俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

急展開【9】

「お前…」

「何だ?」

「そんな気遣いが出来たんだな…」

「はあ?失礼だな」

 駿が驚くのも無理はない。今まで暁が女性に対しての優しさを見せたことがない。

「とにかく頼んだぞ」と言い捨て一方的に切った。

 暁の部屋に自由に出入りできるのは駿だけだ。困った時に頼むのも必然的に駿になる。

 電話を終えて運転席に乗り込んで芹を見ると、緊張から解放され疲れが出たのと、安心したのかうとうとしている。

 最初の警戒心が嘘のように、暁が安心できる存在だと言われているようで嬉しさが込み上げる。

 化粧はしていても、寝顔は幼く見える。眺めていると愛しさは増し、今すぐ抱きしめたいし、キスもしたい。更にはそれ以上のことも…

 ただ、今ではないと気持ちを抑え、起こさないように細心の注意をはらい車を走らせた。

 マンションに着いても起きない。

 助手席側にいき、扉を開けるが全く起きる気配はない。そっと抱き上げ最上階を目指す。

 最上階に着くと、エレベーターの音に気づいたのか駿がリビングから出てきた。

 暁に抱かれた眠る芹を見て、驚きで目を見開き固まる。

「あ、あ、暁が」思わず大きな声が出た。

「シ〜ッ」と暁に静止される。

「あっ、ああ。すまない」

 普段の駿からは考えられない動揺ぶりに、笑いそうになった。

「寝室に連れて行く」

「えっ?客室のベッドも準備出来てるぞ」

「夜、心配だから」

「…」

 寝室の方が心配だと思うが、一連の芹に対する暁を見ていると、大丈夫かと思った。

 優しく寝室のベッドに寝かせ、暁は名残惜しいが寝室を出て、リビングに戻った。

「どうだ?」

「ああ。全く起きない。車に芹の荷物があるんだ」

「後で運んで玄関に置いて置くよ」

「サンキュー」

「何か成長したな〜」

「はあ?」

「成宮さんと関わってから、急にまともになった」

「お前は失礼になってる」

「俺は嬉しいんだよ。暁に、人としての大事な感情が出せる相手が現れて。素の暁が、俺以外の前で出るなんて、一生来ないと思ってた」

 幼馴染だからこその言葉に、暁も素直に受け入れられる。この気持ちを大事にしたい。


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