【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

58. ワイバーン討伐 ~後編~

58. ワイバーン討伐 ~後編~




 フィオナは走り出しました。そしてそれを追いかけてくるワイバーンの後ろ足に向かって剣を振り抜くのです。見事に命中しましたがワイバーンの皮膚を切り裂くだけであまりダメージを与えられていません。しかし動きを封じられたのは確かです。あの本の通り弱点の頭を狙うしかないようなのです。

 ロゼッタ様はそのすきに魔法陣を展開して魔法を詠唱しようとしていましたが、ワイバーンは力ずくで魔法印を破壊したのです。

「ちっ……素早いのじゃ……」

「師匠!ボクに任せて!」

 フィオナがワイバーンの攻撃を防いでいる間にロゼッタ様は再度魔法陣を展開すると今度は炎の鎖が飛び出したのです。さっきの魔物との戦いで見せたあの魔法なのです!そしてその鎖はワイバーンの体に巻き付きまとわりつくのですがそれでもなお無理やり動いています。しかし動きはだいぶ鈍くなったのでこれならば……

「くっ暴れおって……」

「ロゼッタ様!私も加勢するのです!」

 私は勢いよく近くの木に登り始める。私も参加するのです。ワイバーンの弱点は頭なのです。私は勢いよくジャンプしてワイバーンの頭をめがけてロッドを叩きつけるのです。

「沈んどけなのです!!」

 ゴギンッ…と大きな音を立ててワイバーンの頭にロッドを叩きつける。するとワイバーンの頭がぐちゃっと潰れてそのまま地面に倒れたのです。そして私が蒔いた聖水で体が煙をあげ溶けたのです。

 これで終わりなのです?なんかあっけないのです。そう思って周りを見渡すとロゼッタ様とフィオナがこちらを見ながら唖然とした表情をしていたのです。

 あれ?どうしたのです?

「えーと……その……アリーゼ様強いんだね。」

「もちろんなのです。私は聖女なのです。」

「そ、そうなんじゃな……お主は特別のような気がするのじゃがな……」

 なぜでしょう……ロゼッタ様がちょっと引いてる気がしたのです。私はただの聖女なのです!

 そういえばワイバーンは……しまったのです!超絶品のワイバーンを聖水で溶かしてしまったのです…ぐすっ…食べたかったのです……。

「聖水なんか蒔かなきゃ良かったのですぅ~~!!」

 そんな私の叫びは森に響き渡るのでした。

 無事ワイバーンを討伐した私たちは一度マジカリア城に戻ることにするのです。道中ロゼッタ様が木々に魔法印を刻んでくれてるので戻るのは楽勝なのです。ちなみにこの魔法印は結界魔法の応用で、ロゼッタ様の話だと第4等級以上の魔力を流すと自動で結界ができる便利な物らしいのです。

 マジカリア城に戻ってきた私たち三人はそのまま謁見の間に通されギルフォード様にワイバーンを討伐結果を報告するのです。

「なんと……聖魔法を使わずそんな大物まで倒すとは正直驚いた。」

「ロゼッタ様とフィオナがワイバーンをおさえてくれていたので問題ないのです。私はただの聖女なのです!」

「まぁ…アリーゼの一撃がなければあの魔物を倒すことはできんかったのは事実。あまりそんなに前に出る聖女など見たことないのじゃが……」

 そんな話をしていると、突然兵士が入ってきたと思ったらギルフォード様に耳打ちをするのです。それを聞いた瞬間ギルフォード様の表情が変わったのを私は見逃さなかったのです。一体何が起きたのですか!? ギルフォード様は兵士の報告を聞くとすぐに立ち上がった。

 まさか何か重大な問題がおきたのです……? 私はギルフォード様から話を聞くことにするのです。なんと…… この魔法都市ルナノワールの西にあるアルスメルタの街に魔物の軍勢が現れたというのです。

 現在街を守れる戦力は騎士達だけで、街にいる冒険者は全員出払っているというのです。そして街の門はすでに破られており魔物達が街に侵入し始めており、このままでは街は蹂躙されるのも時間の問題らしいのです。

「わかった。今すぐ援軍を送る。だがその前にこの街にまだ残っている戦力がいないか確認をしてきてほしい。あと魔物が街の近くに潜んでいる可能性もある。警戒レベルをあげて捜索してくれ。」

「かしこまりました!」

 そう言って報告にきた兵士はすぐに出ていくのです。全く……厄介なことが次々起きるのです、ワイバーンの襲撃に続いて次は魔物……本当に面倒ごとが多いのです。これも何かの原因なのですかね。そんな様子を見てロゼッタ様は話し始めるのです。

「厳しいのギル坊…」

「手は打ってあります。もうそろそろ着く頃だと思うのですが…」

 そしてしばらくすると再び先ほどの兵士がやってくるのです。どうやらこのマジカリア城に向かっている馬車を見つけたとのこと。

 ギルフォード様はその報告を受けるなり立ち上がり迎えに行くように兵士に指示をします。どうやら援軍が到着したのでその人を謁見の間に連れてくるようにとのことだったのです。

 扉が開く。するとそこにいたのは、ソルファス王国で公開処刑を阻止してくれた聖エルンストの四聖女のリスティ=ローレン様なのです!

「リスティ様!?」

「あら?聖女アリーゼ。どうしてあなたがここに?」

 リスティ様はきょとんとした顔をしながら私に挨拶をするのです。まさかこんなにすぐに会えるなんて思っていなかったのです!

「ここまでご足労感謝します。リスティ=ローレン様」

「いえ。世界の秩序を守るのが私の仕事なのです。賢王ギルフォード=エルヴァンド=マジカリア。魔物活性化での街の救済でしたね?」

「はい。しかし事態は急を要してまして西にあるアルスメルタの街に魔物の軍勢が現れたというのです。そちらの対処が優先かと。」

 リスティ様は静かにうなずくと私の方を向くのです。なんでしょう……凄くドキドキするのです。

「分かりました。それならすぐに向かいましょう。救済のあと結界を張っておきましょう、少しの間なら魔物からの驚異を防げますので。それと聖女アリーゼ、あなたも同行をお願いしたい。」

「私なのです?でも私は……。」

「聖女はすべてを等しく救う存在です。あなたは否定してはいけない。違いますか?」

 私は聖魔法が使えないのです…。言い訳を言う前にそう断言されてしまい何も言えないのです。確かに私は聖女として人々を救いたい。私の表情を読み取ったのかロゼッタ様はリスティ様に提案をする。

「ならばワシとフィオナも一緒で問題はなかろう?アリーゼの仲間なのじゃから。」

「……ええ。もちろんですよ」

 こうして私たちはアルスメルタの街の魔物達を迎え撃つべく急いで準備を始めるのでした。

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