【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

17. アリーゼ ~ミルディ視点~

17. アリーゼ ~ミルディ視点~




 あたしはミルディ。ルベルタに住んでる魔法鍛冶屋の一人娘。カトリーナ教会を追い出されて自由に旅をしているアリーゼに助けてもらったのが縁で、アリーゼの旅に着いていくことにした。それはアリーゼを本当に尊敬できるからではあるのと同時にあたしの夢の「賢者の石」と呼ばれるものを探すのも目的だからだけど。

 あたしは今宿屋にいる。先日みんなが一緒に買ってくれた鉱石を使って魔法錬金でいざと言う時に戦えるように魔法アイテムを作っている。と言ってもそんな大層なものじゃないけどね。でも、やっぱりこれがあるとないとじゃ違うんだって。あたしの気持ち的に。

「ふぅ…一段落ついたし、あとはこの容器に移すだけか。とりあえず休憩しようかな。」

 部屋の中には昼間だと言うのにのんきに昼寝をしているロゼッタ様がいる。ロゼッタ様を起こさないようにしないと、口うるさいし寝起きが悪いし、万が一起こしたら面倒だ…そう思って部屋を出た時だった。

 ドンッ!! 誰かにぶつかってしまった。あちゃーやっちゃったよ……。すぐに謝ろうと思って顔を上げたらそこにはアリーゼがいた。

「痛いのです…」

「ごめんアリーゼ大丈夫?」

「大丈夫なのです。私も前をしっかり見ていなかったのでお互い様なのです。」

 あたしは床を見る。アリーゼが買ってきたであろう本が散らばってしまっている。それを拾うとアリーゼが買ってきた本は色々なジャンル。本当に本が好きなのが分かる。そして本の表紙を見てみた。

【誰でも使える簡単調理法~これであなたも料理上手?!~】
【恋愛とは試練と同義】
【やっぱり猫しか勝たん。】
【錬金術物語】
【交渉の基礎】

 などなど……本当に色々だなぁ……!

 しかも表紙の絵が何気に可愛くていい感じだし…… どんな内容なんだろう?あたしが興味津々に見ているとその様子を見ていたアリーゼがあたしにこう言った。

「あれミルディ?興味があるのなら読んでみますか?」

「ええ!?」

 え!?心が読まれてる!?少し恥ずかしくなったけどせっかくの機会だし読むことにしてみた。

 どの本がいいのだろう。一番目についたのはこの【やっぱり猫しか勝たん。】という題名の子供が読むような本に見えるものだった。

 とりあえずその本を読むことにする。

 しばらく読んでみると止まらなくなった。その表紙の可愛さからは想像できない、内容は……なんかすごい話だった。絵が多くて可愛いんだけど内容がとても濃い。主人公の女の子が旅の中で様々な出会いをし、その中で恋をして、愛を知っていく壮大なストーリーになっていた。読み終わる頃には何とも言えない感動に包まれていた。

 あたしが本を閉じふと顔をあげるとアリーゼが私を見て微笑んでいた。あたしはまた恥ずかしくなる。

「ミルディが楽しそうで何よりです!夢中で読んでましたから」

「アリーゼもあたしの事見てないで、買ってきた本を読んでたいたら良かったのに!こんなに買ってきたんだから?」

「それはもう読み終わったのです。あとはミルディが読んでいたその本だけなのです。」

「はやっ!それなら言ってくれれば良かったのに!」

 あたしはちょっとムキになって言う。するとアリーゼは私の反応を見て微笑んでいる。その様子を見てあたしは思わず顔が熱くなる。だって、それはまるであたしがアリーゼと一緒にいたかったと言っているようなものなんだもん。そんな事思われてたらって思うと誰だって照れると思う。そんな時アリーゼがあたしに話してくる。

「こんなに早く読んでしまうのは、もう日課みたいなものなのです。聖女として教会にいた時は自由な時間はあまりなかったので、暇があれば本を読んでいたのです。でもちゃんと内容は覚えているのです!」

 聖女。初めて会った時アリーゼから聞いた。聖女って凄い優遇されてると思っていたけど、そんなこともなかった。だから今のアリーゼは本当に自由で楽しそうに見える。

「というかアリーゼは本当に本が好きなんだね。あたしは苦手。まぁこの本は面白かったけど…。」

「私は昔からよく読んできたのですよ。いろんなことが載っていて面白いのです。」

 聖女としての毎日。同じ年の子達はおしゃれだスイーツだ、恋愛だのに興味が向いているなかアリーゼは。だから聖女としてのアリーゼも尊敬できるんだ。あたしはアリーゼのことを知りたいのかもしれない。

「そっか。せっかくだし今度時間があったらアリーゼのおすすめの他の本も貸してほしいかも。少し読書に挑戦しようかな…」

「もちろんなのです!ぜひ貸しますね!きっと気に入るはずなのです!!あっ。それなら私は魔法錬金を勉強しようかなのです!」

 そう言う、アリーゼの顔はとても眩しかった。あたしたちはお互いに笑い合う。あたしは本当にこの時間が好きだ。そしてその時間を与えてくれるアリーゼが大好きなのだと思った。

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