【絶対攻略不可?】~隣の席のクール系美少女を好きになったらなぜか『魔王』を倒すことになった件。でも本当に攻略するのは君の方だったようです。~

夕姫

17. クリティカルヒット

17. クリティカルヒット



 オレと咲夜さんは立ち食い蕎麦を食べて電車で隣の街に買い物に向かう。誰にも出会わないといいんだけど……。変な噂になったら咲夜さんに申し訳ないし。まずオレは生きていけないかもしれない。

「どうしたの?霧ヶ谷君?」

「あっいや。誰かに見つかると面倒だなと思って」

「そうね……流石に私も霧ヶ谷君も隠密のスキルはないものね……そのときは考えましょ?」

 そんな会話をしつつ、隣街の駅に着く。電車から降りるとそこは閑散としていた。人通りが少ないみたいだ。これなら大丈夫かな。

「じゃあ、いきましょうか。霧ヶ谷君」

「ああ。」

 まずは部屋に置くための食器類を買いに行く。その後、生活用品を買う予定らしい。

「ねえ霧ヶ谷君!このマグカップ可愛くない!?ケット・シーみたい」

 咲夜さんが指さす先には猫の絵が描かれたマグカップがあった。確かに可愛いけど……。

「しかもペアになってるわよ?」

「え?ペア?」

「せっかくだしお揃いのものがいいわよね?なんか共に戦う仲間って感じで」

「そっそうだな……」

「よしこれにしましょう!」

 咲夜さんは次々と選んでいく。これは……勘違いしちゃいけないのは分かるが、なんだかオレのこと好きなんじゃないか?と思ってしまう。こんなこと考えるなんて不謹慎だけど。

 その後も色々選び、結構買い物をしてしまったので配送にしてもらうことにした。買い物中の咲夜さんはとても楽しそうにしていた。

 そして帰りの電車。家に帰るまでは気を抜いてはいけない。絶対にこの関係を誰にも知られてはいけないから。オレがそう意気込んで気を張りながら、ふと隣にいる咲夜さんを見る。

「ふわあぁ……あ。ごめんなさい」

「眠いのか咲夜さん?」

「うん。少しね。早起きしたから」

「だったらもう少し遅くても良かったのに。オレは早起きしちゃっただけだから、無理しないでオレに合わせないで良かったよ。元はもっと遅い時間だったし」

 オレがそう咲夜さんに言うと、一呼吸おいて咲夜さんが言った。

「……だって、霧ヶ谷君とのパーティー攻略が楽しみだったから。私も早起きしちゃったの。」

 そう照れくさそうに微笑みながら言う咲夜さん。可愛すぎるだろ!これは……俗に言うクリティカルヒットってやつだよな。もう数えられないくらい咲夜さんに惚れてしまう。

 そのあとは誰かに見つかることなく家に帰宅することができた。こうして、オレと咲夜さんの初めてのパーティー攻略が終わるのだった。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品