俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

御曹司とコスプレの女神【8】

 夕方、打ち合わせから戻った駿がスイートルームにやってきた。

「ただいま戻りました」

「お疲れ様です」

「無事終わったか?」

「まあ、無事というか大変なことになりそうだ…」

 駿は、仕事からプライベートモードになる。顔には疲れが滲む。

「芹人気か?」

「支社長もイベント責任者も、芹奈ちゃんと言ってたよ」

「はあ?そんなにか?」

「フランスでは、幅広い世代で人気だ。暁の婚約者として発表したいと言ったら、イベントの最後にしてくれって」

「発表自体は問題ないんだな」

「成宮さんのお陰で、発売の宣伝効果は更に上がりそうだ。入場券はすでに売り切れているんだが、空港に現れたことがもう話題になっていて、問い合わせが相次いでいるようなんだ」

「ご迷惑掛けてないですか?」

「迷惑だなんて。きっと新城堂史上、最大の売上になるかもしれません」

「芹、くれぐれも明日は一人にならないでくれ」

「うん」

 この後、夕食に三人で出掛けたが、オフィススタイルの芹はバレずに済んだ。ただ、周りを楽しむ気分ではなく、少し街並みを見た程度で、早々にホテルに戻った。

 イベント当日、ホテルから衣装を着て出ると目立つため、衣装を持参し向かう。もちろん芹は昨夜の外出と同じ、オフィススタイルだ。

 車が会場に着くと関係者入口には、支社長とイベント責任者の姿があった。

 先に降りた駿が挨拶をしているが、二人の視線は後部座席の扉に注がれている。

 苦笑しながらも駿が扉を開けた。

 暁の姿を見て、二人は姿勢を正す。

「本日は遠いところお越しいただきありがとうございます」

「ああ。よろしく頼む」

 暁の返事を聞いた二人は、また後部座席に視線を向ける。立場のある人間が、あからさまに楽しみにしている表情を実際目にすると、呆れと同時に驚く。そして、車に向かって声を掛ける。

「芹」

「は、はい」

 出てきた、眼鏡姿の芹を見て、二人はポカンとする。

「「…」」

「今日は、よろしくお願いします」

 英語は大学で専攻していたので、日常会話は喋れる。

「よろしく、ええっと…芹奈ちゃん?」

「あっはい」芹が眼鏡を外した。

 次の瞬間、「「芹奈ちゃ〜ん」」といい歳をしたおじさんが絶叫した。

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