嘘と微熱〜甘美な一夜から始まる溺愛御曹司の愛執〜
四章 甘い微熱/一、弱い自分【1】
季節は、クリスマスを控えた十二月上旬。
土曜日の昼下がりの街の雰囲気は、普段よりも浮かれているように見えた。
「これ、おいしいですね」
対面に座る山重さんが、ピザを一口かじって笑う。
「はい」
「友人に勧めてもらったんですけど、茉莉花さんにも気に入ってもらえてよかった」
彼との食事は相変わらず砂を噛んでいるようだったけれど、そんな感覚を流し込むがごとくアイスティーを飲み、繕った笑顔で本音を隠した。
なんとか山重さんからの誘いをかわしていたものの、とうとう断るための言い訳も尽き、今日は二週間ぶりに彼と会うことになった。
休日に会うのはお見合いの日以来で、なんだか変な感じがする。
私の本心なんて知らない彼は、今日も優しい雰囲気を纏っていた。
(これも演技だなんて……)
私に向けられる笑顔も気遣いも、山重さんにとってはすべて重役の椅子に座るため。
彼の目論見がわかって腑に落ちた反面、ますます結婚への不安は大きくなった。
山重さんはきっと、私を大切にしてくれるだろう。
女性との縁を切るつもりはないのだろうけれど、私が大人しくしていれば表面上では優しい夫を演じ、いい家庭を築こうとするに違いない。
誘いを断り続けていた私に嫌な顔ひとつせず、むしろ会って早々に『今日はお会いできて嬉しいです』と微笑んでくれたくらいだ。
不満があっても上手く隠し、私の機嫌を損ねないようにするつもりなんだろう。
(でも、それって仮面夫婦だよね……)
オミくんなら、私を本当の意味で大切にしてくれる。
私が間違ったことをしたらたしなめてくれて、不満はふたりで話し合って、少しずつでも向き合えるように努力してくれる。
そして、優しいキスをして、慈しむように抱いてくれる。
昨夜もそうしてくれたように……。
(……って、なに考えてるの。今は山重さんといるのに……)
油断すれば、彼のことで頭がいっぱいになる自分自身を叱責しても、心は目の前にいる人に向かない。
そんな気持ちでいることが、さらに心を重くする。
(みんな、楽しそうなのに……私だけが違う世界にいるみたい……)
店内にも窓の外にも恋人たちの姿が多く、目に映る人たちはみんな幸せそうに笑っているのに……。私だけが上手く笑えずにいる。
いっそのこと、なにもかもを捨ててしまいたい。
どうしたって消せないオミくんへの気持ちも、過保護な父の言いつけも、自分自身の感情でさえも……。
(……なんて、できるわけないのにね)
そんな衝動に駆られそうになったところで、苦笑を漏らす。
私の中にある〝父を悲しませたくない〟という思いが強すぎて、結局はこうすることしかできないのだから……。
土曜日の昼下がりの街の雰囲気は、普段よりも浮かれているように見えた。
「これ、おいしいですね」
対面に座る山重さんが、ピザを一口かじって笑う。
「はい」
「友人に勧めてもらったんですけど、茉莉花さんにも気に入ってもらえてよかった」
彼との食事は相変わらず砂を噛んでいるようだったけれど、そんな感覚を流し込むがごとくアイスティーを飲み、繕った笑顔で本音を隠した。
なんとか山重さんからの誘いをかわしていたものの、とうとう断るための言い訳も尽き、今日は二週間ぶりに彼と会うことになった。
休日に会うのはお見合いの日以来で、なんだか変な感じがする。
私の本心なんて知らない彼は、今日も優しい雰囲気を纏っていた。
(これも演技だなんて……)
私に向けられる笑顔も気遣いも、山重さんにとってはすべて重役の椅子に座るため。
彼の目論見がわかって腑に落ちた反面、ますます結婚への不安は大きくなった。
山重さんはきっと、私を大切にしてくれるだろう。
女性との縁を切るつもりはないのだろうけれど、私が大人しくしていれば表面上では優しい夫を演じ、いい家庭を築こうとするに違いない。
誘いを断り続けていた私に嫌な顔ひとつせず、むしろ会って早々に『今日はお会いできて嬉しいです』と微笑んでくれたくらいだ。
不満があっても上手く隠し、私の機嫌を損ねないようにするつもりなんだろう。
(でも、それって仮面夫婦だよね……)
オミくんなら、私を本当の意味で大切にしてくれる。
私が間違ったことをしたらたしなめてくれて、不満はふたりで話し合って、少しずつでも向き合えるように努力してくれる。
そして、優しいキスをして、慈しむように抱いてくれる。
昨夜もそうしてくれたように……。
(……って、なに考えてるの。今は山重さんといるのに……)
油断すれば、彼のことで頭がいっぱいになる自分自身を叱責しても、心は目の前にいる人に向かない。
そんな気持ちでいることが、さらに心を重くする。
(みんな、楽しそうなのに……私だけが違う世界にいるみたい……)
店内にも窓の外にも恋人たちの姿が多く、目に映る人たちはみんな幸せそうに笑っているのに……。私だけが上手く笑えずにいる。
いっそのこと、なにもかもを捨ててしまいたい。
どうしたって消せないオミくんへの気持ちも、過保護な父の言いつけも、自分自身の感情でさえも……。
(……なんて、できるわけないのにね)
そんな衝動に駆られそうになったところで、苦笑を漏らす。
私の中にある〝父を悲しませたくない〟という思いが強すぎて、結局はこうすることしかできないのだから……。
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