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【大賢者の弟子?相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたので、とりあえず貴族令嬢を最強にする事に決めました。

夕姫

13. 利にかなってますよ

13. 利にかなってますよ




 午後の喫茶店。優雅にお茶を嗜む姿はさすがは元貴族令嬢だけあるわ。サーシャはチンピラに絡まれていた冒険者になりたいと言うクレアと言う女性を助けた。そしてそのお礼に今はお茶をご馳走してもらっていると言うわけね。

 そして私はサーシャとクレアの間の横の椅子に立て掛けられて、その様子を見ている。このクレアという女性はサーシャの同い年くらいかしら?茶色の髪と瞳でスタイルも良くて美人だわ。

「お茶をご馳走してもらってありがとうございます。」

「いえいえ!私の方こそ助けていただきありがとうございます!」

 クレアはそう言いながら下げすぎた頭をテーブルに思い切り打ち付ける。ゴンッという大きな音が鳴り響き、目の前に座っているサーシャが慌てて声をかける。

「痛い!」

「ク、クレアさん!?大丈夫ですか?」

「うぅ……またやっちゃったぁ。大丈夫。いつもの事ですから……。それに私、石頭ですし!」

 クレアが涙目で額を抑えながら変な自慢をしている。何この子……天然なのかしら?ちょっと面白そうな子だわ。

「それより、私を助けてくれた時の動き凄かったですね!特にあの一瞬で3人を打ち付けるなんて信じられませんよ!」

 クレアが目をキラキラさせて興奮気味に話しているのをサーシャは苦笑いを浮かべている。でも確かにあの動きは凄かったわ。本当にゴブリンに震えていた頃が懐かしいわよね。

「あれはたまたま上手くいっただけです。でも褒めてくれて嬉しいですよ。」

 サーシャは満面の笑みを浮かべている。やっぱりサーシャって可愛いわね。こんな笑顔を見れるならもっと早くに旅に出ていれば良かったかも。とか思ったりして。

「ところでクレアさんはどうして冒険者に?」

「あーそれは……」

 サーシャの言葉を聞いたクレアは苦笑いをしながら頬を掻く。まぁ普通に考えれば危険な仕事だし、命の危険があるから躊躇するわよね。

「実は私、昔から剣とか槍とかそういう武器に憧れていて、子供の頃はよく木刀を使って素振りをしたりしていたんです。だけど大きくなるにつれて親に止められちゃいました。危ないし怪我をするから止めなさいって言われて。」

「クレアさんは前衛職なんですか?」

「あっいえ……私は聖職者見習いです。多少の光魔法や回復魔法が使えます。」

「えっ!聖職者なのにどうして……?」

「はい。先日教会の神父様に相談したところ、お前はどうせまだ結婚しないんだからこのまま教会に残るよりも外の世界を見てきなさいと言われまして……。それで一念発起して村を出て冒険者になろうと思った次第です。あの大賢者アイリス=フォン=アスタータ様のように」

 あら私?なんて可愛らしくていい子なの!身体が『アイアンソード』じゃなければ抱き締めたいくらいよ!

「でも現実は厳しいです。私くらいの能力なんて、そこら辺に沢山います。西の洞窟を攻略出来れば、私も少しは自信が持てるかもと思ったんです。そもそも私は戦闘経験が少なくて弱いんですよね。怖い男の人に絡まれてしまいましたし……」

 はぁ~と溜息をつくクレア。それを見たサーシャが何か思いついたのか手をポンッと叩く。

「それで西の洞窟に行きたいんですね。ならいっそのこと私と一緒にパーティーを組みませんか?お互い助け合いましょう!」

「ふぇ!?そっそんな恐れ多い事できませんよ!私なんか足手まといになるだけです!」

「大丈夫ですよ!私は前衛、クレアさんは後衛。利にかなってますよ!」

 サーシャがグッと拳を握って力説しているけど、クレアの実力は私も知らないから判断出来ないわ。ただサーシャが決めたことなら私は何も文句はないけどね。

「私なんかが……良いんですか?」

「もちろんですよ!」

 サーシャがそう言うとクレアの目尻に涙が浮かぶ。どうやら感動しているみたいね。なんか大袈裟な気もするけど、クレアは素直な子ということはわかったわ。

「私……頑張ります!」

「はい!一緒にがんばりましょう!」

 こうしてクレアはサーシャの仲間になった。今までヴェインとかの大人の男性としか組んだことないし、同年代の女性、しかも役割の違う仲間。サーシャにとってもいい経験になるわね。

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