【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

15. 救い

15. 救い



 私はその扉を勢いよく開けるのです!

 するとその部屋は禍々しい気で埋め尽くされている。それは部屋の奥にあるあの人形からだ。あれが悪魔の依代という魔道具で間違いない。しかしその人形の前に1人の男性が立っている。おそらくクリスフォード=マールウッドだろう。

「ミルディ下がっているのです。ロゼッタ様ミルディをお願いしますです。」

「アリーゼ!?」

 私はそういうと2人の前に立つ。禍々しい気が私を包み込むが、私は事前に純銀の聖水を振りかけているので少しの間は取り憑かれることはないのです。

「なんだお前は?まさか俺の前に出てくるとはな。悪魔に魅入られた愚か者か?俺が切り刻んでやる!」

「それはこっちのセリフなのです!私はただの聖女なのです!」

「聖女?ああやはり…悪魔に魅入られた愚か者かぁ!!」

 そう言いながら剣を抜いて構えていますね。しかも情緒が不安定なのです。とても危険なのです。私は純銀の聖水を悪魔の依代に振りかけるチャンスを伺う。しかしその間にもクリスフォードはどんどん距離を詰めてくるのです。

「まずはその腕からもらうぞぉ!」

 よく相手を見るのです。本に書いてあった通りにすれば必ず…。そしてクリスフォードは剣を振り抜く。私はギリギリでその攻撃をかわすのです!

「避けられるのです!」

 相手の攻撃をかわす方法は本に書いてあったのです。成功なのです。でも油断してはダメなのです。聖魔法がなくても私が必ず悪魔祓いをして見せるのです。

「オラァッ!」

 今度は横薙ぎの攻撃ですね。さっきより攻撃速度が速いけど何とか見えているのです。これなら大丈夫なはずなのです。

 私は横にステップを踏みながら後ろに下がる。その時足下に違和感を感じたのです。床をよく見ると小さな穴が空いているのです。

「!!これなのです。」

 私は何とかここに誘導するように挑発をする。大丈夫。これも本に書いてあったのです。

「ちょこまかと…」

「ふぅ。あくびが出るほどの遅さなのです。そろそろ本気で来たほうがいいのですよ?私の本気なら簡単に倒せるのです。」

 さらに挑発する。そして足元の小さな穴まであと一歩。かかったのです!これでチェックメイトなのです! 私は素早く純銀の聖水をかける。

「グワアアアッ!!!やめてくれぇえええっ!!」

 よし効いてるのです!あとはあの人形を。このまま浄化を続けるのです! その瞬間部屋の空気が変わったのです。まるで地獄の底にいるような息苦しさと寒気に思わず膝をつく。

 何が起きたのですか!? クリスフォードを見ると、先程までの狂気に満ちた表情ではなく、苦悶の表情を浮かべて苦しみ始めたのです。

 するとどこからか声が聞こえてきたのです。

【我を滅ぼそうとする者よ、この男より動きやすそうだ。貴様の身体をよこせ…】

 これは悪魔の依代の声なのでしょうか?この世のものとは思えないほど恐ろしい声。耳元で囁かれているかのような……。私はミルディとロゼッタ様のほうを見る、どうやら2人には聞こえてないようなのです………。私の身体に振り撒いた純銀の聖水の効果が切れ始めているのです……。

 私は震えながらも答える。

「わ……たしは……聖女な……のです。負けません!」

 する同時に私の身体から光が放たれる。その光はこの部屋の禍々しい気だけではなく悪魔の依代である人形までもを浄化する。そして私はその場で気を失う。ミルディが私の元に駆け寄る。

「アリーゼ!!」

「今のは間違いなく聖魔法なのじゃ。「聖痕」のないアリーゼがなぜ……?」

 それは間違いなく聖魔法であった。アリーゼが放ったのはかなり強力なものである。ロゼッタは今まで聖女と言われていた者の聖魔法は見てはいたが、ここまで強力で清廉なものは久しぶりに見る。まるで大聖女ディアナを彷彿とさせるほどの聖魔法を…。




 マールウッド家を支配していた悪魔の依代はアリーゼの突然の聖魔法で浄化することができた。そして次の日、アリーゼはまだ目を覚まさない。

「アリーゼ…。」

「ミルディ心配するでない。アリーゼは少し無理をしただけじゃ。いずれ目を覚ますじゃろ。」

 そう微笑みながらロゼッタ様はミルディに伝える。しかしロゼッタも内心穏やかではなかった。

(一体どういうことなんじゃ?確かにアリーゼは聖女。「聖痕」が消えてなければ聖魔法を使う素質はある。しかし……あの威力。これほどとは思わなかったぞ……。アリーゼ本当に……。)

 すると、部屋にノック音が響く。誰だろうかと思いドアを開けると見知った顔があった。ミルディとロゼッタは驚くそこには憲兵につれられた、クリスフォードの姿があったのだ。

「クリスフォード=マールウッド!?」

「……なんの用じゃ?」

「無礼を承知で尋ねた。色々迷惑をかけてすまなかった。そこのアリーゼに私は救われた。」

 深々とクリスフォードは頭を下げる。これにはロゼッタも驚く。そして、クリスフォードはそのまま話続ける。

 クリスフォードが言うには悪魔憑きになった後、自分の意識が徐々に薄れていく中で、自分はこのまま死ぬんだと思ったらしい。そして自分が死んだ後に悪魔に乗っ取られることを恐れたのだが、それをアリーゼに救われて感謝をしているとのこと。それを聞いてミルディは話す。

「……あんたのせいじゃないけど、あんたを助けるためにアリーゼは無理したんだから!」

「それは承知している。許してほしいとは言わない。」

「あたしは納得できない!」

「ミルディ。そやつを責めても仕方あるまい。救うと決めたのはアリーゼなのじゃからな。」

 ロゼッタの言葉を聞き黙り込むミルディ。クリスフォードは再び口を開く。クリスフォードはこれから罪を償っていくつもりだと言う。

 そんな時アリーゼが目を覚ます。

「うぅっ……ここはどこなのです?」

「アリーゼ!!良かった…あたし…心配で…」

「目が覚めたか。全く迷惑をかけおって。」

「?…あっクリスフォード=マールウッドさん、!?あのあの失礼を申し訳ありませんなのです!」

 アリーゼは自分の状況を思い出して慌ててベッドから出て土下座をする。その姿を見たクリスフォードは慌てる。その光景はどっちが正しくてどっちが悪いのかもうわからない状況だったのだ。

 その光景を見てミルディとロゼッタ様はクスッと笑う。そして私はクリスフォードさんにあるものを渡す。

「これをお返しするのです。信頼できる方から預かっていたのです。」

「これは…アルグラッドか…ありがとうアリーゼ。」

「いえ。私はただの聖女なのです。困った人のお願いは聞きたいのです。だからあなたはこれから罪を償うのです。もしも挫けることがあれば私がいつでも助けるのです。」

 私は笑顔で答える。その言葉を聞いたクリスフォードは目頭を熱くする。こうしてこの事件は幕を閉じるのでした。


 その後、クリスフォードはマールウッド公爵家の爵位を剥奪して国外追放となりました。そしてマールウッド家は取り潰されることに。そして数日後、マールウッド家に居た使用人たちは全員無罪放免となり、マールウッド家から追い出される形となりました。

「……これで良かったのです。クリスフォードさんはまたやり直せるのです。さぁ今日もいい天気なのです!」

 そう言って私は空を見上げる。そこには青い綺麗な青空が広がっていた。さて次はどんな事が待っているのでしょうか。楽しみなのです!

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