俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

過去のライバル【6】

「芹、うちに帰って来る気はないのか?」

「ここから通えなくはないけど…」

「けど?」

「通勤の時間がもったいない」

「そうか…かと言ってストーカー被害に遭ったばかりの娘を、引っ越ししたからといって一人にするのは心配だ…新城さんのところのセキュリティはしっかりしてそうだな」

「父さんまさか!?」

「ただ同棲をしたいと言うなら、もう少し付き合ってからでもいいんじゃないかと言うが、今回は芹の安全が最優先だ。新城さんの元なら安心なんじゃないか?」

「でも!」

「人は成長するものだ。以前の新城さんを知ってる剛の気持ちもわかるが、俺は今の新城さんが嘘を言っているようにはみえないが…」

「…」

 確かに剛の知っている暁とは雲泥の差で、芹を見る目が優しいことにも驚いている。

 だが、やはり可愛い妹のこととなると、不安なのだ。

「芹、何かあればうちに帰って来るんだぞ?」

「何かなんてありません。俺が全力で守るんで」

 自信満々の暁を前に、これ以上は反対できない剛だった。

 兄は渋々だったが、なんとか芹の実家で承諾をもらえた。

 話がついてホッと一息ついたところで、ここからは芹の母の独壇場だった。

「ねえねえ。私も暁くんって呼んでいいかしら?」

「由希子!」「母さん!」

 父親と兄の声が響く。

「何よ?娘の彼氏をずっと新城さんって呼ぶのは可笑しいでしょう?廉くんでもないし」

「「…」」

 普段からは母の順応性の良さはしっているが、さっきまで二次元で呆けていたのに、もうしっかり現実に戻り楽しそうだ。

「それにしても、芹ったら旬くん旬くんって言ってたのに、廉くん似の人を選ぶなんて…」

「お母さん…」

 芹も母の発言に冷や冷やする。案の定、旬くんの名前が出た途端、若干暁の纏う空気が下がった気がする。抑えていて家族には伝わっていないが、嫉妬している顔だ。

「暁くんは、食べ物は何が好き?」「暁くん、趣味は何かしら?」

 母の質問攻めが始まり、父と兄だけではなく、芹まで呆れている。

 そこへ…

「遅くなりました」

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