俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

せいとも

出会い【3】

「俺を知らない?そんな訳ないだろう?このオフィスビルで働いてるよな?」

 若干言葉はきつく感じるが、暁からは期待が伺える。

「は、はい。あの〜眼鏡が…」

「はあ!?」

 暁は素っ頓狂な声を上げる。いつも冷静な暁には珍しい。

 駿は、先程から気づいていた女性の飛んでいった眼鏡を拾いふたりに近づいた。

「こちらでしょうか?」

「あっ、すみません。ありがとうございます」

 素直にお礼を言いながら眼鏡を掛けた女性の反応が面白すぎた。

「し、し、し、新城社長〜」

 絶叫がエントランスに響き渡った。本当に暁だとは、気づいていなかったようだ。

 大勢の前であの転け方は、面白すぎる。

 小動物のように、ちょこちょことした動きで立ち上がった女性は、かなり小柄なお人形のように可愛い子だった。だが、眼鏡を掛けた途端素顔が隠れると地味なイメージになる。

 そこからが、更に面白かった。

「新城社長、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。お見苦しいところを見せてしまいました。本当にすみませんでした」

 謝りたおしたと思ったら、ちょこちょこと森へではなく、エレベーターの方に走って逃げて行った。

 女性の去った後のエントランスには、微妙な空気が流れている。

 暁も驚きから呆然としていて、ハッと我に返った時にはもちろん女性の姿はなく、自分だけが注目を集めているのだから居たたまれない。

「皆さん、仕事に戻って下さい」

 駿がエントランス全体に聞こえる声で言ったことでみんなが散っていく。

「駿」

 暁の一言で、駿には伝わった。女性が誰かを知りたいのだ。そして、今の様子からすると悪いことではなさそうだ。

 ただ、女性の方は望んでなさそうだが…

「先に、オフィスに戻っていただけますか?」

「ああ」

 駿は、暁が専用エレベーターに乗り込むまで見送り、エントランスにある受付に戻った。

 受付でも目の前で繰り広げられている姿が丸見えだったのだ。来客がいないことをいい事に、先程の出来事を噂している。

「見た?あの子の転け方」鼻で笑っている。

「見た見た。私なら暁様の前であんな転け方したら立ち直れない〜」

「「アハハハハッ」」

「わが社の受付も質が下がったようですね」

「「えっ!?」」

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