運命の赤い糸が引きちぎれない

泉野あおい

5章:13m

 私は次の日、すぐに直さんに連絡を取った。
 連絡先は採用のときに念のためにと教えられて知っていたのだけど、自分から連絡したことはなかったし、まさかこんなに早く連絡しなければならなくなるとは思わなかった。


 連絡してみると、今日は家にいると言われて、私はすぐに直さんのマンションに向かう。
 昨日のデートの時に部屋から出て気づいたけど、直さんのマンションは、以前紹介してもらった寮として使っているマンションの最上階だった。

 玄関チャイムを押すと、中から直さんが笑顔で出てくる。

「よもぎから連絡もらえるなんて嬉しいな。ちょうどよかった、服もクリーニングから返ってきたよ」
「直さん、エマージェンシーなんです。ちょっといいですか」

 直さんは、もちろん、と笑い、私は周囲をきょろきょろすると素早く直さんの部屋に入った。
 ここは同じ病院勤務の人ばかり住んでいるので、見たられたらまた面倒なことになりそうだと思ったからだ。


 玄関に入るなり、直さんは中に案内しようとしたけど、私は首を振って固辞する。
 玄関で立ったまま、自分の首の後ろのキスマークを指さし、直さんを睨んだ。

「まずこれ! これ、直さんですよね! いつ、どうやってつけたんですか! 勝手にこんなものつけて!」

 私が怒って言うと、直さんは、あぁ、と呟く。そして、目を細めてなんでもないように微笑んだ。
 
「よもぎが酔っぱらって吐いて寝ちゃったとき、着替えさせたって言ったでしょ。ついでにつけておいた」
「なんのついでですか!」

(着替えさせるついでにキスマークつける人間が他にいるならここに連れて来い!)

 そう思ったけど、そんな人間が増えたら迷惑なので、言うのはやめておいた。


「とにかく! このせいで! さくらと伸にとんでもない勘違いされて迷惑してるんです!」

 私が言うと直さんはさらに微笑む。

「えーそうなの? ごめんね」
「謝る時はもっと申し訳なさそうな顔で謝ってくださいよ!」
「だって悪いと思ってないし」
「くっ!」

(なんだ、この人は!)

 直さんってこんな感じだっけ?
 違うよね? 今までと全然違う……。

 よりによって、なんで……こんな性格してるの!

 掴みどころがなくて、優しくもない。
 本心だって全くわからない!
 泣きそうになった時、直さんが顎に手を当てて、楽しそうに私に問う。

「ちなみにどんな勘違いなの?」
「わ、私が直さんを好きで、私が直さん襲ったって。責任取って一緒に住めとか言われてわけわからないですよっ!」
「ふふ、そっかぁ」

 さらに直さんは笑った。

「わ、笑ってないで! とにかく二人の誤解を解いてください! 私は襲ってないし、私と直さんは付き合ってるわけじゃないって!」
「えー嫌だよ」
「お願いだから、その誤解だけでも解いてください!」

 私が言っても、直さんは、でもねぇ、と呟くだけだ。

(なんで、いいよ、って言ってくれないの ︎)

 これまでの直さんを思えば、すぐに快諾してくれそうなのに、キスをしてからの直さんはなんだか意地悪になった。

 私は唇を噛むと、ガバリと頭を下げる。

「お願いします! そうでないと、私、住むとこ追い出されちゃう!」

 直さんは、うーん、とまた考えると、

「でも、僕には何のメリットもない話だよね」
とさわやかな笑顔で言った。

「なっ! な、なんでそんな意地悪言うんですか!」
「意地悪しているつもりはないんだけど、今から仕事で調べたいこともあったし……その時間使うわけだから。なにしてくれるのかなって」

 直さんはそう言って意地悪に笑う。

(くっ! 人の足元を見て!)

 ちらりと直さんを見ると、私は自分でできそうなことを挙げた。

「お皿洗い、料理、洗濯とか、家事なら何でも」
「家事は一通り自分でできるしね。それ以外に、よもぎにできることってある?」

 挑発するように直さんが言う。

(そりゃ、私はたいした特技のない人間ですけどっ!)

 私はカチンときて、でも自分のできそうなことが浮かばなかったので、
「じゃあ、私にできることならなんでもしますからっ!」と叫んでいた。


 直さんがクスリと笑う。
 なによ……なんなのよ……! やっぱり私には何もできないって思ってるんでしょ!

 そう思った時、急にするりと手が伸びてきて私の頬を撫でる。

(あれ……これって、もしかしてキスされる!?)

 思わず、身体をすくめて直さんを見ると、直さんはまた目を細めた。

「ちょっと挑発すると、簡単にそんなことを言うところが浅はかだよね。ま、そういうところが好きなんだけど」
「……好き」

「僕はよもぎが好き。言ったよね? 忘れた?」

 そして次は髪を一束とって口づける。
 そんなことをされるところを見ているだけで、心臓がおかしくなりそうなくらい急に跳ねた。
 それからドクドクとやけに大きい音が全身を駆け巡る。

「い、いえ……」

(なにこれ。なんなの……。私、なんでドキドキしているんだっけ……?)

 キスされてから、直さんに翻弄されてばかりだ。
 泣きそうになって直さんを見つめる。すると、直さんは、いつも以上にご機嫌な様子でニコリと笑った。

(私のことが好きなら、少しは直さんだって、慌てたらいいのに……)

 そう思ってあることを思いつく。

「ほ、本当に、す、好きなら、私が困っているのを助けたいって思わないんですか? なんでも頼って、って言ったじゃないですか……」

 少々卑怯だが、直さんも悪いのだから致し方ない。
 『私も卑怯になろう作戦』だ。

 好きなら何でもしてくれるはずだろう。頼ってって言ったのも直さんだもん。

 直さんをじっと見つめると、直さんはふっと息を吐いて微笑む。

「ふうん。そういう事言うんだ」
「……だって、そうですし。直さん見てると、動揺もしないし本当に私のこと好きなのかわかりません」

 はっきりそう言ってもう一度見つめると、直さんは苦笑して私の頭を優しく撫でた。

「負けた。わかったよ」
「ありがとうございます!」

(やった! 『私も卑怯になろう作戦』は成功だ!)

 私は喜んで飛び上がり、直さんは「少し支度するからちょっと待ってて」と言ってリビングのほうに歩いて行った。
 
 私はそんな直さんの後ろ姿を見て心底ほっとしていた。

(これで、やっと誤解が解ける)

 誤解が解けたら……

 ――私も、少しは自分の気持ちに素直になってみることはできるのだろうか。

 そんなことを考えていたとき、直さんがやってきて、いこうか、と微笑む。
 頷いて、一瞬足元に目を向けた時、私は目を見張った。

「ふぉっ!?」

 思わず変な声が出て、飛び上がりそうになる。

「どうしたの?」
「い、い、い、いいいいいや? な、なななななんでも、ないです」
「そう? じゃ、行こうか」

 そう言って、直さんが当たり前のように恋人つなぎをしてくる。

 私はそれを振り解くことも忘れて固まっていた。

 ――なにがどうして、どうなって、赤い糸がさらに半分くらいになってんの……!? いつ短くなったの……?
 もしかして、昨日のデートのあと……?

 どう見ても糸は15mくらいになっている。
 最初は、優に100m以上あったよね? なに? なんなの?

 デートのあとのキスごときでこんなに短くなるの?
 そりゃ、あのキスは気持ちいいと思ったよ。思ったけど!

 これまで見てきた人たちの赤い糸はこんなに急激に短くなったことはない。
 ほとんどは、ゆっくり時間をかけて短くなっていっていたのだ。


 しかし、私はどうだ。
 たった二日。それだけで、最初の8分の1ほどになっている。

 ――なんなの、これ……。

 呆然としながら、さくらたちの部屋に戻った。
 すると、さくらは直さんを歓迎する。

「待ってたのよ! 直さん!」

(妹にお帰りなさいもナシなの……?)

 そう思いながら、さくらを見る。

 そう言えば、さくらと直さんが話しているのもあまり見たことなかったけど、さくらの顔は、本当に信頼している相手に向けているそれだった。

(さくら、直さんのこと、本当に信頼しているんだなぁ……)

 そうは思うが、私の今の関心ごとは、急激に短くなった私の赤い糸についてだ。


 私は直さんと並んでテーブルに座らされても、目線は下を向けていた。

 気にされないように、ちらちらと下を見続ける。
 しかし、糸は一向に長くなる様子もない。

 伸が前に座り、さくらもコーヒーを出すと、自分も座った。
 そしてすぐにさくらが頭を下げて口を開く。

「直さん、本当にごめんなさい。よもぎのこと……。この子、昔から突っ走っちゃうところがあるから」
「ほんと、すごい行動力がある子だと思ってたけど、俺も驚いたよ」

 さくらが言い、伸が続ける。
 私はというと『失礼なことを言われているな』と感じながらも、ずっと糸の方が気になっていた。


 きっとさくらと伸のことは、直さんがこれからうまくやってくれると思うし……。約束もしてくれた。
 約束してくれた……よね?

 そう思っていると、直さんが口を開く。

「あぁ。二人はよもぎが僕を襲ったと思ってるんだっけ?」

「え? 違うの?」
「だって、直は彼女できてもなかなか進まないピュア恋愛パターンじゃん。歴代の彼女、キスまでするのも全然進まないし、やっとキスしたと思ったら、また最後まで時間かかって。やっと最後までしたと思ったらすぐ別れちゃったりしてさ」

 伸のその言葉に、私は思わず顔を上げる。

 直さん、歴代の彼女は大事にしてたんだね……。私相手みたいにすぐキスしたりなんかしなかったんだ。

 ――ふうん。

 なんだか胸がチクリと痛んだ気がしたけど、感じないふりをした。


 すると、直さんは苦笑して口を開く。

「こういうことはあんまり言いたくなかったけど、それはピュアなんじゃなくて、そんなに好きじゃなかったからなんだよ。全部、あっちから押し切られる形で付き合い出したし」
「「「えっ……」」」

 三人の声が被る。
 特に伸とさくらは、直さんがそんなことを言い出すキャラクターだとは夢にも思っていなかったような反応だ。

 直さんは気にせず続ける。

「でもね、本気になるとすぐにでも襲いたくなっちゃうみたい。よもぎにキスして、触れて、初めて知ったよ。自分にはこんな衝動があるんだって。だから、金曜はよもぎに襲われたんじゃないよ? 僕から誘った。そもそも、よもぎのひ弱な力じゃ、僕は襲えないよ」

(ちょっとまって。この人、何言ってるの?)

 意味が分からなさ過ぎて、直さんの顔を見ると、直さんは微笑んで私の頬を撫で、そのまま私の唇をするりと撫でる。

 それだけで、身体も、顔も、やけに熱くなった。
 顔が赤くなってるだろうな、と思った時、直さんはそんな私を見て、また微笑んで唇を撫でる。

「よもぎも、『僕とするのが気持ちいい』って言ってくれたよね?」
「あれはっ……!」

 真っ赤になって固まる。
 間違いなく言った。

(確かにそう言ったけど……! なんで今そんなこと言うのよ!)

 直さんを涙目で睨んだ私を、さくらは口元を覆って見た。

「……よもぎ、いつの間にそんなに大人になったの」
「待って! ちがうの! これはっ!」

(姉にキスを見られたのもそうだけど、気持ちよかったとか知られるのも、すっごい恥ずかしいんだけど!)

 直さんは、次は、さくらと伸の方を向いて話を続ける。

「それで……『アレなし』でしてしまったわけ。しかも何回も。自分でも大人げないと思うけど、止められなくて」

 それを聞いたさくらと伸の顔がすぐ真っ赤になった。


(ど、どう言う意味……?)

 私はその言葉の意味が分からずに首を傾げる。
 何か2人の反応がおかしいけど、これ、キスの話だよね?

 合意なしに何度もキスしたことを言っているのだろうか。

 直さんはそういう倫理観は持っていないように思ったけど、一応は持っていたということ……?

 しかし、さくらも伸も、とんでもなく赤い顔をしたまま、私と直さんを交互に見た。
 直さんはさらに口を開く。

「もちろん、僕としては責任取りたくてそうしたんだけどね。でも、二人も知ってる通り、よもぎは『誰でもいいから』そういうことしてみたかっただけで、そういうことしても、結婚する気はないみたい。僕はよもぎが好きだし、きちんと責任取りたいんだけどさ……どうしても頷いてくれないんだ」

 そして直さんは、少し寂しそうな、愁いを帯びた表情をする。
 その顔に、さくらも伸も、絆されたことが一瞬で分かった。

(ちょっと待って! よくわかんないけど、なんでキスごときで責任とろうとしてるの、この人!)

「なっ、直さん? 何言いだしていやがるんですか!?」

 思わず言葉遣いが乱暴になったのは私のせいではない。

 そのとき、
「よもぎっ!」と叱る口調でさくらが言うと、私は思わず、はいぃいいっ! と条件反射で身体が固くなった。

 さくらは普段怒ることはないけど、怒る時は怖い。

 今、さくらがすっごい怒ってる……。

 ――なんで!?

「よもぎ、何考えてんの! お姉ちゃん、悲しい……!」
「えぇっ! わ、私!?」

(むしろ直さんが悪いんじゃないの! この人、合意なしにキスした、何回もした。って言ってるんだよ?)

 なのに私に怒っているさくらはどんどん続ける。

「別に順番どうこうなんて言うつもりないわよ! でも、そのままじゃだめでしょ! 大人としてきちんと責任取りなさいよ!」
「せ、責任って……」
「結婚よ、決まってるでしょ!」

(この国は、キスで結婚しなきゃいけないってことにいつの間になったの? 政権交代したから?)

 混乱した私が泣きそうになると、さくらは真剣な眼差しで私を見つめて頷く。

「大丈夫よ。不安がらなくても、絶対に直さんは大事にしてくれる。直さんが相手なら、私たちも安心だし」
「そうだよ、はじめてなのに気持ちよかったってことは、相性はいいわけだし自信もって!」

 さくらが言い、伸がいらない補足をした。

 っていうか、その『気持ちいい』のくだり、忘れてくれませんかね?
 すんごい破廉恥な女みたいじゃん……。

 私が泣きそうになっていると、二人は
「「至らない(義)妹だけど、よろしくお願いします」」と直さんに頭を下げた。

 直さんも微笑んで返す。

「大丈夫。うんと大事にして、ちゃんと好きになってもらえるように努力するから」
「さすが直さん。懐が深いわ。じゃ、早速荷物まとめちゃうね!」
「まとめるって!」
「前も言ったけど、直さんの家に住みなさい。もちろん結婚を前提に」

 さくらは、有無を言わさずそう言って、すぐに私の荷物をまとめたのだった。

 ――あれぇ……? この状況、前より悪くなってない……?


 訳の分からないまま直さんの部屋に連れて帰られ、部屋に入るなり直さんは私の頭を撫で微笑む。

「よかったね、荷物少ないし、すぐ送ってくれるって」

「え、ちょ、ま、待って! 何考えてるんですか! 訳の分からない間に、結局追い出されたじゃないですか!」
「僕の記憶が間違ってなければ、『とにかく二人の誤解を解いてください! 私は襲ってないし、私と直さんは付き合ってるわけじゃないって!』って言ったよね?」

 直さんは飄々と言う。
 確かにそうだ……。それがなによ。

「そうですけど」
「『よもぎに襲われたわけじゃない』『まだ付き合ってるわけじゃない』。この誤解はきちんと解いたはずだよ」

 直さんはあっさり言う。

「そんな屁理屈!」

 ――状況をさらに悪くして、何言ってんだ!

「ど、どうするんですか  この状況……っていうか二人はなんであんなに結婚結婚って言ってるんですか。キスごときで」
「……よもぎがそういう知識がほぼないから助かったよ」
「はい? 何か馬鹿にしてます?」

 もう遠慮もへったくれもなしに私が直さんを睨むと、直さんは楽しそうに笑う。

 まったく笑い事ではない。

「でもさ、僕は本気で責任取りたいと思ってるよ? よもぎはキスも初めてだったんでしょ?」
「責任なんてとらなくていいです! た、たかがキスで! べ、別に減るもんじゃないし!」

 私が言うと、直さんは苦笑する。
 そして真剣な眼差しで、まっすぐ私の目を捉えた。

「これのこともあるし」

 そう言って、直さんは自分の左手を上げた。
 左手の薬指から伸びる赤い糸が私の目には映る。

 でも直さんにそれが見えているわけでも、直さんが知っているわけでもないので、私は首を傾げて知らないふりを決め込もうとしてから、あることに気づいた。

「う、うそっ……!」

 見ると、また縮んでるじゃないか……!
 半分とはいかないが、確実に今朝より縮んでる……。

 ――どうして?


「また短くなった?」

 嬉しそうな声で直さんが言った。

(今、なんて言った……?)

 その言葉がきちんと聞き取れなくて私が不安になって顔を上げると、突然唇がふさがれる。
 もちろん、キスでだ。

「………んんっ!」

 慌てて押そうとしたけど、無理矢理されるキスすらなんだか気持ちよくて一瞬絆されそうになる。
 そんな私を知ってか知らずか、楽しそうにキスは続く。

 何分もそうしていて……それから離れた直さんの唇を追いかけようとしてから、私はハッと気が付いた。

(おい! なんでこの状況でキスなんてしてるんだ! そしてなんで私はさらにしようとしたんだ!)
 誤魔化すように直さんを睨むと、直さんが苦笑する。

 なんだか恥ずかしくなって唇を噛んでから直さんの胸を押すと、直さんはその手をとって後ろにあった壁に縫い付けた。

「え? ちょっ、直さん! は、離してください!」

 しかし直さんは離してくれなくて、手を拘束したまま耳元で囁く。

「避妊の知識もないくせに処女捨てようとしたり、今日もまたここまでノコノコついて来ちゃってキスされたりして……。本当に浅はかだよね、よもぎは……」

 直さんはそのまま私の耳たぶを舐める。

「ひゃんっ!」

 その感触に身体が跳ねて、舐められた耳から赤くなるのを感じた。なのに、さらに耳に舌を差し込まれ、ぴちゃりと音を立てて舐め続けられる。

「あ、んんっ! や、やめて……ください!」
「なんで?」
「んっ、だ、だって! へ、変な声、でるっ、からぁっ!」
「変? かわいい声だよ、もっと聞かせて」

 さらに耳を喰まれる。唇が首筋に落ちる。変な声が出るのに、両手は掴まれたままで口も塞げない。

 なんとか口を閉じるけど、勝手に薄く開いてしまう唇から、言葉にならない声が漏れた。

「んんっ、んっ……! ん……やぁ!」

 それを見た直さんが満足げに微笑んで、次は唇に口付ける。
 そのまま舌を口内に這わせて、全部を舐めとったあと、真っ赤になっている私の顔をまっすぐ捉える。

「まぁ、あの二人が勘違いしたことは、これから全部本当にするつもりだから」

 そう言って、直さんが目を細めて笑って……
 その言葉の意味がわからなかった私にも、なぜだか過去最大級の悪寒が走ったのだった。

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