【絶対攻略不可?】~隣の席のクール系美少女を好きになったらなぜか『魔王』を倒すことになった件。でも本当に攻略するのは君の方だったようです。~

夕姫

16. シャドウの涙

16. シャドウの涙



 オレは咲夜さんと一緒に駅まで歩いている。隣には咲夜さんがいる。緊張がヤバすぎる。だってこんな美少女がオレの隣を歩いてるんだぜ?ドキドキするなって言う方が無理だろ。

 咲夜さんの格好は、白のワンピースに薄いピンクの上着を着ている。とても春らしい服装で、とても似合っていると思う。良かった。黒いマントとかじゃなくて。

「どうしたの?そんなに私の格好見て?似合わない?それとも防御に不安があるかしら?」

「いや。すごく似合ってるよ」

「そう。ありがとう。霧ヶ谷君も似合ってるわよ」

 うっ。ストレートに言われると照れるな。

「今日はどこに行くんだ?」

「とりあえず隣の国にギルドのアイテムを買いにいくわ。一緒にいるギルドだからあなたの意見も聞きたくてね」

 なるほどな。隣の街に買い物に行くのか。ってことは結構歩くことになるんじゃ……。体力が持つかなぁ。そんなことを考えていると駅につく。まだ時間はあるので朝食をとることにした。

 この時間はあまりお店が開いてないな……しかも一応デートだし、咲夜さんに合いそうなお店……。オレが迷っていると咲夜さんがオレの袖を引っ張る。

「ねぇ霧ヶ谷君。私あそこの立ち食い蕎麦が食べたいわ。霧ヶ谷君が良ければだけど」

「へ?立ち食い蕎麦?そんなんでいいの?」

「どういう意味?」

「あっいやその……」

「もしかして格好つけてお洒落なところ探していたの?別に私と霧ヶ谷君は付き合ってるわけじゃないんだから、そんなこと考えなくていいじゃない?」

 それはそれで悲しいんだが……。まあ、別に問題はないんだけどさ。咲夜さんの言う通りだし。オレは咲夜さんの要望通り、近くの立ち食い蕎麦屋に入る。そして注文をして出来上がるのを待つ。

 その間は他愛のない話をして時間を潰す。しばらくすると、頼んでいたものが運ばれてくる。それを受け取って食べる。うん。美味しい。こういうシンプルな味が一番好きだな。

「美味しい。やっぱりこういうところのお蕎麦は美味しいわね」

「うん。オレはこのくらいシンプルでちょうどいいや」

「そうなのね。私はちょっと物足りないかも……霧ヶ谷君。シャドウの涙をとってくれない?」

「え?」

「シャドウの涙。そこにあるでしょ?」

 咲夜さんが首を傾げている。その姿が可愛い。とりあえずシャドウの涙はこの世界にはないです咲夜さん。まぁ落ち着けオレ。カウンターを良く見る。シャドウの涙……黒い水っぽいやつだよな。あー……醤油か。

「はい。咲夜さん」

「ありがとう」

 オレは醤油を渡す。咲夜さんはそれを受け取ると、自分の蕎麦に結構大量にかけて食べ始めた。っていうか意外と大雑把なんだな咲夜さんって。

 なんか……可愛いな。こんなことでも咲夜さんのことがどんどん好きになっていくのだった。

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