嘘と微熱〜甘美な一夜から始まる溺愛御曹司の愛執〜
三章 嘘の代償/二、鈍色の鎖【1】
『明日、お見合いするんだって?』
「え……? どうして知ってるの?」
『裕人から聞いた。さっき、久しぶりに飲んでたんだ』
いつも通りかかってきた電話で、オミくんはなんでもないことを話すようにお見合いの件に触れてきた。
日取りが決まった一週間前からずっと、彼に言うべきか言わずにいるべきか悩んでいたのに、思わぬところから耳に入ったらしい。
「珍しいね、お兄ちゃんと飲みに行くなんて……」
『今日はたまたまだよ。裕人と予定が合うことなんて滅多にないし、ゆっくり会ったのは半年ぶりくらいだったんじゃないかな』
「そうなんだ……」
友人関係とはいっても、ふたりが頻繁に会っているわけじゃないのは知っている。
だから、よりにもよって今日飲みに行くなんて……と思ってしまう。きっと、海外事業部が力を入れていたタカミステーションとの仕事が決まったからに違いない。
『茉莉花は気にしなくていいよ』
言い訳をするのもおかしい気がして、どう言えばいいのかわからずにいると、オミくんが私の気持ちを見透かすようにクスッと笑った。
『お見合いは最初から決まってたことだし、相手が自社の社員とはいえ、おじさんが先に話をしてたみたいだし、茉莉花が拒否して面目を潰すわけにもいかないだろ』
「オミくん……」
『それくらいのことはわかってるつもりだし、茉莉花はなにも気にしなくていい。その代わり、明日の夜は俺の家に来てよ』
「えっ……?」
彼が『準備ができたら連絡して』と勝手に話を進めてしまう。
オミくんに告白を通り越してプロポーズをされてから、半月と少し。
未だに返事ができずにいるのに、彼の様子はあまり変わらない。私を急かすことも責めることもなく、ただいつも通りでいてくれる。
そこに甘えてはいけないと思うのに、オミくんに流されるように毎晩の電話は続いていて、むしろ通話時間はどんどん長くなっていた。
『そろそろ寝た方がいいね。明日は早いんだろ?』
「う、うん……」
罪悪感、不甲斐なさ、はっきりしない自分自身に対する呆れ。
色々なものが混じっている私に、彼が『茉莉花』と呼びかける。
『好きだよ』
「ッ……!」
『明日のお見合いのときは、ずっと俺のことを考えてて』
甘く囁いたオミくんは、程なくしてなんでもなかったように『おやすみ』と言い残して電話を切ったけれど……。私の鼓動は瞬く間に早鐘を打って身体から力が抜けそうになり、甘い痺れを感じた耳からスマホを離せない。
(また、『好き』って……)
あの日から、彼は電話を切る前に甘い言葉を紡ぐようになって、そのたびに私はドキドキさせられている。
胸の奥がきゅうっ……と締めつけられて苦しいのに、甘美な囁きが嬉しくて。心臓が壊れたように脈打ち、鼓膜に残ったオミくんの声を何度も反芻してしまう。
そして、彼の言葉に身体の芯から熱くなり、眠れない夜を過ごしていた――。
「え……? どうして知ってるの?」
『裕人から聞いた。さっき、久しぶりに飲んでたんだ』
いつも通りかかってきた電話で、オミくんはなんでもないことを話すようにお見合いの件に触れてきた。
日取りが決まった一週間前からずっと、彼に言うべきか言わずにいるべきか悩んでいたのに、思わぬところから耳に入ったらしい。
「珍しいね、お兄ちゃんと飲みに行くなんて……」
『今日はたまたまだよ。裕人と予定が合うことなんて滅多にないし、ゆっくり会ったのは半年ぶりくらいだったんじゃないかな』
「そうなんだ……」
友人関係とはいっても、ふたりが頻繁に会っているわけじゃないのは知っている。
だから、よりにもよって今日飲みに行くなんて……と思ってしまう。きっと、海外事業部が力を入れていたタカミステーションとの仕事が決まったからに違いない。
『茉莉花は気にしなくていいよ』
言い訳をするのもおかしい気がして、どう言えばいいのかわからずにいると、オミくんが私の気持ちを見透かすようにクスッと笑った。
『お見合いは最初から決まってたことだし、相手が自社の社員とはいえ、おじさんが先に話をしてたみたいだし、茉莉花が拒否して面目を潰すわけにもいかないだろ』
「オミくん……」
『それくらいのことはわかってるつもりだし、茉莉花はなにも気にしなくていい。その代わり、明日の夜は俺の家に来てよ』
「えっ……?」
彼が『準備ができたら連絡して』と勝手に話を進めてしまう。
オミくんに告白を通り越してプロポーズをされてから、半月と少し。
未だに返事ができずにいるのに、彼の様子はあまり変わらない。私を急かすことも責めることもなく、ただいつも通りでいてくれる。
そこに甘えてはいけないと思うのに、オミくんに流されるように毎晩の電話は続いていて、むしろ通話時間はどんどん長くなっていた。
『そろそろ寝た方がいいね。明日は早いんだろ?』
「う、うん……」
罪悪感、不甲斐なさ、はっきりしない自分自身に対する呆れ。
色々なものが混じっている私に、彼が『茉莉花』と呼びかける。
『好きだよ』
「ッ……!」
『明日のお見合いのときは、ずっと俺のことを考えてて』
甘く囁いたオミくんは、程なくしてなんでもなかったように『おやすみ』と言い残して電話を切ったけれど……。私の鼓動は瞬く間に早鐘を打って身体から力が抜けそうになり、甘い痺れを感じた耳からスマホを離せない。
(また、『好き』って……)
あの日から、彼は電話を切る前に甘い言葉を紡ぐようになって、そのたびに私はドキドキさせられている。
胸の奥がきゅうっ……と締めつけられて苦しいのに、甘美な囁きが嬉しくて。心臓が壊れたように脈打ち、鼓膜に残ったオミくんの声を何度も反芻してしまう。
そして、彼の言葉に身体の芯から熱くなり、眠れない夜を過ごしていた――。
「嘘と微熱〜甘美な一夜から始まる溺愛御曹司の愛執〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
17
-
28
-
-
1,392
-
1,160
-
-
62
-
89
-
-
71
-
63
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
215
-
969
-
-
3万
-
4.9万
-
-
86
-
288
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6
-
71
-
-
17
-
188
-
-
17
-
58
-
-
2.1万
-
7万
-
-
450
-
727
-
-
27
-
51
-
-
24
-
4
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
27
-
2
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
42
-
52
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
35
-
56
-
-
2,534
-
6,825
-
-
51
-
163
-
-
14
-
8
-
-
89
-
139
-
-
40
-
55
-
-
31
-
124
-
-
218
-
165
-
-
614
-
1,144
-
-
1,000
-
1,512
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
614
-
221
-
-
265
-
1,847
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
32
-
38
-
-
25
-
6
-
-
398
-
3,087
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
83
-
2,915
-
-
62
-
89
-
-
31
-
39
-
-
1,301
-
8,782
-
-
183
-
157
-
-
18
-
124
-
-
164
-
253
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
26
-
37
-
-
116
-
17
-
-
2,860
-
4,949
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
104
-
158
-
-
2,629
-
7,284
-
-
42
-
14
-
-
33
-
48
コメント