俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

ピンチを救う女神【3】

 暁の仕事部屋で、シンジョーテックが開発し、新城堂の最終チェックまで通過し、あと一ヶ月程で発売となるゲームを大画面で試していた。

 実はこのゲームは、大人気シリーズで今回か第三弾になる。

 世界的に知られる人気キャラクターが冒険に出るのだ。発売前から予約が殺到、すでにCMも流れている。

 日本で先行発売し、次にアメリカ、ヨーロッパと順に発売されるのだ。

 そんなゲームを先に自宅でプレイできるのは、社長宅くらいだろう。あとは、社内の限られた人物で最終チェックをした筈だ。

 集中して楽しんでいると、何か違和感を感じた。気のせいかと続けていくと、ゲームの後半でバグらしき箇所を見つけた。画面の端の方がほんの少しだが、バグっているのだ。

 一般家庭くらいのサイズの画面で改めてプレイするとわからない。

 ただ、世界中で愛されている新城堂のゲームは、今回芹がプレイしていたような大画面でプレイする人もいるだろう。

 今からデバッグして間に合うのだろうか?デバッグとは、バグの原因究明や取り除く作業のことだ。ソフトが完成するまでには何度も繰り返し行われている。このゲームも完成までに何度も繰り返された。 

 芹はスマホを手にどこに連絡するべきか悩む。もうすぐ時計の針は21時になろうとしている。

 シンジョーテックは、今日は開発中の急ぎの案件がなかった。すでにみんな帰った後だろう…

 暁は、いつも早くても21時は過ぎる。まだ会社だろうか?

 意を決して、暁の電話に掛けてみる。

 芹から掛けることは珍しい。普段から仕事中に用事があれば、メッセージを送るようにしているのだ。

 『トゥルルル、トゥルルル…』

 五コール程鳴らしたが出ない。切ろうかと画面をタップする瞬間だった。

「もしもし」

「あっ、お疲れ様です。成宮です」

「お疲れ様です。すみません。暁は今、来客中でして…何か急ぎですかね」

「急ぎというか…」

「はい」

「来月発売のソフトありますよね?」

「はい。第三弾ですよね?」

「それです。それなんですが…」

「はい…」言い淀む芹に駿は嫌な予感がしてきた。

「通常の家庭サイズの画面でプレイすると問題ないのですが、大画面でプレイすると後半で、ほんの少しですが画面の端にバグが…」
 

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