【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
43.ようやく訪れた安寧
「ただいまー」
道香は抱えてきた荷物を玄関に置くと、ブーツを脱いで部屋に上がる。
マサはブーツを脱がずに玄関に荷物を置いて、再び駐車場まで降りていった。配送手配が出来ない店での買い物を全て持ち帰ったからだ。
道香は荷物を順番にリビングに運び入れると、片付けを始める。
まずは、食材を冷蔵庫に入れていく。このままではマサのペースで浪費が続きそうなので、自炊に切り替えるために大量に食材を買い込んだ。その中には米も含まれる。
次に揃いの食器やフライパンなどのキッチン用品を、全てきれいに洗ってから収納する。
それが終わると物干し竿をバルコニーに取り付け、リビングのテーブルを器用に動かすと、下にラグを敷いてからまた元の位置に戻す。
「あれ、一人でやったのか」
「うん。出来た」
帰ってきたマサは観葉植物を抱えて、どこに置くか道香に尋ねる。窓際がいいだろうとテレビの脇にいくつか並べる。
「おお!モデルルームが家っぽくなってきた」
「なんだよそれ」
マサは笑うと喉が渇いたと言って冷蔵庫から入れたばかりのビールを取り出す。それを見た道香はグラスを取り出してマサに渡すと、缶のまま飲むのはやめるように促す。
マサはノートパソコンを持ち出し、仕事なのか作業を始めたので、道香はキッチンに戻ると、適当に材料を取り出して料理を始める。
まずは高野豆腐と切り干し大根を水で戻す。その次に米を研いで炊飯器にセットすると、軽く塩茹でして切ったアスパラと、短冊切りにした茄子を豚バラ肉で巻いて肉巻きを作る。
熱したフライパンで肉巻きを焼きながら、水で戻した高野豆腐と短く切った切り干し大根にニンジンとひじきを入れて出し汁で甘辛く炊く。
マサは外食が多いようなのでとにかく野菜を摂らせるために、冷凍ストックの下処理を兼ねて、玉ねぎやパプリカ、ピーマンにズッキーニを細かく刻んで厚切りのベーコンを併せて鍋に入れてバターで炒め、あらかた火が通ったら時短のために湯を注いでコンソメを放り込むとそのまま煮込む。
その間に、他の野菜も使い易いようにカットして冷凍保存する。
香ばしい焦げ目のついた肉巻きは皿に盛り付けてごま油を回し入れてポン酢をかける。
高野豆腐も味が染み込んで美味しく出来た。スープを程なく出来上がる。
ビールのつまみを欲しそうにしているマサには、ちくわにきゅうりやチーズ、生ハムなどを差し込んで、オーブンで数分焼いてから皿に盛り付けてリビングのテーブルに置いた。
「ご飯が炊けたら夕飯だからね」
「悪い。一人で作らせて」
「良いよ。その辺りは追々決めていこう」
「そうだな」
マサはつまみを食べながらビールを飲み、キーボードに指を走らせる。
「仕事?」
「ああ。役員秘書の懲戒解雇だからややこしくてな。親父がどうにか取りまとめてくれるらしいが、マスコミとかの対処をどうするかちょっとゴタゴタしてきてる」
裁判が終わるまではバタバタが続くだろうなとマサは溜め息を吐き出した。
道香はキッチンに戻ると煮立ったスープの火を止め、味見をして味を整える。
裁判だとかは未だに実感が湧かない。タクミや芝田が捕まって、少なくとも前よりはセキュリティがしっかりした家に引っ越しもした。
けれどいつから仕事に行けるのかすら分からない。襲われる危険があるからと言って引きこもって生活するのは嫌だった。
苛立ちのようなモヤモヤした気持ちが膨れ上がってきた時にマサのスマホが鳴る。
すっかり忘れていたが、固定電話の配線工事の連絡だった。
バタバタと対応に追われ、リビングにファックス付きの固定電話を設置すると、すぐに祖母宛にファックスを流す。
そうこうしていると、道香のスマホが鳴った。画面を確認すると戸熊からだ。
「もしもしお世話になります」
『ああ、石立さん。ご無沙汰してます』
「どうかなさったんですか?」
『芝田の件ですが、嵯峨崎や千葉以外との接触がない裏付けが取れました。本人がまだ犯行をほのめかす発言を繰り返していたので、ネットなど調べる物が多岐に渡り、時間が掛かってしまいましたが、そこまで練られた計画ではなく思いつきで犯行に及んだようです』
戸熊の言葉に道香はホッとする。
「じゃあ仕事は」
『念のため人員は配備して万全を期しますが、普通にお勤めに向かわれて結構ですよ』
「ありがとうございます!」
『盛長さんはご一緒ですか?』
「あ、はい」
『代わっていただくことは可能ですか?』
「はい」
心配そうに様子を伺っていたマサに戸熊からの電話だと伝えると、代わって欲しいらしいとスマホを渡す。
ああ、やっと日常を取り戻せる。道香は滲む涙を指で拭った。
道香は抱えてきた荷物を玄関に置くと、ブーツを脱いで部屋に上がる。
マサはブーツを脱がずに玄関に荷物を置いて、再び駐車場まで降りていった。配送手配が出来ない店での買い物を全て持ち帰ったからだ。
道香は荷物を順番にリビングに運び入れると、片付けを始める。
まずは、食材を冷蔵庫に入れていく。このままではマサのペースで浪費が続きそうなので、自炊に切り替えるために大量に食材を買い込んだ。その中には米も含まれる。
次に揃いの食器やフライパンなどのキッチン用品を、全てきれいに洗ってから収納する。
それが終わると物干し竿をバルコニーに取り付け、リビングのテーブルを器用に動かすと、下にラグを敷いてからまた元の位置に戻す。
「あれ、一人でやったのか」
「うん。出来た」
帰ってきたマサは観葉植物を抱えて、どこに置くか道香に尋ねる。窓際がいいだろうとテレビの脇にいくつか並べる。
「おお!モデルルームが家っぽくなってきた」
「なんだよそれ」
マサは笑うと喉が渇いたと言って冷蔵庫から入れたばかりのビールを取り出す。それを見た道香はグラスを取り出してマサに渡すと、缶のまま飲むのはやめるように促す。
マサはノートパソコンを持ち出し、仕事なのか作業を始めたので、道香はキッチンに戻ると、適当に材料を取り出して料理を始める。
まずは高野豆腐と切り干し大根を水で戻す。その次に米を研いで炊飯器にセットすると、軽く塩茹でして切ったアスパラと、短冊切りにした茄子を豚バラ肉で巻いて肉巻きを作る。
熱したフライパンで肉巻きを焼きながら、水で戻した高野豆腐と短く切った切り干し大根にニンジンとひじきを入れて出し汁で甘辛く炊く。
マサは外食が多いようなのでとにかく野菜を摂らせるために、冷凍ストックの下処理を兼ねて、玉ねぎやパプリカ、ピーマンにズッキーニを細かく刻んで厚切りのベーコンを併せて鍋に入れてバターで炒め、あらかた火が通ったら時短のために湯を注いでコンソメを放り込むとそのまま煮込む。
その間に、他の野菜も使い易いようにカットして冷凍保存する。
香ばしい焦げ目のついた肉巻きは皿に盛り付けてごま油を回し入れてポン酢をかける。
高野豆腐も味が染み込んで美味しく出来た。スープを程なく出来上がる。
ビールのつまみを欲しそうにしているマサには、ちくわにきゅうりやチーズ、生ハムなどを差し込んで、オーブンで数分焼いてから皿に盛り付けてリビングのテーブルに置いた。
「ご飯が炊けたら夕飯だからね」
「悪い。一人で作らせて」
「良いよ。その辺りは追々決めていこう」
「そうだな」
マサはつまみを食べながらビールを飲み、キーボードに指を走らせる。
「仕事?」
「ああ。役員秘書の懲戒解雇だからややこしくてな。親父がどうにか取りまとめてくれるらしいが、マスコミとかの対処をどうするかちょっとゴタゴタしてきてる」
裁判が終わるまではバタバタが続くだろうなとマサは溜め息を吐き出した。
道香はキッチンに戻ると煮立ったスープの火を止め、味見をして味を整える。
裁判だとかは未だに実感が湧かない。タクミや芝田が捕まって、少なくとも前よりはセキュリティがしっかりした家に引っ越しもした。
けれどいつから仕事に行けるのかすら分からない。襲われる危険があるからと言って引きこもって生活するのは嫌だった。
苛立ちのようなモヤモヤした気持ちが膨れ上がってきた時にマサのスマホが鳴る。
すっかり忘れていたが、固定電話の配線工事の連絡だった。
バタバタと対応に追われ、リビングにファックス付きの固定電話を設置すると、すぐに祖母宛にファックスを流す。
そうこうしていると、道香のスマホが鳴った。画面を確認すると戸熊からだ。
「もしもしお世話になります」
『ああ、石立さん。ご無沙汰してます』
「どうかなさったんですか?」
『芝田の件ですが、嵯峨崎や千葉以外との接触がない裏付けが取れました。本人がまだ犯行をほのめかす発言を繰り返していたので、ネットなど調べる物が多岐に渡り、時間が掛かってしまいましたが、そこまで練られた計画ではなく思いつきで犯行に及んだようです』
戸熊の言葉に道香はホッとする。
「じゃあ仕事は」
『念のため人員は配備して万全を期しますが、普通にお勤めに向かわれて結構ですよ』
「ありがとうございます!」
『盛長さんはご一緒ですか?』
「あ、はい」
『代わっていただくことは可能ですか?』
「はい」
心配そうに様子を伺っていたマサに戸熊からの電話だと伝えると、代わって欲しいらしいとスマホを渡す。
ああ、やっと日常を取り戻せる。道香は滲む涙を指で拭った。
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