17.　過去。そして魔女の森へ

17.　過去。そして魔女の森へ

　一一1000年前……ある場所に世界を魔物の驚異から救った英雄たち6人がいる。そして目的を達っした彼らは今、別れ際である。

(さて……そろそろオレは行くかな。元気でなみんな)

　そう言うのは赤髪で長身の男。

(こうやってまたオレたちが集まらないことを願いたいがな)

　答えるのは金髪で筋骨隆々の大男。

(お主は最後まで心配性じゃの……まぁお主らしいがの)

　次に答えたのは自分の身長くらい長い杖を持つ女性。

(確かに。最後まで皆さんの事を考えるのですね立派です)

　続いて答えたのが眼鏡をかけた青髪の女性。

(アイリスの姉さん。これからどうするんだい？どこかに行く当てとかあるのか？）

　最後に答えるのが茶髪で小柄な少年。

（うーん、とりあえず適当に旅をしようかなって思っているわよ。まだ行ったことない場所もあるしね！それじゃ……もう会うことはないと思うけど、楽しかったわ）

　私は目が覚める。サーシャとクレアを西の洞窟で助けてからどれだけ時間がたったのだろうか。あの時、クレアの魔力を使って『ブリューナク』を詠唱して気を失ったんだっけ……。

　それにしても……ずいぶん懐かしい夢を見たものね。

　私はサーシャに握られながらベッドにいるようだ。隣のベッドにはクレアもいる。良かった。無事みたいね。そしてサーシャが目覚める

「ふわあぁ……おはようアイリス様」

　ええ。おはようサーシャ。挨拶は大事だからね。まぁ私の声は聞こえてはないと思うけど。

　さてと今日はどうするのかしらね？まずはギルドに行って依頼でもこなすのかしら？それとも休みにするのかしら？まぁ何にせよサーシャが成長していることが嬉しいわ。

　と呑気に考えていたのも束の間、私は今、妖精亭の食堂のテーブルの上に置かれている。周りにはサーシャ、クレア、そしてドミニクもいる。……何故？あまり見られると恥ずかしいのだけど。

「つまりサーシャとクレアの話によると、ピンチの時に頭に直接、女性の声が聞こえてそれを詠唱すると強力な魔法が発動するということだな？」

「はい。剣の精霊様なんですアイリス様は」

「間違いないと思います！この底辺冒険者の私でもあの至高の神聖魔法『ブリューナク』を使えましたし！」

　クレア。あまり自分を底辺とか言わないの。というより私の話なのか……

「だがな、この前も言ったがこの『アイアンソード』には精霊は宿っていない。こいつはただの『アイアンソード』だ。しかしお前たちの言うことが本当なら……」

　そうドミニクは言いながらサーシャから預かった『アイアンソード』を手に取る。そして……

「何かの魔道具なのかもな。魔力は感じないが……それとも強力すぎてオレたちでは感知できないか……」

　魔道具。それは魔法の力が込められた道具のことである。ドミニクが言っているように、サーシャたちにはその可能性があるように見えるのだろう。でも実際は本当にただの『アイアンソード』。この私、大賢者アイリス=フォン=アスタータが転生しているという事実以外はね。

　……それにしても私の正体がバレるのは困るわね。何とかしないと……って言っても私に何か出来ることなんてないけどね。そんなことを考えていると、ドミニクがサーシャとクレアにあることを伝える。

「あまりおすすめはしないが……このルグニカの北に誰も近づかない暗闇に覆われている森がある。別名『魔女の森』と呼ばれている所だ。そこは入ると必ず入り口にもどされてしまう曰く付きの森だ。しかしその森の奥深くには魔女が住んでいて崇高なる魔法の知識を持っているらしい。」

　魔女……ねぇ。まぁよくある設定よね。必ず入り口にもどされてしまうか……。何かの魔法の類いなのは間違いなさそうね。

「その魔女に会えば、もしかしたらこの『アイアンソード』のことが分かるかもしれない。まぁとにかく行ってみる価値はあるかもな」

「どうしますかサーシャさん？少し怖いんですけど……」

　あらら……クレアったらビクビクしてるじゃない。まったく……仕方がないわね。

「行ってみたい。この『アイアンソード』は私の相棒だから。知りたいの」

「うぅ……分かりました！サーシャさんの頼みですから行きましょう！まだパーティーは組んだままですし！お手伝いさせてください！」

「ありがとうクレアさん」

　サーシャの言葉でクレアがやる気を出す。うん。なんかいいコンビになりそうだわ。良かった良かった。

　こうして北にある魔女の森に向かうことになった。サーシャが決めたことなら私は反対するつもりはない。もし私が大賢者アイリス=フォン=アスタータと知られたとしてもね……。