【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~
12. 経営資金調達 ~マルセナside~
12. 経営資金調達 ~マルセナside~
この前の「巡礼祭」を盛大に失敗してしまったカトリーナ教会は経営の危機が迫っていた。今まで出資してくれていた有力貴族たちが揃って赤い顔をし出資を取り消す事態に陥ったからだ。ほぼ半数の出資をなくしている状況にオイゲン大司教は頭を抱えていた。
今までと何も違わなかった。唯一違うのは「聖痕」が消えた聖女をたった1人破門にした。ただそれだけなのだ。アリーゼとマルセナを比べても容姿、振る舞い、聖魔法の全てにマルセナのほうが軍配が上がる。しかし「巡礼祭」は失敗に終わってしまった。
オイゲン大司教は聖女マルセナを執務室に呼び出す。
「聖女マルセナ。今日もてなすライアン王子の出資がこの教会の存続にかかっている。粗相のないようにな。」
「わかっておりますわ。聖女として完璧に勤めあげます。」
「では行くぞ。」
そういうと執務室を出て来賓の応接間に向かう。アリーゼが出来て私が出来ないはずありませんわ!マルセナの意志は固い。
(ふっ……どうせ私の方が優れていることに気がつくのですわ。)
そう心の中でほくそ笑みながらマルセナは来賓の部屋へ向かった。
「お待たせいたしました。本日はようこそおいでくださいました。私は当教会を預かる大司教です。こちらは新しい第一聖女であるマルセナになります。ごゆるりとお過ごしくださいませ。」
「マルセナです。」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます。私は隣国ランバート王国の第二王子ライアン・ランバートと言います。以後お見知りおきを……」
マルセナはその姿を見て驚いた。今までの男は皆自分の顔を見るなり、少なからず好意を示したような目つきになるのだが。しかし目の前の男の目にはそんなものは全くない。むしろ冷めた目をしている。
(何よその目は!!︎私の魅力がわからないのかしら?まぁいいわ。あとで思い知らせてあげるんだから。)
「ところで聖女アリーゼ様は辞めたと聞きましたが?」
「えぇ、もう彼女は必要なくなりましてね。これからはこのマルセナが第一聖女となります。」
「そうなんですか!?︎…それは楽しみですね!」
「前聖女のアリーゼも凄く優秀な聖女でした。それに負けないように頑張りますので期待していてくださいまし。」
そういってニコッと微笑むマルセナを見てライアン王子も微笑み返してくる。そして出された紅茶に口をつける。
「これはレイミアの紅茶ですか。うんいい香りだ。」
なぜわかったのだろうか。確かに先程出した紅茶はレイミア産の最高級茶葉を使ったものだ。さすがは王族だけある。
「分かりますのね?さすがはライアン王子ですわ。」
「…いや、以前聖女アリーゼ様に教えてもらってね。もう一口でなんの紅茶か当てられるまでになった。毎回当てるのが楽しみになっていたくらいだよ。」
またアリーゼ…どいつもこいつもアリーゼアリーゼって!!いい加減にしてほしいわ!そんなイラついた気持ちを抑えつつ笑顔を作る。
その後も他愛もない話をし、話が一区切りしたところでマルセナは切り出してみた。
「あの実は我がカトリーナ教会は今経営難でして…」
「ああ。なんとなく聞いているよ。オイゲン大司教、申し訳ない。聖女マルセナ様と2人で話がしたいんだが、よろしいかな?」
そういうとマルセナを連れて外に出ていってしまった。取り残されたオイゲン大司教は内心焦っていた。
だがこうなっては仕方がない。アリーゼのような無能ならまだしもマルセナなら問題はないはず。ライアン王子を怒らせてこの教会ごと潰されるわけにもいかないのだ。
ライアン王子はマルセナを連れて庭にでる。そしてマルセナに話す。
「このあたりでいいか。君も大変だろう。大司教様の前では、さぁ素の自分を見せたまえ。」
「素の自分…」
マルセナは一瞬だけ考える。それが出来ればどれだけ楽か。今まで溜めていた感情が溢れ出すように…… そして堰き止めていたものが壊れたかのように…… 。
でもその感情を押し殺してマルセナはライアン王子に伝える。彼女はそれでも聖女なのだ。
「なんの事でしょう?これが素の私ですわ。私はただ、我がカトリーナ教会の為に資金援助を引き続きお願いしたいのですわライアン王子。」
そう言って微笑んでみせる。
「……そうか。今回は君の頑固さ、聖女としての責任感に称して資金援助をしよう。」
正直、マルセナは嬉しくはなかった。今のは間違いなくアリーゼと比べている。自分のほうが上だったはずなのに。悔しくて唇を強く噛む。
しかしこれでこの教会の窮地は脱することができる。それでも…。そんな時ライアン王子はマルセナに忠告をする。
「君は容姿端麗で、聖女としての振る舞いも完璧。聖魔法も噂で優れていると聞く。聖女アリーゼ様と比べても端から見た聖女としては君のほうが優秀だろう。でも君はこのままなら自分で自分を駄目にしてしまうよ?それが聖女アリーゼ様と君の違いだよ。」
「!?」
「果たして聖女とはどういう存在なのかな。それが分からないうちは君は聖女アリーゼ様には遠く及ばないよ。なにより聖女アリーゼ様は楽しそうに自由に聖女をやっていた。」
「………。」
「でも今の君は聖女でいることに苦しそうだ。次に会うときはもっと楽しそうな君に会いたいものだ。ただ、一応言っておくが私は君の事が気に入った。ではまた会おう聖女マルセナ様。」
ライアン王子はマルセナにそう告げるとその場を去る。マルセナは何も言い返せなかった。
(苦しい?私が?そんなことありませんわ!)
そんなことを考えながら執務室に戻るとそこにはオイゲン大司教がいた。
「どうだったのだ聖女マルセナ!?」
「…援助はしてもらえることになりましたわ。」
「おお!よくやったぞ!さすがは聖女マルセナだ!!」
オイゲン大司教は凄く喜んでいる。しかしマルセナは違う。
(本当にこれでよかったのかしら?)
自分は今まで頑張ってきた。努力もしてきた。それなのにこんな扱いを受けるなんて。
ライアン王子の言葉。それは間違いなくアリーゼより自分が劣っていることに他ならないという事。お情けでの資金援助。マルセナはアリーゼに負けを認めざるおえなかったのだった。
この前の「巡礼祭」を盛大に失敗してしまったカトリーナ教会は経営の危機が迫っていた。今まで出資してくれていた有力貴族たちが揃って赤い顔をし出資を取り消す事態に陥ったからだ。ほぼ半数の出資をなくしている状況にオイゲン大司教は頭を抱えていた。
今までと何も違わなかった。唯一違うのは「聖痕」が消えた聖女をたった1人破門にした。ただそれだけなのだ。アリーゼとマルセナを比べても容姿、振る舞い、聖魔法の全てにマルセナのほうが軍配が上がる。しかし「巡礼祭」は失敗に終わってしまった。
オイゲン大司教は聖女マルセナを執務室に呼び出す。
「聖女マルセナ。今日もてなすライアン王子の出資がこの教会の存続にかかっている。粗相のないようにな。」
「わかっておりますわ。聖女として完璧に勤めあげます。」
「では行くぞ。」
そういうと執務室を出て来賓の応接間に向かう。アリーゼが出来て私が出来ないはずありませんわ!マルセナの意志は固い。
(ふっ……どうせ私の方が優れていることに気がつくのですわ。)
そう心の中でほくそ笑みながらマルセナは来賓の部屋へ向かった。
「お待たせいたしました。本日はようこそおいでくださいました。私は当教会を預かる大司教です。こちらは新しい第一聖女であるマルセナになります。ごゆるりとお過ごしくださいませ。」
「マルセナです。」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます。私は隣国ランバート王国の第二王子ライアン・ランバートと言います。以後お見知りおきを……」
マルセナはその姿を見て驚いた。今までの男は皆自分の顔を見るなり、少なからず好意を示したような目つきになるのだが。しかし目の前の男の目にはそんなものは全くない。むしろ冷めた目をしている。
(何よその目は!!︎私の魅力がわからないのかしら?まぁいいわ。あとで思い知らせてあげるんだから。)
「ところで聖女アリーゼ様は辞めたと聞きましたが?」
「えぇ、もう彼女は必要なくなりましてね。これからはこのマルセナが第一聖女となります。」
「そうなんですか!?︎…それは楽しみですね!」
「前聖女のアリーゼも凄く優秀な聖女でした。それに負けないように頑張りますので期待していてくださいまし。」
そういってニコッと微笑むマルセナを見てライアン王子も微笑み返してくる。そして出された紅茶に口をつける。
「これはレイミアの紅茶ですか。うんいい香りだ。」
なぜわかったのだろうか。確かに先程出した紅茶はレイミア産の最高級茶葉を使ったものだ。さすがは王族だけある。
「分かりますのね?さすがはライアン王子ですわ。」
「…いや、以前聖女アリーゼ様に教えてもらってね。もう一口でなんの紅茶か当てられるまでになった。毎回当てるのが楽しみになっていたくらいだよ。」
またアリーゼ…どいつもこいつもアリーゼアリーゼって!!いい加減にしてほしいわ!そんなイラついた気持ちを抑えつつ笑顔を作る。
その後も他愛もない話をし、話が一区切りしたところでマルセナは切り出してみた。
「あの実は我がカトリーナ教会は今経営難でして…」
「ああ。なんとなく聞いているよ。オイゲン大司教、申し訳ない。聖女マルセナ様と2人で話がしたいんだが、よろしいかな?」
そういうとマルセナを連れて外に出ていってしまった。取り残されたオイゲン大司教は内心焦っていた。
だがこうなっては仕方がない。アリーゼのような無能ならまだしもマルセナなら問題はないはず。ライアン王子を怒らせてこの教会ごと潰されるわけにもいかないのだ。
ライアン王子はマルセナを連れて庭にでる。そしてマルセナに話す。
「このあたりでいいか。君も大変だろう。大司教様の前では、さぁ素の自分を見せたまえ。」
「素の自分…」
マルセナは一瞬だけ考える。それが出来ればどれだけ楽か。今まで溜めていた感情が溢れ出すように…… そして堰き止めていたものが壊れたかのように…… 。
でもその感情を押し殺してマルセナはライアン王子に伝える。彼女はそれでも聖女なのだ。
「なんの事でしょう?これが素の私ですわ。私はただ、我がカトリーナ教会の為に資金援助を引き続きお願いしたいのですわライアン王子。」
そう言って微笑んでみせる。
「……そうか。今回は君の頑固さ、聖女としての責任感に称して資金援助をしよう。」
正直、マルセナは嬉しくはなかった。今のは間違いなくアリーゼと比べている。自分のほうが上だったはずなのに。悔しくて唇を強く噛む。
しかしこれでこの教会の窮地は脱することができる。それでも…。そんな時ライアン王子はマルセナに忠告をする。
「君は容姿端麗で、聖女としての振る舞いも完璧。聖魔法も噂で優れていると聞く。聖女アリーゼ様と比べても端から見た聖女としては君のほうが優秀だろう。でも君はこのままなら自分で自分を駄目にしてしまうよ?それが聖女アリーゼ様と君の違いだよ。」
「!?」
「果たして聖女とはどういう存在なのかな。それが分からないうちは君は聖女アリーゼ様には遠く及ばないよ。なにより聖女アリーゼ様は楽しそうに自由に聖女をやっていた。」
「………。」
「でも今の君は聖女でいることに苦しそうだ。次に会うときはもっと楽しそうな君に会いたいものだ。ただ、一応言っておくが私は君の事が気に入った。ではまた会おう聖女マルセナ様。」
ライアン王子はマルセナにそう告げるとその場を去る。マルセナは何も言い返せなかった。
(苦しい?私が?そんなことありませんわ!)
そんなことを考えながら執務室に戻るとそこにはオイゲン大司教がいた。
「どうだったのだ聖女マルセナ!?」
「…援助はしてもらえることになりましたわ。」
「おお!よくやったぞ!さすがは聖女マルセナだ!!」
オイゲン大司教は凄く喜んでいる。しかしマルセナは違う。
(本当にこれでよかったのかしら?)
自分は今まで頑張ってきた。努力もしてきた。それなのにこんな扱いを受けるなんて。
ライアン王子の言葉。それは間違いなくアリーゼより自分が劣っていることに他ならないという事。お情けでの資金援助。マルセナはアリーゼに負けを認めざるおえなかったのだった。
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