俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

新城堂の噂の女神【14】

 くたくたでよく寝ている芹の左手の薬指を見てニタニタしてしまう。芹本人は、手に入れた。あとは…

 芹を寝室に残し、和室に行く。窓の外は日が暮れて、ライトアップされている。明るい時とは、また違う趣がある。

 フロントからは、あと十分ほどで準備に伺うと連絡が入った。

 準備で人の出入りがある前にと、暁はスマホを取り出し、懐かしい電話番号を表示した。

 まだ使われていることを祈り発信した。

 コール音が響く。『現在使われておりません』のアナウンスではないということは、そのまま使っている可能性がある。

 数コールのあと、訝しげな返事が返ってきた。

「はい?」

「成宮剛さんの携帯ですか?」

「そうだが…」

「新城です」

「なっ、なんで?」

「スマホに番号が残っていたから、ダメ元で掛けてみた」

「何のようだ?」

「明日、夕方にでも成宮家にお邪魔していいか?」

「何しに…」

「それは明日」

「嫌な予感しかしないが、芹に関係があることだろう?」

「ああ」

「両親に伝えておく。芹を泣かしてないだろうな?」

「もちろんだ」

「じゃあ、明日待ってる」

 芹の実家に挨拶に行くことも、プロポーズの計画の一部だ。

 ちょうど電話が終わった頃に、食事が運ばれて来た。目にも鮮やかな創作和会席が和室にある大きなテーブルに並ぶ。

 ゆっくり寛げるようにと、デザート以外が全て運ばれた。

 全て料理が並んだところに、支配人が入ってきた。

「失礼いたします」

「どうぞ」

「新城様、この度はおめでとうございます」

「ああ」支配人には、話が伝わっているようだ。

「こちら、細やかではございますが、当旅館からのお祝いでございます」

 クーラーに入れられたシャンパンが置かれた。

「お気遣いありがとうございます」

「こちらこそ、大切な日に選んでいただき感無量でございます」

 両親と長い付き合いの支配人からの言葉に、素直に嬉しく思う。こうした気持ちをあじわえるのも、芹と出逢えたからだと感謝する。

「ではごゆっくりお過ごしくださいませ」

 芹の姿が見えないことに触れないところも、さすが支配人だと言える。

 まあ、事実はバレているだろう…

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