お姉様ったら転んだの?」
「えっ、転んだ? オリビアが?」
お母様はわたしの袖に気がついた。
「ちょっと大丈夫かしら? 怪我はないの?」
「あー、あー」
大丈夫だよって手を振って笑顔で答える。
「もう、気をつけなさい。怪我して傷でもついたら伯爵様に申し訳ないからね」
わたしの怪我を心配するよりフレディ様に対しての方が大事なんだなと思い、ここは苦笑いするしかない。
「ねぇ、お母様。いつ伯爵様と引き合わせるつもりなの?」
「そうねぇ。……貴方、どうするの?」
「ん? あぁ、今日にも会って話してみるよ」
「早い方が良いわ。気が変わらないうちにね」
「分かった」
お父様は全くわたしを見ていない。昔から興味が無いのか、お荷物、或いは厄介者と思ってるのか。仕方ないな。耳が聞こえないから。
でも、今は全部聞こえてるから……
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コメント
ローソニアン
耳の聴こえる世界と聴こえない世界でこんなにも感じ方が変わるんだなと驚かされましたが、ストーリーはバッチリ面白かったです。