俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

攻防戦【4】

 暁の後ろから現れた女性を見て駿はポカンとしてしまう。その間にも暁は芹を連れ、社長室に向かって歩きだしている。

「ちょっ、どういう事だ?」

 駿は、思わず疑問を口にした。

「何がだ?」

「な、な、成宮さん?」

「えっ?」

 突然名前を呼ばれ戸惑いの声を出してしまう。

「駿、取りあえず部屋に戻るぞ。話はそれからだ」

「あ、ああ」

 前回見た芹の姿と違いすぎて戸惑いしかない駿も、素直にあとをついて行く。

 豪華な社長室だが、すっきり片付けられている。芹は、初めて入る社長室に動じることもなく、勧められたソファーに素直に座った。

「改めて、成宮芹だな」

「違いますって言っても、もう確信してるんですよね」

 転けた時のおどおどした様子は微塵もない。暁は、面白いものを見つけた子供のような高揚感が湧き上がる。その横で駿は、未だに理解しきれていない表情になっている。

「ああ」

「…サイアク」完全に心の声が漏れている。

「…」「ブッ」

 こんなにあからさまに嫌がられた事のない暁と、暁に堂々としていて媚びない女性を初めて見た駿では反応が違う。

 その時…

 『ピコンッ』と芹のスマホの通知音が鳴った。

「あっ」

 ここで芹はスマホの存在を思い出し、暁の存在を一気に消し去り手元を見る。

「あぁ〜サイアク〜旬くん〜」

 男性の名前を言いながら落胆する。

「シュン!?」

 暁は嫉妬と怒りと驚きの声をあげ、駿をギロッと睨む。

 睨まれた駿は、自分を指差し首を左右に振り無実を訴える。

 芹は、スマホ画面を見たまま、項垂れている。

「おい!」 

「…」

「芹!」

「えっ?私?」

 すっかり自分の世界に入っていた芹は、今の状況を思い出した。

「シュンて誰だ?」

「…社長に関係あります?」

「暁だ」

「…??何が?」もう、敬語すらなくなりつつある。

「俺の名前だ」

「はあ、そうですか」


 

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