【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
40.マサの気持ち
腕の中で寝息を立てる道香の髪を掻き上げると、露わになった白いうなじと乳房がマサを刺激する。
一気に昂る熱を放置して、マサは道香にキスをすると、ん。と小さく喘いでマサの名前を呼ぶ。
「道香……」
名前を呼んで抱きしめると、道香の腕がマサを抱きしめ返す。
最初は変な女だと思った。よりにもよってタクミが気になるというので、可哀想な子だなと正直そう思った。
なのになぜだろう、マサをキラキラした好奇心の目で見てくる。勘違いだろうか。
話したそうにウズウズして、マサが出したカクテルを楽しそうに飲み、食事も美味しそうに食べて天真爛漫な笑顔を向けてくる。
めぐみが帰ったっていうのに、道香は帰りもせず、マサと話をしたがった。だけどその手元にはタクミが作ったカクテルがあった。
ジリジリと胸の中が焼け付く感じがした。
それでもやはりキラキラした好奇心の目で見る道香に、話がしたいのか聞くと、心が読めるのかと彼女は驚いた。顔に書いてあるだけだ。
思っているよりも素直で単純な子なのかも知れない。
タクミが仕事を終えて帰ると言った時、道香は普通の目でタクミを見ていた。気になって仕方なくて店に通い詰めたというのに、一緒に帰ろうと誘うタクミを断って、マサと話がしたいと断った。
心が騒ついた。
道香は自分に男を見る目がないと愚痴り始めた。恋をすると盲信して周りが見えなくなる。結局尽くした男に二百万掠め取られたと淡々と話すので、黙って聞いた。
そのあと付き合った歴代のクズ男の話をフルコースで聞かされた。そして今はタクミに助けられた恩を感じて、それが恋愛感情なのか分からないとこぼす。
まるで餌が運ばれてくるのを待つ雛鳥のようで、庇護欲に駆られた。
後半になると何がおかしいのか、マサの話をキラキラした目で聞いては、頭がいいだのその発想はなかっただの、いちいち驚いてバシバシと机を叩く。
酒は好きだが酔うと言っていたので酔っ払っているのかもしれない。
名前で呼べと命令され、口調が他人行儀だと罵られた。完全に酔っていると分かっていても、自分を見つめるキラキラした目から逃げることが出来なかった。
バーだとこういうことをするんでしょと、ニヤけた顔でコースターに電話番号を書いて渡してきたかと思えば、女に恥をかかせるなとマサにも番号を書くようにコースターを放り投げてきた。
どうせ酔って覚えちゃいないんだろう。
けれどコースターを受け取るとうっとりした顔でありがとうと笑ってコースターに自分でキスマークをつけると、嬉しそうにカバンにしまい込んだ。
寝てしまいそうだから話をしろと言われ、他愛無い話をし続けた。
鹿威しの様に、変なタイミングで等間隔に頷くようになり、トイレから戻ると、いよいよ酔って潰れたかと思った。
どうやって家に返すか思案して名前を呼んだら、すぐに起きて無防備な顔で辺りをキョロキョロする。
二、三杯の相手のはずが、六杯は飲まされた。
正気を取り戻して精算すると言うので断ると、また飲みにくるからとキラキラした目で見つめてくる。
店を出て土砂降りの雨にげんなりする。ふと見ると、雨が濡らした服が張り付いて、豊かな胸元が露わになり、それが酷く扇情的にマサを揺さぶった。
羽織っていたジャケットを着せて、仕方がないので家に連れて行った。
全く危機感がないのか、あのキラキラした眼差しは勘違いだったのか、道香はマサの裸を見てもギョッとするだけで、本当に風呂を借りるだけの様子だった。
風呂から上がると細い首筋を晒して呆けた顔でソファーで寝ている。無防備過ぎて、自分だけが道香を意識しているようで、また胸の奥がジリジリした。
ベッドに寝かせて、道香から意識を遠ざけるためにパソコンを開いた。
規則的な寝息の合間に道香は何度かマサを呼んだ。決してベッドに誘うような声ではない。酔ってバーの会話の続きを強請るように、何度も名前を呼ばれた。
ベッドに近付き髪を掻き上げる。蕩けるような笑顔でマサを呼ぶので衝動的にキスをした。次の瞬間鼻を鳴らして小さくイビキをかいた道香に、マサは現実に引き戻された。
意識しているのは自分だけなのだ。カーテンを閉めて道香の隣に潜り込む。安全な男だと思われているのなら、無理やり寝込みを襲うような事は出来ない。
道香は寝ぼけているのか、起きる様子を見せた。キスをした時も起きていたのだろうか。けれど擦り寄ってきて面白い話をしろとまたキラキラした目で見られ、正気を保てる自信が無かった。
ベッドの中で華奢な腕が触れて、理性と闘いながらその手に指を絡める。このくらいは許されるだろうと、熱くなった身体を抑え込んで柔らかくて白い肌に指を這わせる想像をしながら、ただ、手を繋いだ。
道香は寝言なのか、マサに遊び慣れてると言った。確かに特定の女は作らずきれいに縁を切って割り切って遊んできた。なのにどうしてか、こんな無防備な雛鳥に庇護欲を掻き立てられ、規則正しい寝息が聞こえると、思わず掻き抱いて腕の中に閉じ込めた。
興奮する思いと身体を鎮めて道香を抱きしめていると、自分を苦しめる不眠症は嘘のように姿を消した。
しばらくすると、腕の中で雷の音に震える身体に気付いて目が覚めた。道香は既に起きていて、腕の中で困ったような顔をしながらも、相変わらずキラキラした目でマサを見ていた。
堪らなく抱いてしまいたい衝動に駆られたが、理性で抑え込んで無理強いはしなかった。
それから待てど暮らせど店に顔を出すどころか電話すらならない。マサは焦れて痺れを切らした。心が騒ついてどうしようもなく、仕事の合間に道香の声が聞きたくてコースターを握りしめて電話を掛けた。
道香はアスタリスクでタクミに会っていた。自分を見つめたあの視線は、そうであって欲しいと言う願望だったのかも知れない。
けれど電話の向こうでマサに対して声を弾ませる様子がマサを惹きつける。
電話を切った後、タクミと過ごす道香を想像して不快な気分になって仕事が手に付かなかった。
そんな時、道香から折り返しの電話が鳴って心が跳ねた。けれど様子がおかしい。通話が続けば続くほど事態が、最悪の方向に進んでいくのが手に取れた。
仕事を放り出してバイクに跨ると、不安と焦燥感を押し殺しながら必死で店に向かった。
タクミを殴り飛ばし、震える道香を見た時、冷静さを失った。
憔悴しきって弱った雛鳥は、与えられなければ弱ってしまう。
弱みにつけ込んで壊れるまで道香を抱いた。身体を蝕むほど執着して貪り尽くした。
「道香」
羽ばたくことを覚えず、ずっと餌を求める雛鳥のままでいて欲しい。自分が与えなければ生きていけなくなって欲しい。
庇護欲はドロドロとしたエゴイスティックな独占欲に姿を変えていった。
そしてそれが彼女をもっと追い詰める結果になる。道香に溺れるあまり、興信所の忠告も聞かず慢心していた。芝田にクスリを盛られ醜態を晒して傷付けた。
冷淡な道香の声は今でも耳にこびりついている。
芝田が拘留されたことで道香は安全になったはずだ。けれどマサの執拗な独占欲が自分の檻から道香を出したくないと暴れ出す。
無理やり身体を開いて官能に溺れさせ、与えなければ生きていけないと身体に刷り込ませるように求め、貪った。
自分のやっていることは間違っている。けれど道香を手放すことは出来ない。
「道香……」
道香は餌を求める雛鳥などではない。分かっている。そう理解しようとしても、羽をもぎ取ってどこにも行けないようにしてしまいたい。
「ごめんな」
マサは自分の狭量さに嫌気をさしながらも、その腕の中で眠る道香を絶対に手放せなかった。
一気に昂る熱を放置して、マサは道香にキスをすると、ん。と小さく喘いでマサの名前を呼ぶ。
「道香……」
名前を呼んで抱きしめると、道香の腕がマサを抱きしめ返す。
最初は変な女だと思った。よりにもよってタクミが気になるというので、可哀想な子だなと正直そう思った。
なのになぜだろう、マサをキラキラした好奇心の目で見てくる。勘違いだろうか。
話したそうにウズウズして、マサが出したカクテルを楽しそうに飲み、食事も美味しそうに食べて天真爛漫な笑顔を向けてくる。
めぐみが帰ったっていうのに、道香は帰りもせず、マサと話をしたがった。だけどその手元にはタクミが作ったカクテルがあった。
ジリジリと胸の中が焼け付く感じがした。
それでもやはりキラキラした好奇心の目で見る道香に、話がしたいのか聞くと、心が読めるのかと彼女は驚いた。顔に書いてあるだけだ。
思っているよりも素直で単純な子なのかも知れない。
タクミが仕事を終えて帰ると言った時、道香は普通の目でタクミを見ていた。気になって仕方なくて店に通い詰めたというのに、一緒に帰ろうと誘うタクミを断って、マサと話がしたいと断った。
心が騒ついた。
道香は自分に男を見る目がないと愚痴り始めた。恋をすると盲信して周りが見えなくなる。結局尽くした男に二百万掠め取られたと淡々と話すので、黙って聞いた。
そのあと付き合った歴代のクズ男の話をフルコースで聞かされた。そして今はタクミに助けられた恩を感じて、それが恋愛感情なのか分からないとこぼす。
まるで餌が運ばれてくるのを待つ雛鳥のようで、庇護欲に駆られた。
後半になると何がおかしいのか、マサの話をキラキラした目で聞いては、頭がいいだのその発想はなかっただの、いちいち驚いてバシバシと机を叩く。
酒は好きだが酔うと言っていたので酔っ払っているのかもしれない。
名前で呼べと命令され、口調が他人行儀だと罵られた。完全に酔っていると分かっていても、自分を見つめるキラキラした目から逃げることが出来なかった。
バーだとこういうことをするんでしょと、ニヤけた顔でコースターに電話番号を書いて渡してきたかと思えば、女に恥をかかせるなとマサにも番号を書くようにコースターを放り投げてきた。
どうせ酔って覚えちゃいないんだろう。
けれどコースターを受け取るとうっとりした顔でありがとうと笑ってコースターに自分でキスマークをつけると、嬉しそうにカバンにしまい込んだ。
寝てしまいそうだから話をしろと言われ、他愛無い話をし続けた。
鹿威しの様に、変なタイミングで等間隔に頷くようになり、トイレから戻ると、いよいよ酔って潰れたかと思った。
どうやって家に返すか思案して名前を呼んだら、すぐに起きて無防備な顔で辺りをキョロキョロする。
二、三杯の相手のはずが、六杯は飲まされた。
正気を取り戻して精算すると言うので断ると、また飲みにくるからとキラキラした目で見つめてくる。
店を出て土砂降りの雨にげんなりする。ふと見ると、雨が濡らした服が張り付いて、豊かな胸元が露わになり、それが酷く扇情的にマサを揺さぶった。
羽織っていたジャケットを着せて、仕方がないので家に連れて行った。
全く危機感がないのか、あのキラキラした眼差しは勘違いだったのか、道香はマサの裸を見てもギョッとするだけで、本当に風呂を借りるだけの様子だった。
風呂から上がると細い首筋を晒して呆けた顔でソファーで寝ている。無防備過ぎて、自分だけが道香を意識しているようで、また胸の奥がジリジリした。
ベッドに寝かせて、道香から意識を遠ざけるためにパソコンを開いた。
規則的な寝息の合間に道香は何度かマサを呼んだ。決してベッドに誘うような声ではない。酔ってバーの会話の続きを強請るように、何度も名前を呼ばれた。
ベッドに近付き髪を掻き上げる。蕩けるような笑顔でマサを呼ぶので衝動的にキスをした。次の瞬間鼻を鳴らして小さくイビキをかいた道香に、マサは現実に引き戻された。
意識しているのは自分だけなのだ。カーテンを閉めて道香の隣に潜り込む。安全な男だと思われているのなら、無理やり寝込みを襲うような事は出来ない。
道香は寝ぼけているのか、起きる様子を見せた。キスをした時も起きていたのだろうか。けれど擦り寄ってきて面白い話をしろとまたキラキラした目で見られ、正気を保てる自信が無かった。
ベッドの中で華奢な腕が触れて、理性と闘いながらその手に指を絡める。このくらいは許されるだろうと、熱くなった身体を抑え込んで柔らかくて白い肌に指を這わせる想像をしながら、ただ、手を繋いだ。
道香は寝言なのか、マサに遊び慣れてると言った。確かに特定の女は作らずきれいに縁を切って割り切って遊んできた。なのにどうしてか、こんな無防備な雛鳥に庇護欲を掻き立てられ、規則正しい寝息が聞こえると、思わず掻き抱いて腕の中に閉じ込めた。
興奮する思いと身体を鎮めて道香を抱きしめていると、自分を苦しめる不眠症は嘘のように姿を消した。
しばらくすると、腕の中で雷の音に震える身体に気付いて目が覚めた。道香は既に起きていて、腕の中で困ったような顔をしながらも、相変わらずキラキラした目でマサを見ていた。
堪らなく抱いてしまいたい衝動に駆られたが、理性で抑え込んで無理強いはしなかった。
それから待てど暮らせど店に顔を出すどころか電話すらならない。マサは焦れて痺れを切らした。心が騒ついてどうしようもなく、仕事の合間に道香の声が聞きたくてコースターを握りしめて電話を掛けた。
道香はアスタリスクでタクミに会っていた。自分を見つめたあの視線は、そうであって欲しいと言う願望だったのかも知れない。
けれど電話の向こうでマサに対して声を弾ませる様子がマサを惹きつける。
電話を切った後、タクミと過ごす道香を想像して不快な気分になって仕事が手に付かなかった。
そんな時、道香から折り返しの電話が鳴って心が跳ねた。けれど様子がおかしい。通話が続けば続くほど事態が、最悪の方向に進んでいくのが手に取れた。
仕事を放り出してバイクに跨ると、不安と焦燥感を押し殺しながら必死で店に向かった。
タクミを殴り飛ばし、震える道香を見た時、冷静さを失った。
憔悴しきって弱った雛鳥は、与えられなければ弱ってしまう。
弱みにつけ込んで壊れるまで道香を抱いた。身体を蝕むほど執着して貪り尽くした。
「道香」
羽ばたくことを覚えず、ずっと餌を求める雛鳥のままでいて欲しい。自分が与えなければ生きていけなくなって欲しい。
庇護欲はドロドロとしたエゴイスティックな独占欲に姿を変えていった。
そしてそれが彼女をもっと追い詰める結果になる。道香に溺れるあまり、興信所の忠告も聞かず慢心していた。芝田にクスリを盛られ醜態を晒して傷付けた。
冷淡な道香の声は今でも耳にこびりついている。
芝田が拘留されたことで道香は安全になったはずだ。けれどマサの執拗な独占欲が自分の檻から道香を出したくないと暴れ出す。
無理やり身体を開いて官能に溺れさせ、与えなければ生きていけないと身体に刷り込ませるように求め、貪った。
自分のやっていることは間違っている。けれど道香を手放すことは出来ない。
「道香……」
道香は餌を求める雛鳥などではない。分かっている。そう理解しようとしても、羽をもぎ取ってどこにも行けないようにしてしまいたい。
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