【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
42.新生活
ソファーに座って大画面のテレビを見ると、道香は大きなあくびをしてクッションを抱える。雨宿りのあの時みたいだなと、道香はふと思い出してうとうとする。
「マサさん」
ボソリと呟いてクッションと一緒に膝を抱える。
「……なんだよ」
「うわあ!びっくりした!おどかさないでよ。いつ帰ってきたの?」
「今。俺ただいまって声掛けたけど」
寝ぼけてたのかとマサは道香の頭をくしゃりと撫でる。
「靴は?全部持ってきた?」
「おう。意外と持ってることに驚いた」
「今からしまう?」
「そうだけど」
「じゃあ横で見てる」
ソファーから立ち上がって、私は片付け終わったからと道香はマサの片付けの手伝いを申し出る。
「見るだけかよ」
「嘘ウソ手伝うって」
二人で玄関に向かうと、マサの靴を段ボールから取り出して、道香の靴同様、普段使いの物は玄関に出して、ブーツやスニーカーを棚に陳列するように並べていく。
「なんかブーツ多いね」
「ああ。バイク乗るからハマってた時期があったんだよ」
「スニーカーのイメージないね」
「だから少ないだろ?」
「革靴は手前の方に入れといた方が良い?毎日同じ靴ってわけにもいかないだろうし。それとも玄関に何パターンか出しとく?」
「あー。確かにそうだな」
マサは道香の手元を見てこれとこれはよく履くかなと玄関に下ろす。
「あとはしまってて良いよ」
「凄いね。靴磨くやつも持ってるんだ!」
「安物履き潰すんじゃなくて高い一級品を一足の方が良いんだよ」
「なるほど」
靴の整理を終えると、道香はリビングに戻ってメモをマサに見せる。
「今日既に不便に感じた物だよ」
「乾燥機あるのに物干し竿いるか?」
「花粉や梅雨の季節は別だけど、陽に当てて干したいから」
「あと贅沢言えば、殺風景だから観葉植物が欲しいかな」
「じゃあ遅い昼飯がてら買いに行くか」
「うん!デートだデート!」
「それくらいではしゃぐなよ」
そうは言いながらもマサはにこやかだ。道香は取り急ぎの洋服から、白のリブニットにワインレッドのベロアのスカートを合わせ、ベージュのライダースジャケットを羽織る。
化粧をするために寝室に移動すると、マサはボタンダウンシャツの上から黒のニットを着て、ダメージデザインのタイトなブラックジーンズを履いていた。
「髪の毛伸びてきてんな」
「ああ、刈ってあるところ?」
「そう。目立つか?」
「大丈夫だと思うけど、揃えに行く?」
「ならお前も行くか?カラーとか入れたらどうだ」
「頻繁に通うの面倒だからカラーは良いや。でも、髪切ろうかな」
「いいんじゃないか」
「ならちょっと切ろうかな」
「じゃあ決まりだな。サロン行ってから買い物だ」
「ご飯もね」
会話しながら化粧を終えると、長らく手入れを怠っていた髪の毛を手櫛で整えて、ずいぶん伸びたなと苦笑いして立ち上がる。
「マサさんは気になる物無いの?」
「俺、基本お前がいればなんでもいいから」
「あーごちそうさまですー」
「他人事かよ」
「だって真面目に答えないから」
道香はマサのお腹をパンチすると、スマホを充電器から外して、今日の格好に合わせたカバンに入れる。他には財布と必要最低限のメイク道具、タオルハンカチやティッシュ、サニタリーの予備を念のため入れておく。
マサはスマホと財布をポケットに突っ込むと、家の鍵一応持っとけよとカードキーを手元で振った。
別のカバンに入れっぱなしだったので、無くさないように財布のカードホルダーに鍵を入れる。
「よし。行くか」
「はーい」
玄関で並んでブーツを履くと、一緒に家を出る。
エレベーターで駐車場まで降りて車に乗り込むと、マサはリモコンでシャッターを開けて車を出した。
「サロンて、予約しなくても大丈夫なの?」
「ああ、知り合いがやってるとこだから、急に行っても平気」
「へー。交友関係広いねえ」
「道香だって色んな職種の友だちいるだろ?それと変わらねえよ」
「まあ、確かに。保育士とか看護師とかいるっちゃ居るわ」
「そういうこった」
車を走らせて5分。マサは慣れた手付きでコインパーキングに車を停めると、道香の手を取ってサロンが入っているビルに向かう。
繁華街の裏通りにある、一階はセレクトショップが入った三階建ての小さなビルだ。
「あ!盛長さん、オーナー呼びますね」
店に入るなり男性スタッフがマサに声をかけると、奥にいたらしいすらりとした中性的な男性が顔を出した。
「高政、お立場があるんだから髪の毛くらいちゃんと……あら、このお嬢ちゃんどなた」
「道香。ほぼ俺の嫁」
「いやん!高政のお嫁ちゃんなの?僕は弦一郎。ゲンちゃんって呼んでね」
「石立道香です。よろしくお願いしますゲンちゃんさん」
「ゲンちゃんさんっておかしいから!」
ケラケラと笑うと、マサと弦一郎はカットについてやり取りしている。マサが振り返って道香もカット頼めるかと確認すると、弦一郎は女性スタッフの一人を呼びつけて道香につくように指示を出す。
そこからはマサと別々にスタイリングに入る。ジャケットを預けてシートに座ると、切りたいイメージを伝えて、ヘアカタログと照らし合わせながらイメージを固めていく。
シャンプーとトリートメントで髪を濡らしてからカットに入る。
当たり障りのない会話をしていると、彼女の服がビザリーの物だと気付いたので好きなのか聞くと、価格の割にデザインや持ちが良いと愛用しているらしかった。
道香は腰の近くまで伸びていた髪を、バッサリとミディアムのウルフカットにした。
前髪は作らずに横に流す。あまりゴテゴテしないようにワックスでの仕上げは断り、スタイリング方法だけを確認すると、仕上げはアイロンとコテで癖づけしてもらうに留めた。
「あらお嫁ちゃん、随分短く切ったのね」
「さっぱりしました!」
「印象が変わったな」
「うん。セットの仕方とかアレンジも教えてもらったから自分でも出来そう」
マサと弦一郎を交互に見て、道香は担当してくれたスタッフに頭を下げる。
「お会計は高政からいただいてるから、よければ今度からはうちにメンテナンスに遊びに来てね」
「はい!ぜひ」
道香は満面の笑みを浮かべて弦一郎に挨拶すると、マサの手を取り店を出た。
「こんなに近いなら今度はカラーも試そうかな」
「良いんじゃないか?」
「マサさんはもしかして髪も切った?というか梳いたのかな」
「分かるか?弦一郎が黒は重たいからってだいぶ切られたかな」
「うん。さっぱりしたね」
車に乗り込むと、郊外のショッピングモールを目指した。
「マサさん」
ボソリと呟いてクッションと一緒に膝を抱える。
「……なんだよ」
「うわあ!びっくりした!おどかさないでよ。いつ帰ってきたの?」
「今。俺ただいまって声掛けたけど」
寝ぼけてたのかとマサは道香の頭をくしゃりと撫でる。
「靴は?全部持ってきた?」
「おう。意外と持ってることに驚いた」
「今からしまう?」
「そうだけど」
「じゃあ横で見てる」
ソファーから立ち上がって、私は片付け終わったからと道香はマサの片付けの手伝いを申し出る。
「見るだけかよ」
「嘘ウソ手伝うって」
二人で玄関に向かうと、マサの靴を段ボールから取り出して、道香の靴同様、普段使いの物は玄関に出して、ブーツやスニーカーを棚に陳列するように並べていく。
「なんかブーツ多いね」
「ああ。バイク乗るからハマってた時期があったんだよ」
「スニーカーのイメージないね」
「だから少ないだろ?」
「革靴は手前の方に入れといた方が良い?毎日同じ靴ってわけにもいかないだろうし。それとも玄関に何パターンか出しとく?」
「あー。確かにそうだな」
マサは道香の手元を見てこれとこれはよく履くかなと玄関に下ろす。
「あとはしまってて良いよ」
「凄いね。靴磨くやつも持ってるんだ!」
「安物履き潰すんじゃなくて高い一級品を一足の方が良いんだよ」
「なるほど」
靴の整理を終えると、道香はリビングに戻ってメモをマサに見せる。
「今日既に不便に感じた物だよ」
「乾燥機あるのに物干し竿いるか?」
「花粉や梅雨の季節は別だけど、陽に当てて干したいから」
「あと贅沢言えば、殺風景だから観葉植物が欲しいかな」
「じゃあ遅い昼飯がてら買いに行くか」
「うん!デートだデート!」
「それくらいではしゃぐなよ」
そうは言いながらもマサはにこやかだ。道香は取り急ぎの洋服から、白のリブニットにワインレッドのベロアのスカートを合わせ、ベージュのライダースジャケットを羽織る。
化粧をするために寝室に移動すると、マサはボタンダウンシャツの上から黒のニットを着て、ダメージデザインのタイトなブラックジーンズを履いていた。
「髪の毛伸びてきてんな」
「ああ、刈ってあるところ?」
「そう。目立つか?」
「大丈夫だと思うけど、揃えに行く?」
「ならお前も行くか?カラーとか入れたらどうだ」
「頻繁に通うの面倒だからカラーは良いや。でも、髪切ろうかな」
「いいんじゃないか」
「ならちょっと切ろうかな」
「じゃあ決まりだな。サロン行ってから買い物だ」
「ご飯もね」
会話しながら化粧を終えると、長らく手入れを怠っていた髪の毛を手櫛で整えて、ずいぶん伸びたなと苦笑いして立ち上がる。
「マサさんは気になる物無いの?」
「俺、基本お前がいればなんでもいいから」
「あーごちそうさまですー」
「他人事かよ」
「だって真面目に答えないから」
道香はマサのお腹をパンチすると、スマホを充電器から外して、今日の格好に合わせたカバンに入れる。他には財布と必要最低限のメイク道具、タオルハンカチやティッシュ、サニタリーの予備を念のため入れておく。
マサはスマホと財布をポケットに突っ込むと、家の鍵一応持っとけよとカードキーを手元で振った。
別のカバンに入れっぱなしだったので、無くさないように財布のカードホルダーに鍵を入れる。
「よし。行くか」
「はーい」
玄関で並んでブーツを履くと、一緒に家を出る。
エレベーターで駐車場まで降りて車に乗り込むと、マサはリモコンでシャッターを開けて車を出した。
「サロンて、予約しなくても大丈夫なの?」
「ああ、知り合いがやってるとこだから、急に行っても平気」
「へー。交友関係広いねえ」
「道香だって色んな職種の友だちいるだろ?それと変わらねえよ」
「まあ、確かに。保育士とか看護師とかいるっちゃ居るわ」
「そういうこった」
車を走らせて5分。マサは慣れた手付きでコインパーキングに車を停めると、道香の手を取ってサロンが入っているビルに向かう。
繁華街の裏通りにある、一階はセレクトショップが入った三階建ての小さなビルだ。
「あ!盛長さん、オーナー呼びますね」
店に入るなり男性スタッフがマサに声をかけると、奥にいたらしいすらりとした中性的な男性が顔を出した。
「高政、お立場があるんだから髪の毛くらいちゃんと……あら、このお嬢ちゃんどなた」
「道香。ほぼ俺の嫁」
「いやん!高政のお嫁ちゃんなの?僕は弦一郎。ゲンちゃんって呼んでね」
「石立道香です。よろしくお願いしますゲンちゃんさん」
「ゲンちゃんさんっておかしいから!」
ケラケラと笑うと、マサと弦一郎はカットについてやり取りしている。マサが振り返って道香もカット頼めるかと確認すると、弦一郎は女性スタッフの一人を呼びつけて道香につくように指示を出す。
そこからはマサと別々にスタイリングに入る。ジャケットを預けてシートに座ると、切りたいイメージを伝えて、ヘアカタログと照らし合わせながらイメージを固めていく。
シャンプーとトリートメントで髪を濡らしてからカットに入る。
当たり障りのない会話をしていると、彼女の服がビザリーの物だと気付いたので好きなのか聞くと、価格の割にデザインや持ちが良いと愛用しているらしかった。
道香は腰の近くまで伸びていた髪を、バッサリとミディアムのウルフカットにした。
前髪は作らずに横に流す。あまりゴテゴテしないようにワックスでの仕上げは断り、スタイリング方法だけを確認すると、仕上げはアイロンとコテで癖づけしてもらうに留めた。
「あらお嫁ちゃん、随分短く切ったのね」
「さっぱりしました!」
「印象が変わったな」
「うん。セットの仕方とかアレンジも教えてもらったから自分でも出来そう」
マサと弦一郎を交互に見て、道香は担当してくれたスタッフに頭を下げる。
「お会計は高政からいただいてるから、よければ今度からはうちにメンテナンスに遊びに来てね」
「はい!ぜひ」
道香は満面の笑みを浮かべて弦一郎に挨拶すると、マサの手を取り店を出た。
「こんなに近いなら今度はカラーも試そうかな」
「良いんじゃないか?」
「マサさんはもしかして髪も切った?というか梳いたのかな」
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