【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

23. 前途多難

第2章 令嬢と大賢者。死闘!シャルドール防衛戦!



23. 前途多難



 こんにちは。大賢者アイリス=フォン=アスタータよ。私は今、サーシャとロザリアことマーリンと共に『ミスリル』という鉱石を探すために、隣国のバルムンド公国に向かっているわ。

 なんでも『ミスリル』があればマーリンが私を具現化することのできる魔道具を作れるみたいだけど……。

 まぁ確かにマーリンの魔法技術なら作れそうなのも分かる。でも実際そうなった時、私は戦えるのかしら?だってただの鉄の塊の『アイアンソード』の私は魔力などない。今だってサーシャの魔力を介して魔法を発動しているだけなのだから。

 とりあえず細かいことは考えないことにしよう。ちなみに今は馬車の中にいる。

「あ。ロザリア様、こぼしてますよ?拭きますからじっとしてください」

「!?子供扱いするでないサーシャ!自分で拭けるのじゃ!」

 いや。こぼすのがもう子供よマーリン。そんなこと言ったら怒るだろうけどね。顔を赤くして慌てるマーリンを見てサーシャは微笑んでいる。

「笑うでないサーシャ!まったく……」

「ふふっ。ごめんなさいロザリア様。なんか可愛くてつい。妹が出来たみたいで」

「い、妹じゃと?ワシはお主よりずーっと歳上なんじゃぞ?」

 見た目的にはそうにしか見えないわよね。というかマーリン……ツインテールは幼すぎないかしら?攻めすぎよあなた。

「あのロザリア様。聞いてもいいですか?」

「なんじゃ?」

「ロザリア様っておいくつなんですか?魔女様の年齢とか見た目では分からなくて」

「ワシは魔力を失っておるからの。もう1000年は軽く生きておる。」

「えぇ!?それ本当ですか!?全然見えませんよ!!」

 サーシャの反応は当然だわ。どう見ても10代前半くらいの少女に見えるもの。

「うむ。魔女の寿命は他の種族と比べて長いのじゃ。」

「あれ?でも1000年生きているならかつて世界を魔物の恐怖から救った英雄のこともご存じですか!?例えば大賢者アイリス=フォン=アスタータ様とか!?」

「うっ……それはその……」

 そうサーシャに聞かれたマーリンは言い淀んで、サーシャの腰に差さったままの私の方をチラッと見る。あなたまさか私の名前を出す気じゃないでしょうね?

「ロザリア様?どうかしましたか?」

「い、いやなんでもないのじゃ!なんでそんなこと知りたいのじゃ?」

「実は少し前に『英雄伝』を読んでいた時に、大賢者アイリス=フォン=アスタータ様を調べて。ほら剣の精霊様も同じ名前だったので何か関係あるのかなって思って」

 サーシャは私を握りしめ見つめながら話すと、マーリンはおどおどしているようだ。こらこら。あなた隠し事とか出来ないでしょ?困った魔女だわ。

「そ、そうなのじゃな!ワシはただのしがない魔女じゃし。」

「確か『英雄伝』の中に大魔女様もいましたよね?名前は……マーリンだったと思いますよ?」

「へ、へぇ~そうなんじゃな~」

 ちょっと待ってサーシャ。それ以上言うのは止めてくれないかしら?というかマーリンも隠そうとする努力を見せなさいよ!

「ん?なんでロザリア様は目を逸らすんですか?何か隠してますか?」

 サーシャはジト目でマーリンを見る。これはマズイ流れね。私はサーシャが偶然にも私を握りしめているので、魔力を使いマーリンと念話で会話をする。一応言っておくけど、本来の使い方はこれだから。

(ちょ、マーリン!!)

(す、すまぬアイリス!しかしワシが大魔女マーリンであることはバレたくないのじゃ!)

 ならもっと上手くやってほしいものだけどね。まぁ今更仕方ないわ。ここは私が何とかするしかないようね。今度はサーシャに直接語りかけることにする。

 《サーシャ。聞こえるかしら?頑張ってるようで私嬉しいわよ》

「え?この声はアイリス様!?」

 話すことは特にないので適当に話す。サーシャは驚いた表情で私を見ている。そしてマーリンが少しホッとした顔になる。本当に世話が焼けるわ。そしてすかさず話を逸らそうと白々しくマーリンが話す。

「あれサーシャ?もしかして何か声が聞こえたのか?」

「はい!今頭の中に直接響いてきました!頑張っているようで嬉しいって。やっぱりアイリス様は見てくれてるんですね!」

「うむ。なら尚更『ミスリル』を探さねばならぬのう?」

「はい。あっ!街が見えてきましたよ!『ミスリル』探し頑張らないと!」

 サーシャはさっきまでの疑念はどっかにいってしまったのか、目の前見えてきた街並みに興奮気味だ。まぁこれで誤魔化せたからよしとしようかしら。本当に前途多難だわ。

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