俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ピンチを救う女神【5】

「芹に何かあったのか?」

「いや、成宮さんじゃなく、新城堂の危機だ」

「はあ?どういうことだ?」

「暁がデスクに置いて行ったスマホが鳴ってたから、見たら成宮さんだった。珍しいから何かあったのかと思って出たんだ」

「ああ」

「例のソフトにバグがあると…」

「はあ!?」

「とにかく、暁の部屋に行って確認するぞ」

「ああ。急ごう」

 片付けもせず戸締まりだけして急ぐ。地下に下りると車が待っていた。動転していたとはいえ、車は必要だ。駿が、いつでも乗れるように、暁が戻って来る前に手配していた。

 車が信号で止まるのももどかしい…

 車内では、暁のピリピリとした空気が漂っている。

 車がマンションのエントランスに着き、ふたりは飛び出すように車からおり、エントランスを走り抜ける。

 コンシェルジュから挨拶されるが、返す余裕もない。エレベーターまで突っ走る。

 エレベーターが一階に到着するまでの時間ももどかしい。

 ようやく自宅に辿り着き、仕事部屋に急ぐ。

 『バンッ』「芹!」

 勢いよく扉を開き名前を呼ぶ。仕事部屋は防音のため、扉が開くまで全くわからない。

「あっ、おかえりなさい」

 芹におかえりと言ってもらうと、いつも嬉しい気持ちになるが、今日は余裕がない。目線は、芹がプレイしていた大画面へ。

 その場面で一時停止を押して置いていた。

「「なっ!?」」

 二人は画面を見て絶句する。いくら大画面に映したとはいえ、あってはならないバグ。

「駿、これはダメだ」

「ですね。工場は明日の朝は止めてます」

「今からデバッグして間に合うのか?間に合わせるしかないんだが…」

「どうしましょう。今から緊急招集しますか?」

「もちろんだ。発売日を延期するわけには行かない。もしそんなことになったら、うちの信用も株価もちょっとやそっとじゃ取り戻せなくなる」

「ですね」

「芹、申し訳ないが、俺達は社に戻る」

「はい」

「今からメンバーが集まるまで時間も掛かるし、出来ればバグがどの辺りまで続くかもう少しプレイしてもらえないか?」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品