俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

新城堂の噂の女神【4】

 日が経てば、噂は忘れ去られるだろうと思っていた。ところが駿の予想に反して日増しに話が大きくなっていく。

 とうとう週刊誌から問い合わせが来るほどだ。

 イケメンで御曹司というだけで、世間の注目を浴びるが、今までは一切女性の影がなくつけ入る隙もなった。

 ところが、新城堂から始まった噂は、瞬く間に広がりをみせている。

「はい」

「稗田室長、週刊未来から取材依頼です」

 秘書課から駿に連絡が入る。基本暁の前室で仕事をしているが、連絡は秘書課から回される。秘書課では、室長という立場で重役秘書達を束ねている。駿の仕事は、暁のお世話だけではないのだ。

「内容は?」

「社長の女神についてです」

「断って下さい」

「はい」

 ゲームに関する取材なら、宣伝を兼ねて受けるのだが、暁のプライベートを答える必要はない。芸能人でもないのに、常に注目されている。

 最近は、噂の真相を探ろうと、マンションの近くまで記者が張っている姿を見かける。

 更に厄介なのが、勘違い社長とご令嬢達だ。

 アポの内容はもちろん仕事の話なのだが、なぜか来社されると社長は普段から連れている秘書ではなく、取ってつけたようにお飾り秘書を連れてくる。

 今回も受付から案内されて、最上階の応接室までですやって来た社長は、化粧が完璧なスーツではなくワンピースを着た自称秘書の娘の姿。

「いらっしゃいませ」駿は内心溜息だ。

「…」暁は、最早挨拶すらしない。

「やあやあ、先日発売されたソフトも好調なようで何よりだ」

「ありがとうございます」

「すっごく面白くて、ハマっちゃいました〜」

 突然話に入ってくる娘。いや秘書…

「それはお買い上げありがとうございます」

 ソファーに深く座るふたり。普通は秘書は社長と並んでは座らないだろう。完全に娘でお客様になっている。

「で?今日はなんだ?」

 暁が初めて発した言葉は冷たい。だが、空気の読めたい娘は気にすることなく続ける。

「あの〜」上目遣いがあざとい。

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