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三億世界物語 初期版

ササメ・ソーサ

プロローグ-Start of Story-

    僕の名前は想為蒼人ささめソート
どこにでもいる普通の人間…だと思う。

    僕は世界の旅人。
    僕が住んでいた世界は、普通の世界だった時代から時が経ち、人類の科学が大きく進歩し、あらゆる物がハイテクに変貌している。

    ...そしてこの世界にはもうふたつ、世界が存在する。
別の国や比喩ではなく、本当にこの星とは別の空間に別の世が存在するのだ。

    別の世界の存在は後程説明するが、その世界には現実世界には存在しない魔物、文明が存在し、人類に新たな冒険や発見、生活を授ける。

    もちろん、楽しい世界ばかりではない。凶悪な魔物がはびこる国、過酷な国も中には存在する。
    強大な魔物を倒したり、悪者を倒したり説得して世直しをするのが僕達の役目。しかしそれはあくまで道中でやる事であり、僕達の主な目的は[冒険]。

    僕はこれまでありとあらゆる世界を冒険して来た。沢山の人と出会い、交流を刻み、別れて来た。

    色んな出来事が起こった。辛く、悲しい出来事も。
それでも僕と、互いに信念を持った仲間達は、あの三つの世界を思うがままに進み続けた。

    その記憶を、僕が歩み刻んできた物語を皆さんに知ってもらうために、ここに僕の、僕達の冒険の記録を記そうと思う。皆さんにお楽しみ頂けたら幸いだ。

    ではそろそろ始めよう、僕の物語を。
    仲間と共に三つの世界を巡る、僕の物語を...

△▽△
 
   とある世の夜。

    木がポツポツと生えている、とある平原。
    丘の上には、一つの家が建っている。

   その丘に突如、空間の歪みが現れる。
    歪む空間の中心に魔力が集まり、やがてそこに、空間の[穴]が現れた。

    その[穴]から、一人の青年が飛び出し、家が建つ丘に着地した。

    その青年は髪や瞳が青色に染まっており、武装が施された青いボタンパーカーに紺色のズボンと、青が目立つ服装を着こなしている。

    青年は肩に掛けられたショルダーバッグから手のひらサイズの物を二つ取り出した。
    青年が取り出した物の持ち手の部分を掴み、強く振った。
    すると先端部分が伸びて、一つは[刀]、もう一つは[剣]の形の鞘になった。
    青年は[剣]の鞘を背中に、[刀]の鞘を腰に取り付けた。

    青年は家が建つ丘を歩き始めた。
    家以外何も建っていない丘を下りて、木々は生えている平原を何も言わずに歩く。
    住民や動物は見あたらない。聞こえるのは風の音だけ。

    青年は夜の中を十数分歩き、平原の中心に止まった。周りには大きな木以外何も無い。

    青年は大きく深呼吸をして、眼を閉じる。
    そして背中に手をまわし、[剣]の持ち手を握り、鞘から[剣]を出した。

    青年は眼を開けて、静かに呟いた。

「...出てきな。」

    すると青年の後方から、大きな光が現れる。
ノイズのような光が、大きな恐竜の形を作る。
     やがてノイズの光は恐竜の実態を生み、巨大なティラノサウルスが姿を表した。

「ギャアアアアアアア!!」

    ティラノサウルスが夜の平原に叫びをあげた。
    ここまで大きな叫びをあげたら、住民は驚いて外を見るはずだが、人間はおろか動物一匹すら姿を見せない。

    ティラノサウルスは生物が一匹も見あたらない平原の中で、青年の姿を見つける。
    獲物を見つけたと言わんばかりに青年を大きな眼で睨み付けた。

「グルルルルル...!」

    その人間が通常の人間であれば、ティラノサウルスの姿に恐れおののき、逃げる姿勢を取るはず。

     しかしその人間...青年はティラノサウルスの姿に全く恐れる姿勢を見せない。
     それどころか青年は、睨み付けるティラノサウルスに対して、青き眼差しで睨み返したのだ。

    通常の人間が恐れるティラノサウルスに対しても、全く引けの体制を取らない青年。

    それもそのはず、ティラノサウルスをその場所...その[世界]に呼び出したのは、ティラノサウルスを睨み返す青年その者なのだ。

    ティラノサウルスは自分に対して睨み返す青年の姿に驚きの表情を見せる。しかしそこで引けば、人々を蹂躙する恐竜の名折れだ。

    ティラノサウルスは青年に対して、攻撃体制を取った。

「ギャアアアアア!!」

    青年は、今にも噛みついてくるティラノサウルスに対して、剣を構える。

    青年の瞳が、蒼い光を灯す。
    それに反応するように、剣の刀身の中心が蒼く光り出した。

    互いに構えを取る。
    そして青年が、言葉を告げる。

「...さあ、

始めようか。」

    それは、強き者の戦いを告げる言葉。

    自分の運命と戦う若者の物語が、始まろうとしていた。

    三億世界物語、開幕。

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