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【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

55. 絶氷

55. 絶氷


 フランガラン帝国の王城に潜入し、国王のアルガスが居るであろう玉座の間にたどり着いたサーシャたち。さっきまでの骸骨兵はやっぱり魔族の仕業だろう。となればこのフランガラン帝国のこの城には、もう誰一人生きているものが残っていないと言うことだろう。

「ふむ。気をつけて進むんじゃ。おそらくこの先にいるじゃろうて……」

 マーリンは前方を見ながら呟く。サーシャたちもそれに習うようにして見ると、確かに気配を感じる。

 そして扉を開けると、一瞬で空気が変わる。それは、とても重く、息苦しいものだった。3人が部屋に入ると奥から声がかかる。

「ここまでたどり着くとはな……褒めてつかわそう……」

「何様のつもりですの?あなたにフランガランを名乗る資格などありませんわ。ここで死になさい!」

「おぉ、怖いねぇ。まぁ、オレ様の傀儡どもを倒したんだから当たり前か……」

 アルガスは余裕綽々といった感じだ。まるでこちらを舐めているかのような態度である。リズは怒りを抑えながらも冷静に問いかける。

「なぜ、父上を殺したんですの?」

「ん?あぁ、あのおっさんのことかい。ハッ!あんな雑魚を殺して何が悪い?お前らもいずれこうなるんだよ」

「この外道が!貴様にこの国を治める権利はない!大人しく降伏しなさい!」

「あー……飽きたな。死ねよクズども」

「!?避けよサーシャ!リズ!」

 アルガスがそう呟くと一瞬で氷魔法が飛んでくる。それは強力な魔法攻撃で2人を庇ったマーリンに直撃し、マーリンは壁に叩き付けられる。

「マーリン様!?」

「うぐ……」

「暇潰しにまずこの男を乗っ取って、国まで乗っ取ろうとしたけどよ……飽きた。それにしても弱くなったなマーリン?退屈させてくれるぜ」

 ……やはりこいつは。すべてが一致し私は過去の記憶が蘇ってくる。

「あなたは六魔将ですか?」

「ああ?お前がレヴィの言ってた、あの気に入らねぇ女の魔法が使える小娘か。なら殺す前に教えてやるよ。オレ様は六魔将『絶氷のマモン』だ絶望しな!」

 絶氷のマモン。こいつまでもが復活したのか……この熱砂舞う王国の闇の正体はこいつだったのか。

 私は周りを確認する。マーリンは動けそうにないわよね……どうする?このままじゃサーシャとリズが殺されてしまうわ。そんなことを考えているとサーシャが私を強く握りしめて構え、マモンに言い放つ。

「絶望なら……故郷を魔物に滅ぼされた時にしてきました!だからこそ!私は私のような人を出さないためにあなたを倒します!」

「はっ!笑わせるなよ小娘。お前なんかがオレ様を止められるわけがないだろう。いいからさっさと死んでくれ」

「いきます!」

 サーシャは駆け出した。その速度は凄まじく、一瞬にして間合いに入り込むと私を振り下ろす。しかし、それは簡単に防がれてしまった。

「意外に速いが……弱い……まぁ安心しろよ。すぐに殺してやるからよ!」

「させませんわ!!」

 リズがサーシャの前に出てレイピアを突き出す。それをマモンは剣で弾くとそのままリズの懐に入り、腹部に氷を纏った打撃を食らわす。

「甘いんだよ!」

「きゃあ!」

「リズさん!よくも!!」

 サーシャが前に出て剣を振るう。しかしその斬撃はまたまた軽く避けられてしまい、逆にカウンターで蹴り飛ばされる。

「うっ……!」

「遅いっての」

 2人は倒れ込み、それでも立ち上がって再び武器を構える。だが、すでにボロボロの状態だ。

「しぶといな……まぁ、その根性だけは認めてやるか……」

「まだ……負けていられません……!」

「……でも飽きた。死ねよ」

 マモンは一気に加速するとサーシャに向かって斬りかかる。サーシャはそれを受け止めるが威力を殺しきれず吹き飛び壁に激突する。

「サーシャ!?」

「くぅ……」

 サーシャはすぐに起き上がるが、ダメージが大きいようでフラついている。まずいわ……早く助けないとサーシャが危ない!私はサーシャに魔法で話しかける。

 《サーシャ!聞こえるかしら!?》

「はぁ……はぁ……」

 《サーシャ……?》

 サーシャは反応しない……まさか、意識を失っている?私はさらに呼びかける。

 《しっかりしなさい!あなたはこんなところで死ぬ人間じゃないでしょう!》

 しかしサーシャは私の声が聞こえていないのか、その声に反応しない。でも真っ直ぐマモンを見据え、立ち上がる。その姿はとても痛々しく、それでもなぜか勇敢に見えた。

『サーシャを助けたい』

 でも私はサーシャが握りしめているただの『アイアンソード』。サーシャが私の声を聞いてくれないなら魔法すら使うことができない……なんて無力なの。私は自分の不甲斐なさを痛感するのだった。

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