93.　昨日の敵は今日の友

93.　昨日の敵は今日の友



　もうそろそろ今年も終わるな。オレは今今年最後の学力テストの勉強をしている。もちろん夏帆も一緒だ。

「ねぇ先輩？ここ教えてください！」

「またかよ……オレの勉強が進まんのだが？」

「えーいいじゃないですか！ほら早く」

　夏帆と勉強会をやっているが勉強を教えてばかりいる気がする。まぁ別に嫌ではないからいいんだが……

「で？どこがわからないんだ？」

「これです！」

「ここは……ってお前この前教えたところじゃねぇか！」

「だって難しいんですもん！」

「いや、難しくないだろ！？」

　こいつ……絶対覚える気ないだろ。まぁそんなことは置いといてとりあえず教えることにしよう。

「だからさっき言ったように……」

「はいはい。わかりました〜」

　本当にわかってんのかこいつは……。

「もう自分の力でやれよ？」

「むぅ……じゃあいいですよ。先輩じゃない人に聞くから」

「は？」

　そう言って夏帆はスマホでメッセージのやり取りをしている。なんだこいつ？まさか浮気か？相手は誰だ？

「おい。誰と連絡してんだよ？お前オレには浮気とか言っておいて……」

「あれあれ？嫉妬ですか先輩？ふっふ〜私が誰と連絡してるか気になりましたか？安心してください！女の子ですよ！」

「あ？誰が嫉妬してんだよ」

「もう！強がっちゃって！ほんとは不安なんですよね？大丈夫ですよ！私には先輩だけですから！」

「なら誰と連絡してんだよ？」

「え？冬花先輩ですけど？」

「は？」

「いやぁ昨日の敵は今日の友ですよね！私たちは真の仲間になったんです！」

　うるせぇし、うぜぇ。しかも名前で呼んでるし……。てかなに普通に連絡先交換してんだよ。

「ふっふっふ。これで先輩が浮気しても私に報告がすぐ来ますからね？」

「はいはい」

「あっ！なんですかその態度！ちょっと酷いんじゃないですか！？」

「はいはい」

「むぅ……私は悲しいですよ先輩。こんな可愛い彼女がいるというのに他の女の人と仲良くしようとするなんて……」

「はいはい」

「むぅ……聞いてくださいよ！構ってくださいよ！」

　オレはこうしてウザい監視の目がもうひとつ増えたのだった。