婚約破棄して欲しいならこちらの願いを叶えてください

黒月白華

戸惑う第三の条件(ジーク)

 マリアンネ様がまだ学園を休んでる間…シモン様が登校され、僕に第三の条件の手紙を渡した!

 内容を見て僕は青ざめた!!

「…これ…そんな!王女様にこんな酷い事を言えと!?」
 僕を兄の様に思ってくれてる妹の様な王女様にこんな事を言うと傷つかれるだろうし…それに隣国の第四王女に不敬罪として僕これ処刑されるんじゃないかな!?

 シモン様は涼しい顔で

「できないと言うなら…残念ですがお嬢様との婚約破棄は貴方様が死んでもできないままでしょう!

 ああ…それにお可哀想なジークフリート様はお気付きになられていない様ですので私はこの事はお嬢様には黙っておいてと言われたのですが!

 言ってしまってよろしいでしょうか?」
 とシモン様が言いにくそうに口を抑える。

「な…なんでしょうか!?」

「……実はあのお見舞いの時に王女様がお持ちしたケーキでございますが…何故かあの中に大量の虫とガラスの破片が入っておりましてね…。お嬢様はそれを最初気付かず一口…口に入れ違和感で吐き出して大変気分が悪くなり…しかも口内を怪我されました!」

「えっ!?ええええええ!!!?」
 僕はもう驚きで心臓が止まりそうになった!!

「そんな!?ほほ、本当に!?そんなものを…ニーナ王女様が…マリアンネ様に!?」

「王女様はあの日絶対に食せとのご命令でしたのでお嬢様は口になさいました。王族の命令ですからね…。

 幸にして飲み込む前でしたから何とかなりましたが自分が虫ガラス入りケーキを食べたなどは決して他言無用…あ、真意はジークフリート様が王女様自身に確かめてみる事ですよ?」
 とシモン様は言い、

「私からは以上でございます、どうされるのか、信じるか信じないか実行するかしないかはジークフリート様のお心のままに!」
 と言い、まるで挑戦する様な目つきで礼をして去って行く…。

 僕はしばらく考えた。まさか…ニーナ王女がそんなものをお見舞いに贈ったのか!?でもマリアンネ様が嘘をついたかニーナ王女が嘘をついたのかという話になる。

 しかも実行しないと婚約破棄はクリアできないし、した所で王女様がそんなことしてなかったら僕は不敬罪で処刑!?

 どうしよ!!
 で、でも…グレゴールの為にも…僕は死んでも天国から友人の幸せを願えばいいけど…もし…王女様にこの事を確認して少しでも挙動不審な態度をしたら…真実だと言うことになる……信じたくないけど王女様が本当にマリアンネ様にそんなケーキを贈ったと…僕ならそんなものを口にしたら…

 と想像しても吐きそうになる。マリアンネ様は…いつも堂々となさり…そう言えば嘘などつかない様な方だ。皆は悪魔令嬢と噂するけど…彼女はそんな事気にもしない強い方だ。

 ……。本当に食べて怪我なさったのかも!僕があの日…王女様を連れてこなければ怪我する事にならなかったのかも!?また僕のせいでマリアンネ様怪我しちゃった!!
 罪悪感がドスドス来る!!

 そして僕はニーナ王女に口汚い言葉とマリアンネ様の件を問いただすことにした。条件の為とは言えかなりキツいがとりあえず反応を見てみることにする。最悪死刑になってもいい!

 *

 そうして放課後ニーナ王女を呼び出した!にこにこといつもの様にニーナ王女はやってきた。従者は離れて控えさせ、会話内容は聞こえない様にしてもらった。


「お兄ちゃん!どうしたの?ニーナと二人きりで話したい事って?うふふ、お兄ちゃんの言うことならニーナなんでも叶えてあげよっかな?」
 と可愛くベンチの横に座りいつもみたいにベタベタしてくる。

 僕はいつもなら頭を撫でてあげたりするけど今日はグイと突き放し…ちょっと怒ったような目でニーナ王女を見ながら覚悟を決めた!

「…お兄ちゃん?」
 いつもと様子が違うのでニーナ王女はキョトンとしている。よし!言うぞ!

「……お兄ちゃんとか呼ばないでください…気持ち悪いです…。いつもいつもベタベタしてきて鬱陶しいのです!

 ………この我儘ブス!!
 王女様だから下手に出て我慢してるのに!今後僕に近付かないでください!!

 いいですか!?わかりましたね!?僕が愛してるのはマリアンネ様だけなんです!!」
 僕は言葉を荒げる事はあまりできなく、とりあえず拒絶の意を示すとニーナ様は泣きそうになり

「まぁ!お兄ちゃん…どうしてそんな酷いこと…まさか…マリアンネ様にそう言えって言われたのね!?だって優しいお兄ちゃんがそんなこと言うはずないもの!酷い方ね!マリアンネ様って!」
 とうるうるしながら言う。
 うっ!心苦しいけどこれは演技なのか次の言葉で…もし反応がなければ…。僕は拳を握ると…確認した。

「ニーナ王女様…あの日お見舞いに行った時にケーキをお持ちしましたよね。マリアンネ様が…美味しかったとお伝えしたくださいと…」
 そう言うと彼女はにこりとして

「良かったあ!食べてくれたのね!!ニーナのケーキ!」
 と言う。

「………嘘です…。本当はマリアンネ様は口内を怪我されたらしいのです…。虫とガラスの破片の入ったケーキを貴方は贈ったそうですね!!」
 そう僕が言うと一瞬だけニーナ様の表情が凍りつく様になったのを僕は見逃さなかった!

「ええ!?そんなぁ!ニーナはそんなこと…してないもん!マリアンネ様酷いわ!ニーナのこと嫌いなのかなぁ!?お兄ちゃんまさか信じてるの??」
 といつもの様な甘え声でニーナ王女は喋る。

「…僕は…マリアンネ様を信じます!ごめんなさい!今後僕に近づかないでください!」

「えっ!?ええ?待ってお兄ちゃん!!私そんな事しないわ!マリアンネ様の陰謀よ!出鱈目を言ってお兄ちゃんを混乱させてるだけよ!」
 と焦るニーナ王女様。

「だから僕は貴方様の兄ではありません!」

「そ、それは本当のお兄ちゃんじゃないことはわかっているわ!でも側に…」

「迷惑なんです!!誤解されるので!では僕はこれで!!」
 と拒絶し、僕は逃げる様に去った!!

 もしかしたらマリアンネ様の方が嘘を?結局真相はわからない。でもなんか今まで信じてたニーナ王女の一瞬の隙を垣間見て…僕に対する態度が演技みたいに思えてきたのだ。一気に何というか冷めてしまったというか、僕も妹と思い始めてしまった事を後悔した。

 マリアンネ様は見抜かれていたのだろうか?それなら以前から僕とニーナ王女が親しげにしていたのをどんな様子で見ていたのだろう?

 も、もしかして嫉妬してくれていたのかな??ああっ!そんな都合のいい事!マリアンネ様の様な高貴な方が僕の事を好きなはずないんだ!それにこれで第三の条件はクリアした!

 僕は…グレゴールとの友情の為にも婚約破棄しないとなんだから!と言い聞かせる。

 *

「畜生!!あのクソ女があ!!婚約破棄の条件でジークフリート様を騙しやがった!!嫌がらせに贈った私のケーキを逆に利用して!流石悪魔令嬢と呼ばれるだけあるわ!

 この私に楯突いたこと…後悔させてやるんだから!!」
 と私…ニーナ・フランクフルト・エーレンリーダー第四王女は馬車の中で全面対決を誓った!ジークフリート様をこの手に入れるまで絶対に諦めるものか!!




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