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【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

43. 灼熱の王国へ

43. 灼熱の王国へ



 港町デルタで魔法船に乗り、フランガラン帝国に向かっているサーシャとマーリン。今、魔法船は広大な海原をゆっくりと進んでいる。

 それにしてもこの魔法船はどんな原理で動いているのかしら?1000年前にはない魔法技術だし……気になってきたわね。

 うーん。普通に考えれば水属性魔法を利用して水を浮力として利用しているのかしら?でも、それだと波の影響とか受けるから難しいのよね。

 浮力なら風属性魔法かしら?いや普通に燃料の概念なら炎属性魔法ってことも……あぁ!もうわからないわ!! 私が頭を悩ましている中、マーリンがサーシャに話しかける。

「それにしてもこの魔法船は素晴らしいのう。原理は良く分からぬが、これも魔法技術の向上の賜物じゃろう。もしアイリスがここにおったら眉間にシワを寄せてぶつぶつ言っておるじゃろうな」

「そうなんですか?」

「言ったじゃろう?アイリスはガリ勉でつまらん女なんじゃ。こういう分からないことを考えるのが好きなんじゃろうな。本当に堅物で面倒な女じゃ」

 堅物で面倒な女まで追加されたわ……仕方ないじゃない!気になって気になってしょうがないんだもの!私は知らないことが嫌いなのよ!大賢者ってそういうものだから!

「マーリン様って本当にアイリス様が好きなんですね?」

「は?そんなわけなかろう!ワシは大魔女、アイリスは大賢者。互いに立場が違うんじゃ。」

「ふふっ。そうですか?」

 サーシャは微笑みながらマーリンに返事を返す。そして窓の外を見て一言呟いた。

「……そう言えばセントレアのみんな元気かな……あとはクレアさんも」

 サーシャがセントレアを出発して約1ヶ月がたつ。その間に様々な出会いがあったものね……。

 もし本当にこのまま六魔将と戦うのならサーシャには仲間が必要よね。一応、同行と言う形でマーリンはついてきてくれてはいるけど、今は魔力を失っているし全盛期のような力はない。それに私はただの『アイアンソード』だし。

 うーん。やっぱり仲間は欲しいところね……。私にできることはサーシャのサポートくらいだけど、それも限界があるし。

「あ。見えてきましたよマーリン様」

 サーシャが窓の外に視線を向けると、そこには地平線の向こうに街が見えた。

「ほぉ……あれがフランガラン帝国か。随分と立派な国じゃな。1000年前はあそこは灼熱の砂漠地帯だったんじゃがな……」

 マーリンは懐かしむようにフランガラン帝国の方角を見る。

「フランガラン帝国の国土の7割は砂漠地帯なんですよ。別名『灼熱の王国』。そして王都は広大な灼熱の砂漠の真ん中にある大きなオアシスに作られているんです。だから王国では有名な観光名所なんですよ」

「なるほどのう……」

 マーリンは感心するようにサーシャの説明を聞く。そして魔法船はフランガラン帝国の港町バーンに到着する。

「おお。なかなか賑やかな場所じゃな。さすがは大国とだけあって規模が大きいわい」

「私もこの国にくるのは初めてなのでワクワクします!」

 2人は船着き場に降り立ち、宿屋を探そうと街の入り口に向かうと、街の人達が騒いでいるのが見える。

「おい!見ろよ!フランガラン帝国の兵士だぜ!?」

「本当ね……一体何事なのかしら?」

 するとフランガラン帝国の紋章が入った鎧を着た兵士達が慌てた様子で走っていく。人々は不思議そうにその様子を見つめている。

「何かあったんですかね?」

「……まぁワシらには関係ないじゃろ。それよりまずは宿屋を探すぞいサーシャ」

 そう言ってマーリンはスタスタと前を歩いていく。本当に自己中よねマーリンって。

「あっ。待ってくださいよマーリン様!」

 サーシャは慌ててマーリンの後を追いかけていく。そしてその場に砂漠地帯特有の強い風が吹き熱砂が舞う。そう……この灼熱の帝国フランガランではこの時、後に国を巻き込む大きな1つの闇が動き出しているということは誰も知るよしもなかった。

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