俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ピンチを救う女神【7】

 開発担当部長から質問が投げかけられる。

「これは、ゲームの最初から出てるんでしょうか?」

「ちょっと待ってくれ」

 暁がどこかに電話を掛けている姿を、皆が見守る。

「教えてほしいんだが、あの画面が出だしたのはいつからだ?ああ。ああ」

 誰に電話をしているのかさっぱりわからない重役達。名取だけが、電話の相手が芹だとわかっている。

「わかった。ああ、ありがとう」

「「「…」」」

 優しい声でお礼を言い電話を切る暁にも衝撃を受けるが、そこを突っ込んで聞いている余裕はない。しかも、発売前のゲームを出来るのは、暁の自宅以外は考えられない。

 暁がいない部屋に、入れる人物イコール相当親しい人物だとわかる。

「ゲームを進めて、後半に入ってからだそうだ」

 色々聞きたいことは、一先ずおいておき話し合いがなされる。

「発売日はずらせません。そんな事になったら、損失は計り知れない」

「デバッグはどれくらい掛かりそうだ?」

「一週間と言いたいところですが…」

「それだと製造が間に合わない。今でも余裕ないんだ」

 さすが、責任者の集まりだ。次々に話が進む。

「名取くんのところの技術者は何人貸してもらえる?」

「うちは、今は三人なら…」

「製造工場は、今回はどこでしたか?」

「ああ、香田社長の所だ」

 ここにいるメンバーでも実際にどこで製造されているか知らない者もいる。

「「「香田社長かぁ…」」」

 みんなが口を揃えて言うには理由がある。新城堂のソフト製造工場の中では、老舗で一番信頼が出来るのだが、とにかく社長の香田社長が厳しいのだ。

 完璧な仕事をしてくれるが、完璧を求められる。当たり前の事だが難しい。特に今の若者には、気難しい香田社長に苦手意識を持っている者も多いのだ。

「とにかく、お願いするしかない。香田社長のところなら、間に合う可能性が高いって事だ」

「申し訳ないが、デバッグするメンバーは今から来てもらって、三日で何とか修正してくれ」

「香田社長には、駿から三日待ってくれるように頼んでくれ。完成した物は混ざらないように、漏洩しないように、破棄の手配をしてくれ」

「承知しました」

「他の者もそれぞれ協力してくれ」

「「「承知しました」」」

 ここで一旦解散となった。


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