俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ピンチを救う女神【9】

「新城堂の社長自らお出ましとは状況はよくないんだな」

 長年の経験から、何もかもお見通しだ。取り繕ってもしょうがない。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 暁と駿は、言い訳もせずとにかく頭を下げる。

「ここで頭を下げられてもな。とにかく中に入れ」

「はい。お邪魔します」

 工場内の応接室に案内された。田舎の工場は年期が入っているが、綺麗にされている。

「で?どうなんだ?」

「三日で何とかと思っています」

「三日…お前達にとっての三日と、儂らが製造するギリギリの期限の三日は全然違うんだぞ?儂らが三日待ってくれと言っても承知してもらえないだろ?」

 確かに、商品が三日遅れると、発売日に間に合わない。開発とは違って、実際に商品を製造する工場には、一分一秒を無駄に出来ないのも理解できる。

「今回は、完全にこちらのミスです。だが、新城堂として、発売日を変更する選択肢は今のところありません。世界中で待っている人がいるんです」

「本当に三日だな?三日後の昼には何とかしてくれ。さすがに、午後から製造に入らないと」

「わかりました」

 ところが…

 三日後、あと少しの所までは来ているが、完成には至っていない…

 みんな、徹夜続きで疲れがみえるが、何とか気力を振り絞って作業を続けていた。

 この日の午後から製造に入りたいと言っていた香田社長への連絡は、あと少しで完成しそうだと、粘っていたら夕方になっていた。
 
 駿が慌てて工場に連絡を入れた。

「新城堂の稗田と申しますが、香田社長はいらっしゃいますか?」

「香田でしたら、午後から外出しております」

「そうですか…戻られたら新城堂の稗田まで連絡をいただけますか?」

「伝えておきます」

 香田社長は捕まらず、謝罪は持ち越しになった。

 その頃エントランスでは…

 受付の前には年配の男性がいた。

「新城社長に会いに来た。案内してくれ」

「新城とアポはございますか?」

「いや。香田と言ってもらえたらわかるはずだ」

「アポがなければ…」

 問題があった受付が総入れ替えになってから、初めて訪れたオフィスビル。もちろん香田社長と面識のある者はいない。

 暁をはじめ今回のメンバーもまさか香田社長が来るとは考えもしていなかった。


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