俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

過去のライバル【2】

 中から紙袋を手に急いで出てきた和装の男性。芹にはキラッキラに輝いているように見えた。

「王子だぁ〜」思わず呟いてしまう。

「新城さん、お久し振りですね」

「ああ。いつもお世話になってます」

「何を仰る。こちらこそ、いつもご贔屓にしていただき感謝しております」

「変わらず人気ですね」

「お陰様で」

「今日は無理言ってすみません」

「とんでもない。大切な日にうちの和菓子を使っていただけるなんて光栄です」

 ここで、若旦那が芹に視線を移す。

「いつも新城さんにはお世話になってる長谷夕輝です。これからもご贔屓に」

 ニコッと笑う若旦那に、並んでいる客達からは歓声があがる。

「成宮芹です。よろしくお願いします」

 自己紹介しながらも、周囲からの視線がいたたまれない。暁と夕輝のツーショットはハピカレを思い出させる。

 芹の実家に持っていく手土産を買いに来ただけだが、ぐったり疲れてしまう。

 王子の人気は二次元でも、三次元でも不動だ。

 無事に手土産用の和菓子を受け取り目指すは芹の実家。

 車だと電車のように乗り継ぎがいらないので、普段より近く感じた。

 都会の真ん中の暁のマンションとは違い、閑静な住宅街に芹の実家はある。暁の実家のように高級住宅街ではないが、一軒一軒ゆとりのある造りの庭付きの家が続く。

 芹の生まれ育った街だと思うと感慨深い。

 住宅街の中でも、少し大きめの住宅があった。

「ここです。少し前に二世帯住宅にしたんです」

 玄関が二つあり、表札やポストも二つある。一軒ではあるが、全てを分けているようだ。

「こっちです」

 芹は右の玄関にあるチャイムを鳴らす。

「はい」

「お母さんただいま」

「芹、ちょっと待ってね」

 ガチャッと勢いよく切られた。

 暁は、芹の母親の声で落ち着いていた緊張が再熱する。思わず深呼吸して落ち着ける。

 『ガチャガチャッ』と今度も勢いのよい音が響き、勢いよく玄関扉が開いた。

「おかえりなさい〜」

 元気な小柄な女性が飛び出してきた。歳を取った芹の姿が想像できるほど、よく似た可愛らしい女性。


 

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