嘘と微熱〜甘美な一夜から始まる溺愛御曹司の愛執〜
一章 はじまりはひとつの嘘/三、嘘で壊れた境界線【5】
しばらく放心したあと、ようやく整った息をゆっくりと吐いた。
「オミくん……」
「ん?」
私を抱きしめてくれていたオミくんが、優しい眼差しで私の顔を覗き込んでくる。
「わがままを聞いてくれてありがとう」
せめて彼に責任を感じてほしくなくて、精一杯笑ってみせた。
「茉莉花はバカだな。こんな風に傷つかなくてもいいのに」
傷ついてないよ、と呟いた言葉はすぐに消えた。
幸せな思い出が欲しかった。
この先の私の心の支えになるような、優しくて温かい記憶が欲しかった。
『茉莉花が泣いて叫んでも、きっとやめてあげない』
けれど、最初にそう言ったはずのオミくんは、濁流に呑み込まれたように激しかったけれど、私に触れる手も唇もずっと優しかった。
こんな幸福感は知りたくなかった。
甘美で幸せな行為を知ってしまった今、私は私の恋心と決別できなくなってしまったことに気づいたから。
後悔はしないと決めたはずだったのに……。
彼に愛されたい――と、欲深く願ってしまった。
「少し休むといいよ。あとで家まで送ってあげるから」
素直に頷いたのは、一分でも一秒でも長くオミくんの腕の中にいたかったから。
私たちは恋人にはなれないから、彼がこうして抱きしめてくれるのは今だけ。
これは、優しいオミくんがくれたオプションなのだ。
せめて朝まで一緒にいたい……とは間違っても彼の前では口にしてはいけない。
それに、父は私が家にいると思っている。
電話では『友人と食事に行く』と告げたけれど、父にこういう嘘をついたのはたぶん初めてだった。
本音を言えない私の、なけなしの反抗だったのかもしれない。
子どもじみたやり方に自嘲交じりの笑みが漏れたけれど、微睡み始めた身体も思考ももう働いてくれそうになく、今はすべてがどうでもよかった。
睡魔に抗わずに瞼を閉じれば、オミくんは私の髪をそっと撫でてくれた。
慈しむように触れる彼の手つきすら愛おしくて、胸の奥がひどく軋むのに……。心が痛みを感じながらも、意識は夢の中に堕ちていく。
「……本当に、茉莉花は俺を困らせてくれるよ」
思考が閉じる寸前に聞こえた声は、夢か現か……。
わからなかったのに、一筋の涙が零れて肌を伝った。
「オミくん……」
「ん?」
私を抱きしめてくれていたオミくんが、優しい眼差しで私の顔を覗き込んでくる。
「わがままを聞いてくれてありがとう」
せめて彼に責任を感じてほしくなくて、精一杯笑ってみせた。
「茉莉花はバカだな。こんな風に傷つかなくてもいいのに」
傷ついてないよ、と呟いた言葉はすぐに消えた。
幸せな思い出が欲しかった。
この先の私の心の支えになるような、優しくて温かい記憶が欲しかった。
『茉莉花が泣いて叫んでも、きっとやめてあげない』
けれど、最初にそう言ったはずのオミくんは、濁流に呑み込まれたように激しかったけれど、私に触れる手も唇もずっと優しかった。
こんな幸福感は知りたくなかった。
甘美で幸せな行為を知ってしまった今、私は私の恋心と決別できなくなってしまったことに気づいたから。
後悔はしないと決めたはずだったのに……。
彼に愛されたい――と、欲深く願ってしまった。
「少し休むといいよ。あとで家まで送ってあげるから」
素直に頷いたのは、一分でも一秒でも長くオミくんの腕の中にいたかったから。
私たちは恋人にはなれないから、彼がこうして抱きしめてくれるのは今だけ。
これは、優しいオミくんがくれたオプションなのだ。
せめて朝まで一緒にいたい……とは間違っても彼の前では口にしてはいけない。
それに、父は私が家にいると思っている。
電話では『友人と食事に行く』と告げたけれど、父にこういう嘘をついたのはたぶん初めてだった。
本音を言えない私の、なけなしの反抗だったのかもしれない。
子どもじみたやり方に自嘲交じりの笑みが漏れたけれど、微睡み始めた身体も思考ももう働いてくれそうになく、今はすべてがどうでもよかった。
睡魔に抗わずに瞼を閉じれば、オミくんは私の髪をそっと撫でてくれた。
慈しむように触れる彼の手つきすら愛おしくて、胸の奥がひどく軋むのに……。心が痛みを感じながらも、意識は夢の中に堕ちていく。
「……本当に、茉莉花は俺を困らせてくれるよ」
思考が閉じる寸前に聞こえた声は、夢か現か……。
わからなかったのに、一筋の涙が零れて肌を伝った。
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