俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

新城堂の噂の女神【11】

 案内された部屋は、離れの中でも一番高級な部屋だ。この部屋は、普段から予約は取らない。今日の暁のように、VIPのお客様からの突然の予約に対応する部屋なのだ。

「どうぞ」

 支配人が開けてくれている扉から入り、芹は絶句する。目の前一面がガラス張りで立派な日本庭園が広がる。

「……」

 広々とした和室に寝室が二部屋、簡単なキッチンとダイニングがある。

 更には室内に檜風呂の温泉があり、日本庭園が見える露天風呂に繋がっている。

 完全プライベートの贅沢な空間だ。

「お食事は何時にご用意いたしましょうか」

「そうだな。7時頃にしてもらおうか」

「承知いたしました。ご準備の十分ほど前に連絡させていただきます」

「ああ。よろしく」

 支配人が出ていっても芹は呆けている。

「ボ〜ッとしてどうした?」

「えっ!?あっ、あれ?支配人さんは?」

「もう出ていったぞ」

「えっ!もう、圧倒されすぎて。こんな素敵な旅館初めてです」

「喜んでもらえたなら良かった」

 暁の表情も柔らかい。和やかなムードが流れる。

「夕食まで時間があるから、散歩でもするか?この辺りは、宿泊者しかいないから安全だ」

「行く!」

 一度フロントのある本館に戻り、旅館周辺の地図を貰った。散歩コースやハイキングコースが整備されている。

 暁が以前来た時よりも、ハイキングコースが整備され、ハイキング目当てで訪れるお客さんも増えたらしい。

「ご存知の通りこの辺りは山奥の自然しかないところなんですが、人気スポットがあるんですよ」

「そんなのあったっけ?」

「少し前に出来たんですが、SNS映えするとかで、一気に話題になりまして」

「へぇ〜」

「ここです。ぜひ行ってみて下さいね。今日は、若いお客様が少ないので、人は多くないと思います」

 地図を指さしながら丁寧に教えてくれるフロントスタッフからは、高級旅館の教育が行き届いていると感じる。

「ありがとうございます」芹は笑顔でお礼を言う。

 暁が自然に芹の手を取り歩き出す。

 スタッフは、二人の後ろ姿を見送りながら見惚れる。かなりの身長差カップルだが、イケメンと愛嬌のある可愛さを感じる女性。

 芹がコスプレをしないナチュラルな素顔は、年より若く見え可愛いのだ。

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