俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

攻防戦【3】

 ごった返していたエントランスの人が疎らになりだした。

 チャンスとばかりに暁は、女性に気づかれないように足音を消して近づいた。逃げ道を塞ぐかのように立った暁が言葉を発した。

「芹、見つけた」

「えっ?ギャッ」

 いきなり声を掛けられ驚いたと同時に、顔を上げ声の主を見てあからさまに嫌な表情を出してしまう。

「歓迎されていないようだな」

「すみません。人違いです」

 何とか逃れようとするが、暁が立ちはだかり進めない。

「間違いないよな。成宮芹だな」

「…」

 芹は、あることに気を取られ油断した自分を後悔する。あれだけ、警戒していたのに…万が一自分が探されていたらと思っていたのに…

「ここでは目立つ。一緒に来てもらおうか」

「お断りしたら?」

「そうだな。明日からも待ち伏せして、大勢の前で声を掛けようか?」恐ろしい脅しをする。

 今は、人が引いたあとで良かった。

 暁に従うしかない状況だ。いやいやだがついて行く。堂々と歩く暁と、その後ろをトボトボ歩く芹。項垂れ小さくなる。

 逃亡の機会を伺うが、後ろに目でもついているかのように隙がない。

 乗ったことのないエレベーターに乗せられる。小さい箱の中にふたり。張り詰めた空気に芹はため息が出そうになる。

 そしてなにより、暁の気配に気づかないほどスマホに集中していた。そのスマホは、中途半端のまま画面を消してしまった。続きをしたい…

「おい」

「…はい?」考え事をしていた芹は反応が遅れる。

「俺を無視して考え事とは余裕だな」

「無視したつもりは…」

 あっという間にエレベーターは目的地に到着した。そして、開いた扉の前には駿が待っていた。

「暁、今日は早かったな。やっと諦めたか?」

 駿からは、暁の陰になって芹は見えていなかった。

「あ?諦めるわけないだろ?芹、行くぞ」

「えっ?」駿が驚きの声をあげ、暁の後ろを見る。




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